「劇場版シティーハンター」は再び大ヒットできるか? 新作「天使の涙」から読み解く【コラム/細野真宏の試写室日記】
2023年9月6日 08:00
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映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
今週末9月8日(金)から「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」が公開されます。
そもそも「シティーハンター」とは、北条司によって1985年から「週刊少年ジャンプ」で連載され、1987年にはテレビアニメ化されていました。
それだけ歴史のある作品となっており、2019年2月8日に中規模の250館規模で公開された「劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ」は、興行収入15.3億円という大ヒットを記録したのです!
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個人的な印象では、「何とか興行収入10億円に行けるか?」というイメージでしたが、想像を超えた「ブーム」が起こったといえるでしょう。
ヒットの要因の1つには、北条司の代表作の1つである「キャッツ・アイ」(「・」は、黒ベタのハートマーク)のキャラクターも登場するなどのコラボがうまく機能していた面がありました。
そして、アニメーション版の「シティーハンター」といえば、何といっても当時、一世を風靡していたエンディング曲「Get Wild」で大ブレイクした「TM NETWORK」の存在も大きいでしょう。
前作「劇場版シティーハンター 新宿プライベート・アイズ」を見て思ったのは、楽曲の使い方の上手さでした。
例えば、エンディングでは当然「TM NETWORK」による「Get Wild」が使われますが、その直後にはテレビアニメ版の第2部エンディング曲「STILL LOVE HER (失われた風景)」を流したりもしていました。
さらに、テレビアニメ版「CAT'S EYE」のテーマ曲を作中で流すなど、雰囲気作りが巧みなのです。
こうした「思い出補正」によって、より入り込みやすくなり、リピーターを呼び込む作品にまでなっていたと私は考えています。
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では、「劇場版シティーハンター 天使の涙」も同様に大ヒットするのでしょうか?
まず、プラス要素としては、作画のクオリティーは前作より上がったような気がしています。
次に、コラボ作品が「キャッツ・アイ」にとどまらず、さらに増えているので「もういっそのことアベンジャーズみたいにやったら良いのでは?」と思ったりもします。
このコラボが増やせる要因の1つには、アニメーション制作会社の再編成があるのでしょう。
本作を制作しているのは、主に「サンライズ」です。「機動戦士ガンダム」シリーズなどで有名ですが、今や「バンダイナムコHD(ホールディングス)」の完全子会社になっています。
そのため、バンダイナムコHDが権利を有する作品とのコラボが非常にやりやすくなっているわけです。
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ただ、本作では“ある作品”のキャラクターが登場しますが、この作品は「セガサミーHD」傘下の「トムス・エンタテインメント」によって制作されています。
では、なぜそのようなコラボが可能になるのでしょうか? それは、その作品においても日本テレビ系列の「読売テレビ」が「シティーハンター」と同様に製作の中心に入ってるので、テレビ局の仲介でコラボがしやすくなる面があるのです。
このように考えると、日本のアニメーション作品においてもハリウッド大作の「アベンジャーズ」のような試みが可能だと思われます。
そして、「劇場版シティーハンター」ですが、作中でも制作陣がアピールしているように、今後も続編が作れる余地は十分にある気がします。
ところが、本作は“「最終章」の序盤”となっていて、終焉に向かっている様相を呈しているのです。
もちろん「1つの映画」としてキチンと完結しているのですが、この仕掛けがどのように評価されるのかは未知数です。
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個人的にマイナス要素と感じたのは、前作で効果的だった作中の楽曲群ですが、エンディング曲「Get Wild」以外は、基本「TM NETWORK」による新譜となっている点です。
かつてのアニメーション版の「シティーハンター」で使われた楽曲であれば、世代を超えて知っている人も多いので反応しやすいのですが、新譜であるせいかピンとこない面がありました。
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最後に、「アニメーション作品というのは、実写とは違って、キャラクターが年をとらないので、ずっと続けられる」という論があります。
確かにこれは正しいのですが、今回の映画を見た時には、課題のようなものも少し感じました。
というのも、これまでのリスペクトもあり、声優陣は基本的には当時の声優陣が務めているのです。
「人は、見た目は変化しやすいが、声帯は変化が起こりにくい」という言説もあり、これも割と正しいと思います。
ただ、いくらプロフェッショナルとはいえ、相当に訓練をしたりしないと、声も年齢相応に変化していくものだ――本作を見ながら、そんなことを考えてしまいました。
例えば「スラムダンク」のようにテレビアニメ版の体制を一新して再構築する、というのも考えなければならない課題なのかもしれません。
いずれにせよ、本作の興行収入は10億円は狙えると思いますが、前作のように15億円を超えるまでのブームになるのかは未知数。大いに注目したいと思います。
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