【「パスト ライブス 再会」で注目度上昇】ニューヨーク&ロンドン仕込みの演技が光る、ドイツ生まれの韓国人俳優ユ・テオの魅力とは?
2024年2月16日 14:00
第96回アカデミー賞の作品賞と脚本賞にノミネートされた「パスト ライブス 再会」で、初恋の相手と久々の再会を果たす男性を演じたユ・テオ。この記事では、ニューヨークとロンドン仕込みの演技が光る、ドイツ生まれの韓国人俳優ユ・テオの魅力に迫る。
本作は、ソウルで初恋に落ちた幼なじみのノラとヘソンが、24年後に36歳となり、ニューヨークで再会する7日間を描くラブストーリー。物語のキーワードは、「運命」の意味で使う韓国の言葉“縁(イニョン)”。見知らぬ人とすれ違ったとき、袖が偶然触れるのは、前世(パスト ライブス)で何かの“縁”があったから。久しぶりに顔を合わせたふたりは、ニューヨークの街を歩きながら、互いの人生について語り合い、自らが「選ばなかった道」に思いを馳せる。「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」のA24と、「パラサイト 半地下の家族」の韓国・CJ ENMが初の共同製作を担当した。
メガホンをとるのは、本作で長編映画監督デビューを飾ったセリーヌ・ソン。第81回ゴールデングローブ賞では、外国語映画賞、作品賞(ドラマ)に加え、主演のグレタ・リーが主演女優賞(ドラマ)、ソン監督が監督賞と脚本賞に名を連ねるなど、計5部門にノミネートされた。そんなソン監督がオーディションで見出したのが、ヘソン役を務めたユ・テオ。韓国人の父と母を持ち、ドイツ・ケルンで生まれ育った彼は、4月に43歳を迎える。とはいえ、劇中では少年のような初々しさをも感じさせる佇まいや表情で、見る者の心を掴む。
高校時代、膝の怪我でバスケットボール選手への道を絶たれたユ・テオが巡り合ったものは、演技だった。高校卒業後、ニューヨーク、ロンドンで演技を学んだが、欧米ではそのルックスから、アジア人の役しか回ってこなかったという。2度目の渡米時に、一回り年上でカメラマンの妻と出会い、結婚後、韓国に渡った。
知名度がない時期は、劇中に4度しか登場しない悪役や、3話で亡くなる主人公の親友役など、メインとは言いがたいキャラクターも演じてきた。そんな時は、自分の好きな俳優たちがどのようにキャリアを積んでいったのかを調べたという。「ヒース・レジャーも、デンゼル・ワシントンも似たような役割を果たして、自分の色をはっきりと見せる時期がありました。マシュー・マコノヒーは10年間ラブコメを中心に出演していたけど、『ダラス・バイヤーズクラブ』でドラマティックな役柄を演じ、アカデミー賞とゴールデングローブ賞で主演男優賞を獲(と)った。そういった軌跡を見ながら、自分がどのような役割を果たさなければならないのか、グローバル市場ではどのように見えるのか考えるようになりました」。
15年の長い下積みを経て、2018年に「LETO レト」を引っ提げ、第71回カンヌ国際映画祭のレッドカーペットに降り立ったユ・テオ。彼は、韓国系ロシア人で、旧ソ連の伝説的ロック歌手であるヴィクトル・ツォイ役に、2000倍の競争率のなかで選ばれ、韓国でも活躍の場を広げていく。そんななかで「パスト ライブス 再会」のシナリオとめぐり合ったそうで、「最初に脚本を読んだ瞬間からすごく感動してしまい、泣き出してしまったんです。とても美しい映画だった」と振り返る。
幼少期をドイツで、青春を欧米で過ごしたユ・テオには、“縁(イニョン)”という概念が強く響いた。「ソン監督が、この韓国ならではの文化を分かりやすく西洋の観客に紹介してくれたことがすごく嬉しかったし、幸運であるとすら思いました。日々の生活のなかで、韓国ではすごくカジュアルに使われているからです。物語の主題であるこの“イニョン=縁”という観念を学びながら、哲学や仏教思想などを自分の人生と関連付けて考えるようになったところが、この作品と出会った上で1番特別なことでした」。
ユ・テオは、自身の生い立ちやキャリアを思い返した時にぶつかる壁は、アイデンティティの在り方だと語る。しかし、本作との出会いで、そんな悩みにも変化があった。「韓国で生まれ育った俳優をキャスティングすることもできたはずなのに……。自分が韓国人だというアイデンティティを認められたようで胸がいっぱいでした。ニューヨークの真ん中で交通規制をして、あちこちに韓国語が書かれたタイトルがついていて、私の名前が書かれた椅子が置かれていて。 夢のような状況でした」と、喜びを噛みしめる。彼は、ソウルで生まれ育ち、兵役を経験したあと、大人になっても家族と同居しているという、劇中の言葉を借りると“韓国的な男らしさ”を持ったヘソンに息吹を注いだ。
本作は、結果発表を18日に控えた第77回英国アカデミー賞の非英語作品賞、脚本賞にノミネートされている。さらにロンドンで演技を学んだユ・テオが、主演俳優賞にノミネートされ、“帰還”を果たした形となった。前作がアメリカで大ヒットしたNetflixドラマ「ザ・リクルート2」の主演にも抜てきされ、ますます注目度が上がっている。「演じることは私の夢だったし、今でも夢なんです。私が演技を選んだのではなく、演技が私を選んだのだと感じています」と語る彼に、世界中の熱視線が注がれている。
「パスト ライブス 再会」は、4月5日から東京・TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開。
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