菅田将暉主演の劇場版「ミステリと言う勿れ」 “ジャンル&注目監督”からヒットの可能性を考察【コラム/細野真宏の試写室日記】

2023年9月16日 08:00


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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)


この2カ月ほど別件の仕事が忙しかったのもあるのかもしれないですが、試写を見ていても大きな「手ごたえ」のようなものを感じにくい状態が続いていました。

ただ、これは「結果」としても表れていて、本来であれば書き入れ時である8月の映画業界の興行収入は、昨年より下がっているようです。

8月からの公開作品で何とか興行収入20億円を超えたのが、「しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 とべとべ手巻き寿司」と「マイ・エレメント」の2作品だけとなっているのです。

想定できていたとはいえ、やや寂しい状況となっています。

そんな中、ようやく期待できそうな作品が出てきました。

シルバーウィークに向けて、9月15日(金)から公開規模が300館を超える大型作品が一気に5本も公開されます!

粒ぞろいな作品ばかりですが、「ヒットする」という視点で考えると、「ミステリと言う勿れ」が飛びぬけています。

なぜなら、2022年1月からフジテレビ系列の「月9」で放送された連ドラの段階で実績があり、「映画に、なるべくしてなった作品」だからです。

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まず、「ミステリと言う勿れ」は2022年1月10日に第1話が放送され、平均視聴率13.6%(ビデオリサーチ調べ。関東地区・世帯・リアルタイム、以下同)を記録しました。

放送直後からSNSなどで盛り上がり、放送後1週間のTVerにおける「見逃し配信再生数」が、民放歴代最高記録の350万再生を記録したのです!(ビデオリサーチ調べ)

そして、TVerアワード2022【特別賞】を受賞するなど数々の記録を打ち立てています。

現在の配信時代では、「視聴率」だけでは見えてこない「視聴熱」のような新たな指標が重要となるわけです。

このような現象が連ドラ放送中に続き、原作マンガもあったため、当初から視野に入れていたであろう「映画化」は必然性の高い結果でした。

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では、「ミステリと言う勿れ」はどのくらいのヒット作となるのでしょうか?

これは、敷居の低い、無料の「見逃し配信」という仕組みが定着してからそれほどデータがないので、「未知」の部分が大きくなっています。

そこで、「作品の区分け」と「監督」という2つの軸を使って考察してみます。

本作の分野は、「謎解き」がベースになっているので「ミステリー作品」です。

それなのに、タイトルが「ミステリと言う勿れ」となっているのは、かなりキャッチーなアイデアだと思います。

本作の大きな特徴に、菅田将暉が演じる主人公の「久能整」(くのう・ととのう)という風変わりな大学生の会話によって物語が成立している点があります。

感情をあまり表に出さずに、マイペースな会話で的確に「本質」に辿り着くのですが、いわゆる「論理的な思考」の最高峰のレベルです。

その結果、会話で「事件の謎」を解くだけでなく、「登場人物らが抱える状況」に対するアドバイスもすることで「登場人物の問題」も解きほぐす「新感覚ミステリー」となっています。

(第1話のサブタイトルは「変わり者の大学生が殺人容疑、真実は人の数だけある!」となっています。これは「真実はいつも1つ!」に対する強烈なカウンターパンチになっている点は興味深いです。さらには、その2作品がともに小学館から出版されている点も興味深いです)

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本作のような「本格的なミステリー作品」×フジテレビ「月9」というくくりで考えると、福山雅治主演の「ガリレオ」シリーズと共通しています。

まさに、今からちょうど1年前の2022年9月16日に「沈黙のパレード」が公開されています。

沈黙のパレード」はギリギリ興行収入30億円に到達。“「本格的なミステリー作品」×フジテレビ「月9」”という共通点で考えてみると、「ミステリと言う勿れ」も興行収入30億円は狙えそうです。

あえて“違い”をあげるとするならば、「ミステリと言う勿れ」はシリアスに振り切っているわけではなく、「ガリレオ」シリーズよりも「笑い」を誘うシーンが多いという点です。

そのため、“作品を見る層”は「ミステリと言う勿れ」の方が広いのかもしれません。

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次に、「監督」という視点から考えてみます。

本作の監督は、2007年にフジテレビ系列の土曜深夜枠で放送された「LIAR GAME」(ライアーゲーム)で初のチーフ監督になり頭角を現した松山博昭です。

カラフルな映像、キャッチーな劇伴を駆使して、全11話の平均視聴率が 11.41%を記録しています。

2009年に「Season 2」が、深夜枠から昇格して「火9」で放送されました。

そして、2010年3月6日に映画版「ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ」が公開され、初監督作品ながら、興行収入は23.6億円を記録しています!

さらに、 2012年3月3日に最終章「ライアーゲーム 再生」が公開され、興行収入21.0億円を記録した実績があるのです。

深夜ドラマから始まった作品が映画化され、2本とも興行収入20億円を超えるなど、独自性のある演出力が松山博昭監督のパワーとしてあります。

この「独自性のある演出力」は、想像を超える破壊力を生み出すこともあるのです。

それは、次の監督作「信長協奏曲」。2016年1月23日に公開されましたが、私の当時の想定では20億~30億円規模でした。

それが公開されると、初速から強く、興行収入46.1億円にまで伸びたのです!

ミステリと言う勿れ」が4作目の監督作となりますが、この4作品には大きな共通点があるのです。

それは、「LIAR GAME」も「信長協奏曲」も「ミステリと言う勿れ」もマンガ原作がある点です。

つまり、原作マンガの実写化で、作品のDNAを松山博昭監督が引き出した時に、大きなパワーが発生しています。

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この「ミステリと言う勿れ」は、松山博昭監督が自身で原作マンガを“発見”して、企画&映画化まで持っていった作品です。

制作過程を追うと、かなり作品のDNAを引き抜きながら、松山博昭監督らしさも出せた作品に仕上がっているように感じます。

本作もヒットすれば、フジテレビ映画のヒットメーカーとして認知されるのは間違いないでしょうし、「久能整」の物語が映像で続くことにもなるわけです。

おそらく「ミステリと言う勿れ」の続きをもっと見たいという人は少なくないと思われます。

そう考えると、本作は興行収入30億円のラインは軽々と超えていくのかもしれず、この破壊力がどの程度なのか注目したいと思います!

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