山﨑賢人&染谷将太、出会いから14年…… 真っ向から対峙して何を思ったか【「陰陽師0」インタビュー】
2024年4月19日 19:00
佐藤嗣麻子監督にとって9年ぶりの最新作「陰陽師0」が、4月19日から全国で封切られる。今作で共演を果たした主演の山﨑賢人と染谷将太は、山﨑のデビュー作であるドラマ「熱海の捜査官」で出会ってから14年を経て、初めてがっぷり四つに組んでの対峙。互いへの敬意を隠そうとしないふたりは、共演に何を思ったのか話を聞いた(取材・文/大塚史貴、撮影/岸豊)。
今作は、平安時代に実在した“最強の呪術師”安倍晴明の活躍を描いた夢枕獏氏のベストセラーシリーズ「陰陽師」が原作。夢枕氏が全面協力するほか、呪術監修には、「呪術廻戦」に登場する数々のキャラクターや呪術を、実在した呪術の歴史から独自考察した書籍「呪術の日本史」監修の加門七海を迎えている。
映画の舞台となるのは、呪いや祟りから都を守る陰陽師の学校である省庁「陰陽寮」が政治の中心だった平安時代。呪術の天才と呼ばれる若き安倍晴明(山﨑)は、陰陽師を目指す学生とは真逆で、陰陽師になる意欲や興味が全くない人嫌いの変わり者。ある日、晴明は貴族の源博雅(染谷)から皇族の徽子女王(奈緒)を襲う怪奇現象の解決を頼まれる。2人は衝突しながらも共に真相を追うが、ある学生の変死をきっかけに、平安京をも巻き込む凶悪な陰謀と呪いが動き出す……。
佐藤監督と夢枕氏の40年にわたる交流が今作の映画化を後押ししたことは言うまでもないが、美術や衣装など細部に至るまでの考証にも一切の手を抜かなかったようだ。だが、VFXを駆使した世界観が今作の見どころのひとつであることも、また事実。佐藤監督だけが明確に見えている世界観を体現にするに際し、戸惑うことはなかったのだろうか。
山﨑「すごく丁寧に説明してくださっていたので、やることは結構シンプルでした。目線の動きなども的確に演出してくださったので、『このVFXを使うシーン、難しいかも…』と感じることは意外になかったかもしれませんね」
染谷「今回の作品って、魔法を出しているわけではなくて、人の感情や業のエネルギーがVFXで可視化されているわけです。自分たちは与えられた環境で芝居に集中することで、後に嗣麻子さんがディレクションするであろうVFXと自然にリンクしていったんじゃないかなと思ったんです。自分のシーンではないですが、怒りや恨みで戦っている男たちが燃え出すところとか、映像が凄いというのもありますが、単なるポリゴンに見えない。感情の伴った映像表現に繋がっていったので、いち観客として圧倒されました」
佐藤監督は、陰陽師の世界における呪術を「呪(しゅ)」と表現している。これは、肉体や物質に直接作用するのではなく、意識に作用を及ぼすことで肉体にも影響を与える暗示、催眠術、思い込みのようなものとして描いている。
山﨑「そう考えると、全て『呪』だなって思いました。世の中は『呪』だらけだけど、それぞれが思い描く真実はひとつしかない。そういう作品のメッセージが、僕は大好きなんです。いま見えている世界しか結局のところないわけだから、気の持ちようというか自分のマインドをいかに保ちながら生きていくか……というメッセージ性に共感しました」
染谷「自分は目で見たこと、触れるもの、匂いとか五感で感じるものを信じるタイプ。世の中が情報で溢れているなかで、監督は『みんなが“呪”にかかっている』と表現していて、この“呪”を祓ってくれるのが安倍晴明だと。映画そのものが、自分が素直になれる作品に仕上がっているので、僕はポジティブな気分になれたんです。晴明と一緒に酒を飲むシーンで『真実とか事実とかどうでもいい。今こうして二人で酒を飲めている。これしか我々にはないのだ』というセリフが好きなんですが、その通りですよね」
落ち着いた佇まいで話をするふたりは、本編でも既視感のないバディ関係で観る者に新しい驚きをもたらしてくれる。初めて本格的に共演してみて、感じるものは多くあったようだ。
染谷「すごく飄々(ひょうひょう)としているんですよ。難しいことを求められても、飄々と受け止めて悩むんです(笑)。自分が悩んでいるということを、自然に言える方。それは羨ましいですね。自分は悩むと内に入り込むタイプなので、『これどうしよう』というひと言で、その場にいる皆に共有できる行為は強くて羨ましい」
山﨑「染谷くんと以前対談させてもらったとき、役が自分の中で地に足が着いていないと不安になるし、やりたくないと話していたんです。染谷くんはそこを見つけるのが早いと聞いて、それって大事だなと思いました。まず地に足を付けたほうが絶対にいいですから。
