尚玄、岸本司監督、平一紘監督、東盛あいか監督が語る、沖縄映画製作者の現状とこれから目指すもの
2023年11月29日 09:00

新しい国際映画祭「Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」で11月27日、「沖縄映画製作者たち、大いに語る」と題されたトークイベントが那覇市内で開催され、同映画祭アンバサダーを務める俳優の尚玄、映画祭理事で「ばちらぬん」の東盛あいか監督、「こころ、おどる」の岸本司監督、「ミラクルシティコザ」の平一紘監督が登壇し、それぞれの活動や展望を語り合った。
まずは自己紹介を兼ね、なぜ映画にかかわることになったかのエピソードを披露。「映画館のなかった与那国島で育ち、高校進学で暮らした石垣島でレンタルDVDなどを通して多くの映画に触れ、その後大学で演技を学びながら映画を志した」(東盛)、「小さいころから映画が好きで、いつの間にか映画の世界に入りたいと思っていた」(尚玄)、「『マトリックス』が好きで、大学生の時に自主映画の全国規模のコンテストに参加し、低予算でも作れることが分かった。弟が俳優を目指していたので自分は監督を選んだ」(平)、「『死霊のはらわた』を見て、映画監督を目指した」(岸本)と、4人ともそれぞれ異なる動機を明かす。
全員が沖縄を舞台とした作品にかかわっているが、沖縄での映画製作で良いこと、苦労することを問われると「いいなと思うことは、作品のテーマが山ほどあること。大変なことは、自分は自主映画を10年くらい、商業は数年経験していますが、沖縄の映画スタッフが集まらないこと。本当は沖縄の映画は沖縄のスタッフでやれたらいいと思うけど、演出など裏方の中間層がいないので東京からスタッフを呼んで製作した」と平監督。一方で岸本監督は「東京や県外の経験豊富な人に教われるという良い面がある。僕の現場では沖縄のスタッフがメインになって、県外の人と切磋琢磨して作れている」と、さまざまな背景や経験値のスタッフで製作することの強みを挙げた。

最年少の東盛は、現在の日本の映画界全体で問題となっている労働環境について言及し、「映画や映像にかかわる人は、それだけでは食べていけない、というイメージがあるからなかなか後進が育たない」と指摘。そのほか、東京のアパートを引き払い、与那国に軸足を移したという自身の経験を踏まえ、住まいや活動の拠点が東京でなくとも映画製作にかかわることは可能であることを伝えた。4人の中で一番キャリアの長い岸本は、「やはり製作費を確保しないとちゃんとしたものは作れない。そこで、監督も俳優も経験値を挙げ、何本か並行して仕事をするようになる」と、具体例を挙げていた。
その後、話題は沖縄をテーマにした作品製作に移行する。沖縄テレビの人気シリーズ「琉球トラウマナイト」を手掛ける平監督は、自身の様々な実体験を紹介、映画については岸本監督が「やはり資本は東京のメジャーな映画会社に集まるので、ローカルの文化芸能やアイデンティティを描くような作品は難しい。それは、すべての人が面白いと思えるものを作らなければいけないから。今の沖縄の映画業界にシステムはないけど、前に出る人が必要かもしれません」と提案。4人が将来取り上げたいテーマや企画も思い思いに話し、会場を盛り上げていた。
尚玄は沖縄での映画製作を活発にするためにも、「まずは沖縄に映画文化を根付かせることが、将来のためになると思う」と言い、「映画離れしている人に1年に1回でも映画館に行ってほしい。映画の世界に入りたいと思っても、これまでの沖縄ではなかなか難しかった。でもこの映画祭によって、第一線で働いている映画人に会え、沖縄という土地だからこそアジア、世界をつなげるポテンシャルもある」と、国際映画祭を沖縄で開催することの意義を語った。
この日のイベントは、沖縄県内外から訪れた映画関係者や、地元の映画ファンが詰めかけ、立ち見も出る大盛況。泡盛やビールを楽しみながら、観客からも意見や質問を募り、「子どもや学生向けのワークショップ開催」「沖縄の芸術大学での映画、映像分野のクロスオーバー」「映画を通しての自然環境保護の訴え」「これから映画製作に臨む人への心構え」など、活発な意見、アイデア交換が終了予定時刻を大幅にオーバーして行われ、参加者の本テーマへの関心の高さをうかがわせた。
「Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際フィルムフェスティバル」は、11月29日まで、那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール等、那覇市内を中心とした会場で開催。チケット、プログラム詳細は公式サイト(https://www.cinema-at-sea.com/)で告知している。
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