【「ゴールデンカムイ」評論】破天荒なキャラが入り乱れた疾風怒濤アドベンチャーの幕が上がる!
2024年1月20日 20:00

2014年の連載開始以来、爆発的な人気を博してきたアドベンチャー漫画「ゴールデンカムイ」の魅力を一言で表現するなら、それはあらゆる要素を混ぜ合わせた疾風怒濤の展開力だ。無数のキャラクターたちが大雪原を所狭しと駆け巡る様は、コミックスやアニメのどの箇所を振り返っても惚れ惚れするばかり。これらを幾度となく味わい尽くしてきた人も、今回の映画で遂に実写化されたビジュアル、アクションを目にすると、新たな感動と興奮で胸が一杯になるはずだ。
物語の要となるのは、アイヌ民族から強奪されどこかに隠された莫大な金塊。首謀者の男は収監された網走刑務所で24人の囚人たちの体に、全員揃うことで金塊のありかが分かる特殊な刺青を刻んでいた。そしてある日、彼らが一斉に脱獄したことで壮絶なサバイバルがスタート。一方、日露戦争の地獄を生き抜いた杉元佐一は、山奥で砂金採りに勤しむ中でこの話を耳にし、アイヌの少女アシリパ(※リは小文字が正式表記)の助けを借りて争奪戦に身を投じていくのだが―。
映画の冒頭では、主人公の心と体に深い傷を残した日露戦争の白兵戦を壮大なスケールで描き、その後のアシリパとの出会い、ヒグマとの死闘、さらに金塊を巡って次々と猛者どもが乗り込んでくる展開も、ほぼ原作通り。決してダイジェスト版のような忙しなさでなく、しっかり入念に印象を刻みながら進んでくれるのが嬉しい。
綿密な役作りによって培われた役者陣の存在感も光る。山﨑賢人が杉元の強靭な肉体から醸し出される優しさと危うさを巧みに体現すると、対する山田杏奈は彼を照らす月の光のような透明感でアシリパを好演。時に原作と寸分違わぬ変顔を見せつつ、一転して颯爽と弓を引く姿は息を飲むほど勇ましい。
もう一つの見どころが、北海道という舞台そのもの。当時の街並みや大自然の厳しさに加え、アイヌ文化をふんだんに盛り込み、あらゆる瞬間に言葉、肌触り、匂い、獣との命のやりとり、食に対する感謝の心など、五感を通じてビリビリと伝わってくるものがある。
土方歳三は老いてなお切れ味抜群だし、第七師団を率いる鶴見中尉は脳の制御がぶっとんでいるし、脱獄王・白石はいつもテンション高く場を和ませてばかり。誰が呼んだか「闇鍋ウェスタン」。まさにそれだ。シリアスさと底抜けの明るさを揺れ動くドラマと手に汗握るノンストップの攻防をどっぷり浴びつつ、はみ出し者たち揃いの大冒険の始まりを骨の髄まで堪能したい。
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