【「幽☆遊☆白書」インタビュー】綾野剛×滝藤賢一　弟の肩に兄が乗る「メイキング・オブ・戸愚呂兄弟」

2023年12月28日 10:00

Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書」（月川翔監督）に、北村匠海演じる主人公・幽助たちの前に立ちはだかる最強の敵“戸愚呂兄弟”役で出演する俳優の綾野剛と滝藤賢一が取材に応じた。

米アカデミー賞で科学技術賞を受賞した坂口亮がVFXスーパーバイザーとして加わり、「世界で最も革新的なVFXスタジオ」との呼び声高いスキャンラインVFXのほか、世界中の最先端CG・VFX技術を結集した本作。兄が弟の肩に乗る、特殊な形態描写にも注目を集める最強の妖怪兄弟は、最新テクノロジーを駆使し、いかにして実写化されたのか？　その渦中に身を投じた人気俳優ふたりが、舞台裏を明かした。（取材・文・撮影／内田涼）

――最初に、最先端CG・VFX技術を結集した、一筋縄ではいかない環境での“共演”は、いかがでしたか？

綾野（戸愚呂弟役）：滝藤さんが兄者（あにじゃ／戸愚呂兄の呼び名）役と聞いた時には、とても嬉しかったです。兄者は劇場型。状況のムードを全て言葉にのせ相手を支配していく。それでいてどこか憎めないダークポップさもあり、相手の感情を巧みに操りながら、深層心理に踏み込み、恐怖として刷り込んでいく。滝藤さんでなければ表現できません。圧倒的な安心感がありましたし、尊敬する役者さんでもありますので、ご一緒できることがとにかく喜びでした。

滝藤（戸愚呂兄役）：弟が剛くん、もう最高ですよ！　それにNetflixで「幽☆遊☆白書」を実写化するという、ある種“お祭り”のなかで、剛くんがいることで緊張感が走るというか、引き締まるじゃないですか。剛くんみたいに、これだけ作品や自分の役に真摯に向き合っている俳優さんは、なかなかいないですからね。ふざけていたら、裏に呼び出されちゃうんじゃないかって、ビクビクしてましたよ（笑）。

――予告編でおふたりの姿を見て、その再現度に衝撃を受けたと同時に、一気に作品が見たくなりました。戸愚呂兄弟というキャラクターには、俳優としてどのようにアプローチしたのでしょうか？

綾野：戸愚呂弟を生きるにあたって、なぜサングラスをかけているかに着目しました。妖怪として生きていくことの覚悟と、一縷の揺らぎがサングラスに現れている。唯一「眼だけは妖怪になれなかった」、それを戸愚呂は自覚していると感じました。彼の0.01％の人間力がサングラスというフィルターをひとつ挟むことで100％妖怪の状態になる。幽助との戦いで、初めてそのフィルターが外れたとき、彼はどのような眼差しをしているのか。キャラクターの造形を深めるために、とても大切にしました。

滝藤：なぜ弟の肩に乗っているかですよね。それが全てと言っても過言ではないくらい、難問でしたよ。だって戸愚呂兄弟は、弟の肩に兄が乗っているのが、当たり前というか、それが戸愚呂兄弟ですから。でもなぜ乗っているかは、その説明は一切ないんですよ。めちゃくちゃ面白くないですか。結局答えが出ずに現場に臨みました。乗ってみたら分かると思ったんですが、最後までわからなかったっすね（笑）。

綾野：滝藤さんの兄者、本当に最高で、チャーミングでした。

滝藤：周りの俳優さんと丁寧にセッションを積み重ねていった結果、チャーミングになってたのかな（笑）。素晴らしいキャスト、スタッフのおかげで、楽しみながら演じられましたね。それに剛くんが、完全に戸愚呂弟を（自分のなかに）落とし込んでいた。戸愚呂弟は名ゼリフがたくさんあるじゃないですか。綾野剛はこのセリフたちをどう言うんだろう？と興味津々だったのですが、お見事でしたね。惚れ惚れしましたよ。剛くんにしかできないっすね！

