リアルと虚構の境界を見失う… 6分を超える、1カット長回しの「熊は、いない」本編冒頭映像入手
2023年9月16日 09:00

イラン政府に映画製作を禁じられながらも、圧力に屈せず撮影を続ける“闘う映画監督”ジャファル・パナヒの最新作「熊は、いない」の6分を超える、1カット長回しの本編冒頭映像を、映画.comが独占入手。リアルと虚構の境界を見失うような、パナヒ監督の見事な手腕に唸る映像に仕上がっている。
世界三大映画祭ほか主要映画祭で高く評価され続ける、イランの名匠パナヒ。市井の人々の日常を通して、イラン社会のリアルな現実を描き続けるも、政府から2010年に“イラン国家の安全を脅かした罪”として、20年間の映画製作と出国の禁止を言い渡される。それでも諦めることなく、さまざまな方法で映画を撮り続けている。
第79回ベネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞した本作の主人公は、パナヒ自身が演じる映画監督。彼が撮影で訪れていた小さな村で起きた、あるトラブルに巻き込まれていくストーリーが展開する。監督を軸に迷信、圧力、社会的な力関係で妨げられる2組のカップルに起きる、想像を絶する運命を描く。事実と虚構を織り交ぜ、規律が厳しいイランだからこその隠喩がちりばめられた、フィクションとノンフィクションのハイブリッド作品となっている。

本編冒頭映像は、イランの隣国トルコの繁華街の光景から始まる。カフェで働くザラに入る1本の電話。彼女が店の前で待つ恋人バクティアールに駆け寄ると、ふたりが長年計画していたフランスへの国外逃亡のための偽造パスポートを手渡され、大喜びする姿が映し出される。しかし、バクティアールから「僕のパスポートはまだだ、後で追いかける」と告げられ、離ればなれになることにショックを隠せないザラ。ふたりは口論になり、ザラはその場を去る。ひとり残されたバクティアールは、うなだれてタバコに火を付ける。
観客が集中してふたりの物語に見入っていると、突然「カット」という声にさえぎられ、助監督レザが画面内に登場。彼は「どうでした?」とカメラ目線で、姿の見えない誰かと会話を始める。ゆっくりとカメラが引いていくと、観客が見ていた映像はパソコンの画面であり、パナヒ扮する映画監督が、リモートで撮影していたことが明らかになる。監督は撮り直しを指示するが、ネットの回線が悪く映像は固まり、途切れる。一連の映像が1カット長回しで続き、観客は「これは映画? それともドキュメンタリー?」と混乱せずにはいられない映像となっている。
「熊は、いない」は、9月15日から東京・新宿武蔵野館ほか全国で順次公開される。
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