片岡愛之助、亡き両親に伝えたいことは? 俳優についての持論も「“一石二鳥”の職業」
2023年9月1日 17:00
歌舞伎俳優として活躍する一方、映画やドラマなど数々の映像作品に出演している片岡愛之助。2023年も映画5作品に出演するなど精力的に活動をしているが、ディズニーランドの人気アトラクションを実写映画化した「ホーンテッドマンション」(9月1日公開)では、オーウェン・ウィルソン演じる心霊エキスパートの一員である神父(?)ケントの日本語吹き替えを担当している。八面六臂の活躍をみせる愛之助が、作品の魅力や自身の身の上に起きた心霊体験、精力的に活動するモチベーションについて語った。(取材・文・撮影/磯部正和)
ニューオーリンズの洋館に9歳の息子と引っ越してきたシングルマザーのギャビー。しかしいざ住んでみると、想像を絶する怪奇現象に何度も遭遇。そんな母子を救うために呼ばれたのが心霊現象のエキスパート軍団。愛之助は、オーウェン・ウィルソン演じる軍団の一員である調子のよすぎる神父(?)のケントの声を担当している。
「もともとオーウェンさんはすごく好きな俳優さんだったんです。とても素敵な方じゃないですか。実際ケントもダンディで素敵、優しい感じのあるなかで、ちょっと胡散臭さや臆病なところもある。懐の深い演技をされているので、役者として観ていても、とても面白いなと感じながら声を当てていました」
物語のベースになっているのは、ディズニーランドの人気アトラクションの「ホーンテッドマンション」。監督は、元々ディズニーランドでキャストを務めていたというほど、アトラクションへの愛を持つジャスティン・シミエン監督だ。
「このお話をいただいたあと、ディズニーランドに行ってアトラクションに乗ったんです。それから収録に臨んだのですが、『あー、なるほど』と腑に落ちるところがたくさんありました。完成した作品を観たら、すぐにディズニーランドに行きたくなったぐらい。アトラクションに乗られている方はたくさんいると思いますが、この映画を観ると、また行きたくなると思います。とても“ホーンテッドマンション愛”を感じました」
いわゆる洋画の吹き替えは、2021年に公開された「ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ」のカーネイジ役で経験している。
「カーネイジは僕がやったってわからないかもしれない(笑)。セリフもほぼ唸るだけでしたからね。とても楽しかったし嬉しかったのですが、あまり吹き替えをやったという意識にはならなかったです」
実写で他人が演じる芝居に声を当てるということを本格的に経験し、得たことはあったのだろうか。
「自分が演じるのではなく、人の芝居に合わせるというのは、すごく難しかったです。まずはオーウェンさんの芝居の癖を掴むまでが大変でした。しかも事前に映像をいただかない状態だったので、いきなり収録で合わせるわけで。英語のセンテンスと日本語では長さも違いますからね。最初は本当に苦戦をしたのですが、だんだん彼の芝居の癖や演技プランがわかるようになってからは、どんどんのめり込んでいきました」
ディズニー映画での吹き替えをはじめ、今年は「仕掛人・藤枝梅安」で演じた彦次郎、「キングダム 運命の炎」での馮忌、これから公開を迎える「翔んで埼玉 琵琶湖より愛をこめて」での大阪府知事・嘉祥寺晃など、印象に残るキャラクターを演じている。
「いつになく今年は映画への出演が多かったですね。僕は歌舞伎俳優として軸はありますが、俳優という意味では、引き出しが一つでも多い方が良いのは間違いないこと。映画でもさまざまな役をやらせていただくことで、引き出しが増えていきます。すごくいい経験をさせていただいています」
歌舞伎俳優としての舞台はもちろん、映画やドラマと多忙を極める愛之助。役として感情をアウトプットし続けているが、どうやって新たな感情をインプットしているのだろうか。
「僕はアウトプットしながらインプットしているんです。やっぱり芝居って一人じゃできないじゃないですか。もしずっと一人芝居をしていたら、きついと思うのですが、この間まで共演していた(坂東)玉三郎兄さんからもたくさんのことをインプットさせていただきましたし、現代劇でもそれこそ『翔んで埼玉』のGACKTさんからも多くのことを得ています。その意味で、演じることでインプットもアウトプットもできているので一石二鳥なんです」
また歌舞伎、時代劇、現代劇とバランスよく作品に取り組んでいるからこそ、忙しくても心が健やかだという。
「働き続けることでインプットしてアウトプットできるという意味で、作品に偏りがないのが、すごくありがたいです。全然違うジャンルで違う人と出会うことで、常にフレッシュでいられますからね」
劇中ではさまざまな幽霊たちが登場する。“呪われた館”に住む幽霊たちの数はなんと999体だ。愛之助演じるケントは、霊媒師軍団の一員として幽霊たちと対峙するが、愛之助自身も、非常に霊感が強いという。
「昔はかなりいろいろなものが見えました。モノが勝手に動いたり、金縛りにあったベッドの上を人が歩いてきたり。歌舞伎の公演で地方に行くことも多いですが、ホテルや旅館の部屋に入ると『何かいるな』という場所はすぐわかるんです」
数え上げればきりがないほど心霊体験を持っているという。
「沖縄に行ったとき、ホテルで寝ていたら金縛りにあったんです。もともと『この部屋、何か嫌だな』と思っていたのですが、妻と2人で泊ったんです。そうしたら案の定金縛りにあったのですが、次の朝起きたら、妻が『キャー』というわけです。どうしたんだろうと駆け寄ると、入口の扉から部屋にずっと水に塗れた足跡がありました。そして、その足跡が終わったところが水浸しになっていたんです。多分ずぶ濡れの人が部屋に入ってきて、ずっと立っていたんでしょうね。しっかりしたホテルなので、前のお客さんが水浸しにしたわけでもない。さすがに怖かったので、お風呂にお塩を入れて入りました」
近年はあまり“見えてしまう”ことはなくなってきたようだが、やはり気配を感じることはあるという。物語のなかでは、大切な人に会いたいと思う人たちの感情も丁寧に描かれている。
「僕の両親は53歳と56歳という年で早くに亡くなってしまったんですよね。あれから24~25年経つのですが、会ってみたいですね。まさかいま僕がこんなに素敵なお仕事をさせてもらえているなんて思ってもいないだろうから。自分の息子がディズニー作品で吹き替えをやるなんて……ぜひ報告したいです」
「怖いけれど、ただ怖いだけではなく、登場人物のさまざまな愛の形が描かれているので、泣ける部分も多い」と作品の感想を述べた愛之助。怖さあり、笑いあり、涙あり、感動あり……多面的な作品を彩る愛之助の声の芝居にも注目だ。
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