「気が狂いそう…」とファン歓喜 アリ・アスター監督、新作「ボーはおそれている」来日Q&A試写で見どころ解説
2023年12月21日 13:00
「へレディタリー 継承」「ミッドサマー」のアリ・アスター監督の新作「ボーはおそれている」Q&A付き試写会が12月20日、ヒューマントラストシネマ有楽町で行われ、来日したアスター監督が観客からの質問に答えた。
ホアキン・フェニックスが主演を務める本作は、日常のささいなことでも不安になる怖がりの男ボーが主人公。ボーは母が突然、怪死したことを知り、母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。これは現実か、それとも妄想、悪夢なのか――実家への帰路にボーに起こる奇妙で予想外の出来事を壮大なスケールと恐怖で描く。
今回2度目の来日となるアスター監督。「世界各地で今作が公開され、日本が最後の地点となります。それはある意味詩的、ポエティックなことだなと思っています。というのは、僕自身日本のことが大好きですし、この作品はほかの国よりも日本の皆さんの方が理解してくださるんじゃないかなと思っているんです」と観客に呼びかけ、「日本は世界の中でも大好きな国。前回は東京に来てから京都に行きましたが、今回は最初に京都、そのあと直島、次に富士山を訪れ、そして東京に1週間います」と日本各地での滞在を楽しんでいると報告する。
「へレディタリー 継承」「ミッドサマー」そして新作「ボーはおそれている」と、アスター監督の作品は残酷かつ鮮烈な映像が特徴だが、テーマを先に決めるのか、それとも断片的な映像アイデアから脚本を作っていくのか? との質問に「作品によってアプローチは違います。今回に関しては、物事が決められなくて優柔不断である様、不安を描くような作品を作りたいというところから始まっています。ですので不安を抱えた男を描いたコメディが狙いでした」「時としてイメージがポッと浮かぶこともあり、それをどのように脚本に落とし込んでいこうか考えることもあります」と明かす。
アスター監督登壇の3日間の上映イベント全日に参加しているというファンは、「おかげさまで気が狂いそうです…」と感謝を述べ、本作後半に登場するインパクトの大きいとあるパペットの正体について質問する。アスター監督は「お客様を思い切り引き込むような、いろんな謎を仕掛けて、一生懸命考えさせた末に、最後はものすごいバカげたことをやりたいと思ったのです。それで観客の半分はおそらく、ああ、なんだ…と思うことになる。そんなことを夢想していて、今回それができてすごく嬉しいです」と、いたずら心をのぞかせる。
アスター監督にとって、家族とは?との問いには「煩わしいもの。終わりのない義務感」と答え、死体の描写についてのこだわりについては「やっぱり死体の描写が好きなんです。なぜだか自分でもわからないのですが、今度はどんな風にめちゃくちゃにしてやろうかっていうことをいつも考えていて(笑)。首をはねたり、首がない描写もやりがいのあることで、なるべくしてなるという感覚で作っています。なにかひとつ思いつくと新しいアイデアがまた3つほど思いつくみたいな感じなんです」と常に新しいアイデアがあふれ出ていると語る。
日本でもスマッシュヒットを記録した「オオカミの家」監督陣との、アニメーションパートでのコラボレーションは、「当初は劇中劇でやりたい場面だったが、予算が足りずアニメと半々にした。二人のアニメが素晴らしかったので、僕から声をかけました。僕がストーリーボードを描き、指示を出しましたが、彼らはもともとオリジナルでやっているので、やりにくかったり、フラストレーションがたまったと思います。しかしこのコラボは非常に学びになりました。長いプロセスであり、楽しかったです」と振り返った。
そのほか、大阪から駆け付けたというゴア描写ファンからなど、多くの熱狂的な観客から本作についての質問が殺到した。最後に、アスター監督が「2月の公開まで口外しないで」と、この日集まった観客にこだわりの秘密の見どころシーンについても伝え、リピート鑑賞を薦めていた。
「ボーはおそれている」は、2024年2月16日に全国公開。R15+指定。
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