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東京・下町のミニシアター「Stranger」が北欧映画祭を開催 同館でしか見られない作品を含む9本を一挙上映

2023年11月1日 09:00

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9月16日で開館1周年を迎えた東京・菊川のミニシアターStranger(ストレンジャー)が、11月24日から12月7日まで、日本初公開作品を含む北欧5カ国のドキュメンタリー9本を一挙上映する「北欧映画祭」の開催を発表した。

2019年からStrangerの近隣に位置する東京都現代美術館で開催されている「TOKYO ART BOOK FAIR(トーキョー・アートブックフェア。以下、TABF)」とのコラボレーション企画で、今年が初開催となる。

TABFは、アート出版に特化した日本で初めてのブックフェアとして、国内外の出版社、ギャラリー、アーティストなどが一堂に会し、直接来場者とコミュニケーションをはかりながらアートブックの魅力を伝えてきた。今年で7回目を迎える、ひとつの国や地域に焦点を当て出版文化を紹介する企画「ゲストカントリー」にて特集するのは北欧5カ国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマーク、アイスランド)に決まったが、それと連動し、Strangerで北欧5カ国に関連する映画9本を上映。アート、デザイン、音楽、環境問題など、さまざまなテーマを掘り下げた映画を通して北欧の魅力を訴える。

また今回、開館1年を迎えたStrangerのオーナーでチーフ・ディレクターの岡村忠征氏に、ミニシアター運営の苦労とここまでの手応えについても話を聞いた。同館は、他の映画館では見られない作品を独自調達するのが最大の売りで、これまでに日本での上映権が切れていたジャン=リュック・ゴダール作品やドン・シーゲルジョン・カサベテスジャック・ロジエジョナス・メカスらの劇場初公開作品などを上映し、コアな映画ファンを中心に集客してきたが、そのラインナップが好評を博している。岡村氏は「自分が一観客として絶対に見たいなと思って特集を組んだものは、確実にお客さんが来てくれるので、それは凄く自信に繋がりましたし、一映画ファンとしても嬉しいですね」と素直な心境を吐露した。

Strangerオーナー兼チーフ・ディレクターの岡村忠征氏
Strangerオーナー兼チーフ・ディレクターの岡村忠征氏

一方、岡村氏は、いかに地元の人々に定期的に映画館を訪れてもらうかを同劇場のオープン時に課題として挙げていた。開館1年を経て映画館の雰囲気や気軽さ、スタッフとの距離感を高く評価してくれる来場者や若い観客、カフェのみの利用客も増えているそうで、「やっぱりこういうミニシアターを待っていたお客さんがいるんだなと実感しています」と、その手応えを語った。

そして今後の展開について、「コアな映画ファンに喜んでもらえる特集上映をしっかり独自調達してやっていきます。また、これまでもDJイベントや古着屋さん、古本屋さん、レコード屋さんとコラボレーションしたポップアップショップをやってきましたが、もっともっと地域の文化発信拠点になれるようイベントや仕掛けをやっていきたいなと思っているので、ぜひ期待してください」と意欲を語った。東京の下町に根付きつつある新しいミニシアターに、あなたもぜひ訪れてみては。

