【「クライムズ・オブ・ザ・フューチャー」評論】過去作のリバイバル公開で人気再燃のクローネンバーグ、8年ぶりの新作は待望のSFボディ・ホラー
2023年8月19日 19:00

第75回カンヌ映画祭のコンペ部門に選出、センセーショナルな内容でクローネンバーグ監督としては「クラッシュ」以来の物議を醸したSFホラー。出演はビゴ・モーテンセン、レア・セドゥ、クリステン・スチュワートなど。
医療技術が進化した未来、人類は痛みを克服し、専用機械を使えば医師でなくても手術を行えるようになっていた。肉体に未知の臓器が生成される加速進化症を患うソール(モーテンセン)は、それに刺青を入れ摘出するパフォーマンスをカプリース(セドゥ)と組んで行っていた。政府はこういった風潮を管理すべく臓器登録所を設立、そこに勤務するティムリン(スチュワート)はソールに強い関心を抱く。
クローネンバーグ8年ぶりの監督作。その間にコロナ禍やネットフリックスとの企画頓挫を経験(書き上げた脚本がNGとなった)した。本作も構想20余年、企画が整うまで3年を要し、3500万ドルの製作費は19社から募った。最も大口だったギリシャ政府は条件として国内での撮影を要求し、監督は11年ぶりの海外ロケを敢行した。
ボディ・ホラーの先駆者としては「イグジステンズ」(99)以来の同ジャンル帰還だ。4度目のタッグを組むモーテンセンが演じる主人公ソールは、学者や研究者が多かった監督の作品では珍しくアーティストという職業に設定されている。内面を曝け出すことが芸術家の本分であれば、ソールは内臓を取り出すことで、それを究極の形で具現化しているという奇妙なキャラクターだ。
共演のセドゥは当初ティムリン役を想定されていたが、カプリースの配役が難航したことから横滑りの抜擢となった。90年代の女性ボディアーティストに着想を得たというスタイリングは新鮮で刺激的だ。一方ティムリン役のスチュワートは不穏な役柄で新たな側面を見せる。2人をはじめ女性キャストの巧演が荒唐無稽な物語に推進力を与えている。
海や水、子供が登場するオープニング、百合的な描写などから初期の作品群、特に「シーバース」との類似を感じてしまう。また、異彩を放つ手術装置サークと操作モジュールや、治癒用のオーキッドベッドは、昆虫や甲殻類の造形を活かしたというデザインで「戦慄の絆」進化版にも見える。さらに百目ならぬ百耳ダンサーは「裸のランチ」のマグワンプと並ぶ強烈キャラだ。
環境問題という主題を扱いつつ、視覚的には豪華キャストとクローネンバーグのフェチ要素が全部乗せとなった本作、監督の過去作を1本でも見たことがある方であればぜひオススメしたい。
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