【本日公開】ラース・フォン・トリアーの最新作も「キングダム」 シリーズ完結作&病状を語るインタビュー、日本版オルタナティブポスター公開
2023年7月28日 20:30
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」などで知られるラース・フォン・トリアー監督の最新作「キングダム エクソダス〈脱出〉」の公開を記念し、画家・絵本作家のヒグチユウコ氏が描き下ろしたイラストをグラフィックデザイナー・大島依提亜氏がデザインした、日本版のオルタナティブポスターが制作された。併せて、昨年のベネチア映画祭でフォン・トリアー監督が本作と、現在闘病中のパーキンソン病について語るインタビューが公開された。
2022年にフォン・トリアー監督(当時66歳)がパーキンソン病と診断されたニュースが世界を駆け巡ったことから、多くのファンが監督の体調を心配した。パーキンソン病は、脳の異常のために体の動きに障害があらわれる病気で、一般的に震えが出たり、動作が遅くなる、小さくなるなどの症状がある。そんな最中、フォン・トリアー監督は「キングダム エクソダス〈脱出〉」プレミア上映にオンライン出演で登壇し、診断後、初めて国際的な舞台に立った。
パーキンソン病が映画制作に与える影響についての質問に対して監督は「撮影が始まったときは、パーキンソン病を患っていたとは知らなかった。でも、撮影が進むにあたって症状が出始め、特に震えは非常に不快だった。でも、これはよくある病気で、デンマークでは8万人に1人の割合で発症するごく一般的な病気だ。死ぬほどではないけれど、死ぬまで付き合っていかなければならない。もっと仕事をして調整していくうちに、病気の影響が少なくなっていくことを期待しているよ。私にとっては、病気を公にすることで気を落ち着かせることができた。自分勝手だと言われるかもしれないが、私はいつも、ありのままの姿を共有することにメリットを感じているからね」と語った。
この病によって映画を作ることができなくなることはないでしょうか?という問いには、「もし映画を作れなくなる、なんて言い出したら、自分でも自分のことをヒステリックだと思うね。もちろん、この病気がどれだけ脳にダメージを与えているのかは問題で、自分の脳がどれだけ食われているかが気になるところです。もしかしたら(私の映画は)今よりさらにつまらなくなってしまうかもしれない……それはまた次回作でお会いしたときにでも確認しましょう」とユーモアを交えて返答。Variety誌によると、フォン・トリアー監督は、新しい生活に専念するためにしばらくは監督業を休む予定だ。しかし、映画製作から永久に引退するつもりはないと明言している。
なぜ今「キングダム」を復活させたのか?という質問に対しては、「このところ人生であまり良くない時期を過ごしていたから、『キングダム』の続編が一番手をつけやすいと思えたからだ」と述べ、同時に、あえて新作を前2シーズンと完璧につなげようとはしなかったという。
「腰を据えて旧作を見直したわけではないんだ。古いものからのしがらみを取り払おうとして、キャラクターのことだけを考えていた。現代的なものをやろうとは思っていなかったし、ただ単に前作を復活させようとしたわけでもない。脚本を書いているときは、純粋な喜びがあった。なぜかユーモアがいとも簡単に出てきたんだ。私は3部作を2本しか完成させない名人だったから、『キングダム』では、少なくとも最後までやり遂げようと思ったんだ」と語り、「デビッド・リンチと比較すると、彼は確かに『ツイン・ピークス』に明確な終わりを持たせなかったが、実は私はずっとこの『キングダム』の結末は頭にあったんだ。ただ、主要人物ふたりの俳優が亡くなってしまった。(ヘルマー医師を演じたエルンスト・フーゴ・イエアゴーは1998年に逝去、ドルッセ夫人役のキルステン・ロルフェスも2000年に亡くなった)でも、何らかの結末を与える義務があると感じたんだ」と明かしている。
「キングダム エクソダス〈脱出〉」はヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほかにて全国公開中。
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