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【「リバー、流れないでよ」評論】観客と登場人物が2分間という時間を共有することで結ぶ共犯関係

2023年7月29日 13:00

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「リバー、流れないでよ」は公開中
「リバー、流れないでよ」は公開中
(C)ヨーロッパ企画/トリウッド2023

いつの頃からか、世の中が忙しくなったと感じたりはしないだろうか。<ジャネーの法則>で心理的な時間の長さについて説明されているように、歳を取ったことによる相対的な時間感覚がそう感じさせているようにも思えるのだが、どうやら理由はそれだけではなさそうなのだ。令和という時代に生きるわたしたちには、やるべきことがたくさんある。例えば、SNSやメールの確認。Instagramの投稿を約5秒で矢継ぎ早に見て、“いいね”を押したとしても、1分間にこなせるのはせいぜい10人分。ひとつの投稿や返信にかかる時間は僅かかもしれないが、塵も積もれば山となるもの。その1分は1年間で365分にもなり、つまりは6時間費やしていることになる。6時間もあれば2時間の映画が3本も観られる。そう考えれば、SNSが無かった時代との時間の使い方には大きな差があることに気付くだろう。

1日は24時間、1時間は60分、1分は60秒と、老若男女、或いは富の有無に関係なく、時間は等しく経過してゆくのである。また、時間は遡ることも、止めることも叶わない。そんな、人間であれば誰もが同じように体感する時間に対する真理を巧みに利用しながら、京都の旅館で従業員や宿泊客が2分間のタイムループから抜け出せない騒動を描いた映画が、「リバー、流れないでよ」(2023)なのである。重要なのは、劇中の登場人物たちにとっても、映画を観ている観客にとっても、2分間という同じ長さの時間を体験しているという点にある。

山口淳太監督の前作「ドロステのはてで僕ら」(20)は、ワンカットのリアルタイム進行であったため、1階と2階の出来事が正確に2分ズレていなければならないという設定だった。今作においてもワンシーンワンカットを実践するために、俳優の演技や撮影のタイミングを正確に2分間で終わらせなければならないという、1秒のズレも許されない愚直なルールを課している。そのため、ループを抜け出そうと試みるものの失敗に終わる登場人物たちの無念を、観客も同じように感じるようになるのである。やがて、映像から与えられた情報に対して受動的だった観客は、物語が進む、否、時間が繰り返され、停滞する度に、登場人物たちと同時に状況を把握し、物語に対して能動的になってゆくことになる。斯様な情報の共有や既視感の共有が導く共犯関係は、この映画がもたらす快感の由縁でもある。

また、時間が一方通行であるように、旅館の側を流れる川(リバー)もまた、水が川上から川下へと一方通行で流れてゆくという共通点もある。わたしたちは時間が常に流れ過ぎてゆくものだと理解しているからこそ、繰り返される時間に苛立ち、前に進みたいと願う。そんな深層心理を巧みに操作させる今作には、昨今の<タイムパフォーマンス>=<タイパ>に対する映画を製作する側の抗いを見出すことができる。現代人は忙しい旨を前述したが、タイパを重視する社会傾向はそのことと無縁ではない。映画やドラマ、YouTubeやTikTokの動画など、世の中は見るべき映像で溢れ、そのライブラリーは蓄積されるばかり。新作を追いかけるのが精一杯で、旧作を振り返る時間などもはや存在しない。それゆえタイパを優先させる人々は、全知全能な姿勢で「時間を操作する権限は視聴する側にある」との乱暴な言説を盾に倍速や早送り視聴をよしとする。

だが、映画館で鑑賞する場合はそういうわけにはいかない。「リバー、流れないでよ」は、前に進めようとしても進めない無間地獄のような時間のループを観客に強いることで、「時間を操作する権限は製作する側にある」のだと宣言している。なによりも、斯様な作品を劇場の舞台という限定された空間で(基本的に)俳優が切れ目のない演技を実践する演劇人たちが、映画というメディアを利用して映画館で上映している点に大きな意義がある。それゆえ、まだ上映中にもかかわらず「配信されたら観よう」なんて類のSNS投稿は言語道断、ナンセンスだ。

(松崎健夫)

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