杏、強烈な母性で少年を守る役柄に 心揺さぶられた安藤政信「“自分も演じたい”という思うほどの素敵な役」
2024年5月7日 20:55
長編デビュー作「生きてるだけで、愛。」で注目を集めた関根監督が杏を主演に迎えた本作は、作家・北國浩二氏の小説「嘘」を映画化したヒューマンミステリー。事故で記憶を失った少年(中須)を助けた絵本作家の千紗子(杏)が、その少年の身体に虐待の痕跡を見つけたことから、少年を守るため、自分が母だと嘘をついて一緒に暮らし始めるさまを描き出す。
ひとりの少年を守る強烈な母性が印象的な本作。杏は、オファーを引き受けた点について「子どもから大人になって。大人になってからも少し年月を重ねた今だからできるのかなと思って。やはり年月を重ねていくにつれて涙もろくなったり、子どもが事件に巻き込まれることへの、どうしようもない怒りや悲しみを覚えるようになって。それを体現できるのがこの映画なのかなと思いました」と語る。
実際の撮影については「台本を読んだ時も涙が出てきたんですけど、彼(中須)の透明感が本当にすばらしくて。彼は台本を渡されずに、その場で監督から説明を受けて、そのままフレッシュなものを出し続けていたので。わたしはそれを受けるだけでも、どんどん自分の芝居が変わっていって。貴重な経験をさせていただきました」と述懐。中須とは撮影からおよそ2年ぶりの再会となったとのことで、「2年前はひとまわり小さかったので。2年ぶりに会って大きくなったなと思いました。映画で観ると本当に驚くと思いますが、こんな無垢(むく)な存在が画面の中にいるのかと思いました」と付け加えた。
そんな本作の脚本を読んで「何度泣いたか数え切れない」と語るのは、少年の父親を演じた安藤だ。「10代後半の時に映画をやって。20代、30代、40代とどんどん重ねていくと、だんだん視野が広がっていって。いろんな経験をして、父親のこと、母親のこと、祖父、祖母のこととか、いろんな関係性が見えていくというか。それがすべて台本の中に、その経験や感情が詰まっているような気がしたんです。ずっと読み続けて、最後までに何度涙が出たか分からない。今でも台本を読んでる時の気持ちというか、感情がわき上がってくる」と話しながらも、その瞳がどこかうるんでいる様子。
さらに「本当にこの主人公を自分でも演じたかったというくらい素敵な役で。衣装合わせの時にも『自分が演じたいです!』と言ったくらい。まあ(男性なんで)演じられないんですけど……でも杏さん、とてつもない良い役をつかみ取ったなと思いましたね」と語った安藤は「本当にやりたかったんですよ」と何度もかみ締めるようにコメント。そんな安藤の様子に杏も「本当に真逆の役なので、驚かれるかなと思いますが、そう言っていただけて光栄です」と笑顔を見せた。
杏が「(この作品の感想について)ひとことで言えば打ちのめされるということ」と語れば、奥田も「彼(中須)はね、ラストに……。それがあるから誰も何も言いたくないんですよ。(登壇者たちは)みんな言いたいことが山ほどあるんですけど、でも言いたくない。それは役者のお話が下手ということでなくて。なぜなら、せっかくこれから皆さまが玉手箱を開けられる皆さんがいるわけですから」と語るなど、、本作の内容・感想について質問された登壇者たちもこの日は終始、作品についてどう返答したら良いのか、思いあぐねている様子だった。
そんな中、中須が「それは僕(たち)のかくしごとです!」とズバッと締めくくり。そのあまりにも見事な返しに会場からは「おお!」と感嘆の声が湧き上がり、大盛り上がりとなった。
「かくしごと」は、6月7日から、TOHOシネマズ日比谷、テアトル新宿ほか全国公開。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。