リハーサルで、晴明と博雅を入れ替えて演じてみることがあったんです。染谷くんが地に足の着いた状態の晴明を見せてくれて、『なるほど』と思わせられました。誰かの真似をするわけでもなく、染谷くんのスタイルで表現する晴明がすごくいいなと思いました」
互いへの敬意をにじませるふたりだが、では自らの強味がどの辺にあるのか俯瞰して見ることはあるのだろうか。
染谷「何でも楽しみを見つけるのが早いタイプの人間なので、どんなことでも楽しめることですかね。大変な要求を楽しめますしね。嗣麻子さんは求めるレベルが高い方なので、総じて楽しめましたしね」
染谷「好きなわけじゃないんですけどね(笑)。そんなことが出来たら確かに面白いよな……と思えると、楽しくなるんです。自分にとって簡単な要求なんてないので、四苦八苦しながら楽しくなるんです」
山﨑「大変でした(笑)。体重を増やすのは確かに大変だったんですが、良い作品を作りたいという思いがずっとあるので、楽しく美味しく食べるようにしていました。筋トレもきつかったですが、それもまた楽しい。生きている感じがするじゃないですか(笑)」
染谷「僕は『サンクチュアリ 聖域』で体重を約10キロ増やした直後に『陰陽師0』の撮影だったので、嗣麻子さんに痩せろ、痩せろと言われ続けていましたね。完璧には戻りませんでしたけど」
山﨑「僕は『陰陽師0』からの『ゴールデンカムイ』で体重を約10キロ増やしたので、この作品の撮影中はずっとゆで卵を食べ、プロテインを飲む生活でしたね」
山﨑にとっては20代ラストイヤー(取材時点で残すところ5カ月)になるが、これまで数々の作品を主演として背負い続けてきたなかで、30代でのスタンスなど見据えていることはあるのか知りたくなった。
山﨑「正直あまり考えていないんです。既に決まっている作品もあるので、とにかく頑張ることくらいしか。30歳になるのか、という実感もあまりないのですが、しっかりしなきゃな……と感じるくらいで、とにかく仕事を楽しんでいたいなと思います。そして、何事も楽しんでいる大人でありたいかな」
一方の染谷は、ひと足早く30代に突入し、映画出演は90本に迫る勢い。いま改めて、映画というものをどのようにとらえているのだろうか。
染谷「基本的にあまり変わらないのですが、意識的に今までチャレンジ出来ていないことに取り組みたいと思うようになったかもしれません。そういう作品に出合えるかどうかというのは縁なので、そういうマインドで過ごすようにしています。触れたことのない世界を知らずに40代、50代を迎えるのが寂しいなと思っていて。自分の出来ることがあるのなら、色々な世界を見てみたいと感じています」
ふたりは今後も、日本映画界を引っ張っていく存在であり続けるだろう。次に現場を共にする機会が訪れるのがいつになるのか定かではないが、今よりも更に芸達者になった姿で対峙したとき、どのような作品が生まれるのか大きな期待が寄せられる。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
マフィア、地方に左遷される NEW
【しかし…】一般市民と犯罪組織設立し大逆転!一転攻勢!王になる! イッキミ推奨の大絶品!
提供:Paramount+
外道の歌 NEW
【鑑賞は自己責任で】強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”
提供:DMM TV
ロード・オブ・ザ・リング ローハンの戦い NEW
【全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作】あれもこれも登場…大満足の伝説的一作!
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
中毒性200%の特殊な“刺激”作
【人生の楽しみが一個、増えた】ほかでは絶対に味わえない“尖った映画”…期間限定で公開中
提供:ローソンエンタテインメント
【推しの子】 The Final Act
「ファンを失望させない?」製作者にガチ質問してきたら、想像以上の原作愛に圧倒された…
提供:東映
映画を500円で観る“裏ワザ”
【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます
提供:KDDI
モアナと伝説の海2
【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。