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「共産主義者か? 同性愛者か?」怒涛の詰問に圧倒される 「インスペクション」新兵への洗礼をとらえた本編映像

2023年8月2日 19:00

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教官たちから徹底的に行われる“インスペクション=点検・検閲”を活写
教官たちから徹底的に行われる“インスペクション=点検・検閲”を活写
(C)2022 Oorah Productions LLC.All Rights Reserved.

ムーンライト」「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」といった革新的な作品を送り出してきた映画会社A24の新作「インスペクション ここで生きる」の本編映像が、このほど公開された。タイトル「インスペクション」に紐づく象徴的なシーンを切りとっている。

監督を務めたエレガンス・ブラットンは、ゲイであることで母親に捨てられ、16歳でホームレスになり、そのまま10年という長い年月を路上で過ごした。その後、生きていくために海兵隊への入隊を志願した…という異色の経歴を持つ人物。本作は、そんな“驚きの実話”を基にしたストーリーが描かれている。舞台は、イラク戦争が長期化する2005年のアメリカ。ゲイであることで母に捨てられ、生きるためにすがるような想いで海兵隊に志願した青年・フレンチ(ジェレミー・ポープ)。彼を待ち受けていたのは、軍という閉鎖社会に吹き荒れる差別と憎悪の嵐だった。

本編映像がとらえているのは、新兵たちがブートキャンプに到着するやいなや“インスペクション=点検・検閲”される光景。ゆっくりと停車するバスの中から走って飛び出してくる青年たち。両サイドから「降りろ!」「さっさと並べ!」「早く行け!」と教官たちが大袈裟な身振り手振りとともにがなり立てている。「シャツをズボンに入れろ」と数秒で服装のチェックまで入り、荷物を抱えた青年たちは黄色い足形のあるエリアまで誘導される。

複数の指導者を取りまとめるロウズ上官は、新兵達に正しい足の揃え方を指示しながら「3カ月でお前らを最強の兵にして戦闘に送り出す」と宣言。新兵達の不安そうな顔とは対照的に、その顔には微かな笑みが浮かんでいる。

画像2(C)2022 Oorah Productions LLC.All Rights Reserved.

海兵隊の卵たちが最初に直面する試練は、教官たちから徹底的に行われる“インスペクション”。彼らがブートキャンプに足を踏み入れた瞬間から「重罪歴はあるか? 最近大麻を吸ったか? テロ組織に所属していたことは? 共産主義者か? 同性愛者か?」と詰問されることに。顔に唾がかかるほどの大声――至近距離で問われた新兵たちも全力で「ノー、サー!」と叫び返さなければならない。教官と目を合わせることは許されず、茶化した者には腕立て伏せが命じられ、たとえ自分の父親が教官と元同僚だったことを伝えても何の役にも立たない。新兵それぞれが一人の人間として“インスペクション”されるのだ。

「今までの軍隊ものでは描かれなかったシーンだと思います」とブラットン監督。鬼教官にしごかれるハードなシーンは、軍隊を描く名作の数々でも散見されてきたが、今回の映像のような“入隊前のやり取り”はあまり馴染みがないかもしれない。ブラットン監督自身の身に起きた事柄であり、彼の経験を色濃く反映している映画だからこそ描けたシーンと言えるだろう。

また、ブラットン監督は「インスペクション」というタイトルに関して「海兵隊という場では日々、点検・検査が行われているのでもちろん軍隊・上官からフレンチへの“インスペクション”ということもあるし、同時に社会の中で自分が“インスペクション”されるという意味合いも込められています」と説明。「私は、軍隊に対して否定も賛同もしていない。この映画を通して会話を生み出して欲しかったのです」と語っている。

インスペクション ここで生きる」は、8月4日からTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開。R15+指定。

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