能登半島地震の被災者支援へ「ひとにぎりの塩」「一献の系譜」チャリティ上映の輪 すでに伊・中・米など国内外100件以上の申し込み
2024年1月15日 19:00
能登半島地震の被災者を支援すべく、能登の地場産業に密着したドキュメンタリー映画のチャリティ上映の輪が広がっている。呼びかけたのは、能登で映画「ひとにぎりの塩」(2011)と映画「一献の系譜」(2015)を製作した石井かほり監督。すでにイタリア、中国、アメリカなど国内外から100件以上の申し込みがあったという。石井監督は「お世話になった能登の方々に恩返しがしたい」と思いを語る。(取材・文/中山治美)
石井監督は東京出身。能登との関わりは2009年に遡る。能登に残る日本唯一の揚げ浜式製塩を行っている奥能登塩田村で働く知人に誘われて見学に行ったところ、伝統を受け継ぎ手間暇かけて働く職人たちの姿と自然の塩の旨味に感銘し、ドキュメンタリー映画「ひとにぎりの塩」を製作。それが縁となり、今度は酒蔵から「もう一度、映画で能登に光を当てて欲しい」と声を掛けられて再びカメラを回したのが、伝説の男たち”能登杜氏四天王”に迫った「一献の系譜」だ。
それは単に製作者と被写体の関係だけでは終わらなかった。ミラノ万博をはじめとした国内外で開催される食関連イベントに、映画と共に能登の名産をPR。さらに「呑みトモプロジェクト」と題して、能登の生産者と消費者を繋ぐ交流イベントや能登ツアーを行ってきた。
その間、能登に通うこと10年以上。官庁勤務を経て映画製作者の道を歩み始めたばかりだった石井監督にとっても、能登の人たちとの出会いは大きな転機となった。石井監督は「ふるさとを持たず、都会しか知らなかった私の人生観を一変させてくれました。根を下ろした生き方を学べたのも、映画に携わってくれた能登の方々がいたから」と振り返る。
それだけに伝わってくる能登の惨状を見て、行動を起こさずにはいられなかったという。奥能登の酒造会社は11(令和4年金沢国税局)。そのほとんどが半壊、または全壊した。ちょうど酒造りの時期を迎えていたが、今年の酒は諦めざるを得ない状態だという。また、2007年の能登半島地震でも被害を受けており、精神的なダメージは計り知れない。
揚げ浜式製塩が行われている珠洲市外浦沿岸は海底が隆起してしまった。海水を汲み上げることから始まる手法だけに、影響は免れないだろう。何より、まだ連絡が取れない方もいれば、残念ながら塩作り職人の訃報も届いている。石井監督のドキュメンタリーが、能登の自然と文化と、その土地で暮らしていた人たちの営みを刻んだ、かけがえのない記録となってしまった。
もっとも、これまでの上映活動を通して繋がった人と人の絆は生きている。今回のチャリティ上映の情報は、これまで映画を上映してくれた映画関係者や、呑みトモプロジェクトの参加者たちが石井監督の思いと共にSNSで拡散し、瞬く間に世界へ広がった。1月14日現在で53件の上映会が決定している。石井監督は「どんな小さな規模でも自分たちができる形で開催し、復興活動を絶やさず息の長いものとしていきたい」と語った。
上映の申し込みの詳細は、下記にて。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSddJpAS0WANVZNXmnWWCTDdfnVjeSIzjPFizl-aCOSvQ1zKAg/viewform
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