綾野：滝藤さんは、僕がどんな球を投げてもキャッチしてくださいますし、とても豊かな球を投げ返してくださいます。常に鮮度の高さを保つことができたのは、兄者が滝藤さんだったからこそ。それに尽きます。現場を信じ、自分を信じる。全てを出し切って、ついに戸愚呂兄弟が誕生した瞬間は震えるものがありました。それを滝藤さんと一緒に体験できたことを、本当に誇りに思います。

――実写版・戸愚呂兄弟が誕生するプロセスには、複雑な工程があったとうかがいました。具体的には、演技そのものをキャプチャ技術でCG化するという作業でしたが、おふたりにとっては、どのような体験でしたか？

滝藤：僕もどのように弟の肩に乗るんだろうと思って、初日の撮影は半信半疑というか、ワクワクしながら現場に向かいましたよ。動きの確認みたいなことをしたんだけど、普通に剛くんの肩に手を置いて、チョコチョコくっついて歩いたんですよね（笑）。ここから！って思いましたよ。剛くんの足にコツコツぶつかって申し訳ないやら、恥ずかしいやらで、最初はどうなることかと思いましたよ（笑）。

綾野：本作の撮影を通して、現場でアナログな作業をしっかりと積み重ねたからこそ、CGが発揮できると確信しました。監督が演出をつけ、各部署が役割を果たし、俳優部が演技をして、みんながしっかりとそこに向き合ってこそ、CGが決まる。例えば、戸愚呂兄弟が登場するワンカットであっても、滝藤さんと僕が一緒にいる状態、滝藤さんだけがいる状態、僕だけがいる状態、そして誰もいない状態という最低でも4つのリファレンスを撮影する必要があり、その間は照明も一定でなければいけない。カメラ位置も数センチ単位で調整が必要でした。NGが出れば、最初からやり直しです。

綾野：スキャンラインの最新技術（スキャンラインVFXのボリュメトリックキャプチャ）を使った撮影は顔だけの芝居が求められました。普段、役によっては肉体にも気持ちを宿し神経を通して芝居しますが、表情だけで芝居をするというのは、とても贅沢な経験でした。

滝藤：日本の俳優で、あの技術を使うのって、僕らが初めてみたいだね。

綾野：はい。圧倒的な現場力、そしてスタッフの皆さんの熱狂と情熱があってこそ、最新技術が生かされる。実写版「幽☆遊☆白書」はその証明でもあると思っています。

――その上で、激しいアクションシーンもある。想像しただけで、めまいがしそうです……。

滝藤：でも、アクション部の皆さんがしっかり準備をしてくれて、「このシーンは、こういう風になります」と説明してくれました。それを見ながら、想像を膨らませて、監督やアクション部の要望に応えていく。特殊な環境ですけど、相手あってのことですから、相手の芝居を見てリアクションするというのは、いつも通り。本当に剛くんが言ったように、アナログで地道な作業の積み重ねでしたね。

綾野：それが楽しかったですね。本作のような撮影では「とりあえず、やってみて」というわけにはいきません。作品づくりに携わった全ての方が、想像を具現化し可視化することを諦めずに、何年も試行錯誤し、道なき道を切り開く。そして導いてくださいました。その上に僕らが立たせてもらっているので、信頼関係を築きながら、チャレンジするのみでした。“信じる力”がこの作品を司っているのだと思います。

――ありがとうございます。それだけに、日本はもちろん、世界中のファンが実写版「幽☆遊☆白書」にどんなリアクションを示してくれるのか、楽しみですね。

滝藤：一丸となって面白いものを作ろうと頑張った成果を、世界中の人たちに見てもらえるのは、純粋に嬉しいです。

綾野：ワクワクします。Netflixさんには「今際の国のアリス」「サンクチュアリ」、（綾野出演作の）「新聞記者」といったドメスティックな作品があって、それが世界配信でシェアされている。同じように、海外の作品を僕らもシェアできる。シンプルに美しいことだと思います。「幽☆遊☆白書」もその大きな一歩ですし、一歩をまた一歩に。さらにその先へと紡いでいきたいです。

Netflixシリーズ「幽☆遊☆白書」（全5話）は、Netflixで世界独占配信中。