Strangerの玄関。都営新宿線「菊川駅」より徒歩1分です。
Strangerの玄関。都営新宿線「菊川駅」より徒歩1分です。
【北欧映画祭上映作品】
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ムーミンの生みの親として、日本でもよく知られているトーベ・ヤンソン。日本のテレビ局から招待されたトーベは、往復の航空券を片道2枚に変更してもらい、パートナーのトゥーリッキ・ピエティラと共に来日した。旅先で手に入れたコニカの8ミリカメラを手に日本各地を巡り、その後アメリカ、メキシコへと渡った8カ月の旅をの旅を記録し続けた。映像をトーベが編集した本作には、仲良く楽しそうに当時の思い出を振り返る二人の対話が収録されている。
■「ハル、孤独の島」(98)
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クルーヴ・ハルは、フィンランドの群島のひとつ。徒歩10分程度で一周できてしまう小さな無人島に、トーベ・ヤンソンとトゥーリッキ・ピエティラは4面に窓がある1部屋だけの小屋を建て、25回の夏を過ごした。溶けゆく流氷、海鳥の鳴き声、静寂の中で沈むオレンジ色に輝く太陽……美しくも険しい自然の中でひっそりと暮らす二人の生活の断片を8ミリカメラでとらえた本作からは、トーベのインスピレーション源を垣間見ることができる。
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1972年~1993年ににかけて、トーベとトゥーリッキは、パリ、ヴェネツィア、ロンドン、マドリード、ダブリン、アイスランド、アイルランドなど数多くのヨーロッパの都市を訪ねた。誰もが旅先で経験したことがあるように、知らない街を彷徨ったり、冗談を言い合ったり、時には一休みをしたりする二人。まるでエッセイのような旅の記録は彼女たちがどういったものに惹かれ、またどうやって楽しみ、何を感じたのかを明らかにし、二人のユニークな視点に迫る。
■「ザ・ヴァスルカ・エフェクト」(19/日本初公開作品)
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ニューヨークの伝説的なギャラリー「ザ・キッチン」の創設者、スタイナ・ヴァスルカとウッディ・ヴァスルカ。1960年代よりニューヨークで活動を始めた二人は、数多くのビデオアート、インスタレーション作品を発表し、アンディ・ウォーホルローリー・アンダーソンら、熱狂的なニューヨークのアートシーンの人々と交流を深めた。本作では、アイスランド出身の監督が、当時を記録した彼らの貴重なビデオアーカイブとともに、彼らの軌跡をたどる。
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20世紀初頭、カンディンスキーよりも早く、抽象的絵画を描いていたスウェーデン生まれの女性画家、 ヒルマ・アフ・クリント。死後20年以上が経ち、初めて世界に発見された彼女の絵は、ニューヨークのグッゲンハイム美術館での回顧展において、 同館史上最高の来場数を記録し、大きな衝撃を与えた。これまで美術史に存在しなかった彼女は、どのように世界を見つめていたのか。 美術史家、遺族の証言などと、残されたた絵と言葉から謎を解き明かしていく。
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デンマークのゴミ処理発電プラント「コペンヒル」を題材にしたドキュメンタリー。建築家ビャルケ・インゲルスが、コペンハーゲンにある老朽化した巨大ゴミ処理施設をデザインとアイデアで新しいランドマークへと生まれ変える。屋根にスキー場を併設したり、壁にはクライミングウォールを設置したりと彼らのアイデアは奇想天外。カメラは建築コンペから完成までの過程までを収めており、環境問題、予算、 デザインの実現性など、次々と積み重なっていく問題も明らかにする……。
■「画家と泥棒」(20)
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自分の絵を盗んだ泥棒が、目の前に現れたら。2015年、オスロの画廊で起きた絵画の盗難事件。被害を受けた女性画家は、法廷の場で謝罪する犯人にこう問いかける。「あなたの絵を描かせて」。芸術的探究心に囚われた画家と、社会からはみ出した泥棒。奇妙な二人の交流は驚くべき展開を見せる。他者への偏見、複雑な感情とどのように向き合うべきか。3年以上をかけて撮影されたドキュメンタリー。
■「アアルト」(20)
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フィンランドを代表する建築家・デザイナー、 アルヴァ・アアルト (1898~1976)。2023年は、アルヴァ・アアルトの生誕125周年にあたる。不朽の名作として名高い「スツール 60」、ア イコン的アイテムと言える「アアルトベース」、 そして自然との調和が見事な「ルイ・カレ邸」 など、優れたデザインと数々の名建築を生み出した。そんなアルヴァ・アアルトのデザイナー としての人生を突き動かしたのは、一人の女性 だった
■「アポロニア、アポロニア」(22/日本初公開作品)
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監督レア・グロブは、父親が設立した劇場に通う芸術家たちのコミュニティの中で育った、デンマーク出身でフランスに住むアポロニア・ソコルという女性画家に13年間カメラを向け続けた。アポロニアはパリの小劇場で暮らし、美大を卒業するものの満足の行く結果は出せず、プロの画家として個展を開催するが関係者に酷評されてしまう。芸術の世界で自分の居場所を見つけようとする若い女性の13年間のポートレイトが観客の心を大きく揺さぶる。

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