虫ケラの餌になれ、ハエを食え……海兵隊流“鬼のしごき” 「インスペクション」監督が告白「私が受けた脅しをリアルに再現した」
2023年7月8日 10:00

「ムーンライト」「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」といった革新的な作品を送り出してきた映画会社A24の新作「インスペクション ここで生きる」に登場する“海兵隊での過酷な訓練”をとらえた場面写真を入手した。
監督を務めたエレガンス・ブラットンは、ゲイであることで母親に捨てられ、16歳でホームレスになり、そのまま10年という長い年月を路上で過ごした。その後、生きていくために海兵隊への入隊を志願した…という異色の経歴を持つ人物だ。本作は、そんな“驚きの実話”を基にしたストーリーが描かれている。

舞台は、イラク戦争が長期化する2005年のアメリカ。ゲイであることで母に捨てられ、生きるためにすがるような想いで海兵隊に志願した青年・フレンチ(ジェレミー・ポープ)。彼を待ち受けていたのは、軍という閉鎖社会に吹き荒れる差別と憎悪の嵐だった。理不尽な日々に幾度も心が折れそうになりながらもその都度自らを奮い立たせ、毅然と暴力と憎悪に立ち向かうフレンチ。孤立を恐れず、同時に決して他者を見限らない彼の信念は、徐々に周囲の意識を変えていく。

海兵隊のブートキャンプに足を踏み入れたフレンチ。そこはセクシュアリティ、宗教、人種、すべてが点検・検閲(=インスペクション)される場所だった。ゲイであることが周囲に知れ渡り、ただでさえ不当な差別にさらされるなか、日々過酷な訓練が待ち受ける。その描写は、ブラットン監督が「私が受けた脅しをリアルに再現しています」と語るほど。実体験に基づく、解像度が高い臨場感のあふれるシーンばかりとなっている。

場面写真では、同僚からの嫌がらせによって、隊列を乱した罪を背負わされたフレンチが、その罰としてスクワットを行っている。「虫ケラの餌になれ」と耳元で囁かれ続け、しまいに“頬に止まったハエを食べる”ように命じられる。まさに鬼のようなしごき……。劇中では、フレンチがグッとこらえながら、その命令に従う姿も描かれている。

イラク戦争真っ只中のアメリカが舞台となっている本作。時代的な背景もあり、中東系の同僚イスマイルは、不当な差別にさらされている。銃の扱いに手間取ったことから、本来標的とすべきドラム缶の前に座らされてしまうイスマイル。すると、教官は仲間たちに「引き金を引け」と信じがたい命令を下すのだ。そのほかにもプールでの訓練中、教官がフレンチを失神させ、わざと溺れさせるという衝撃的な場面も描かれていく。

母親に捨てられ、16歳からホームレスとなったフレンチ。路上でともに過ごした仲間たちと離ればなれになり、一人で過ごしてきた彼にとって海兵隊は、自分の存在意義を見出せる唯一の場所だった。
「軍服姿で死ねれば…こんな俺でも英雄になれる」
そう決意し、過酷な訓練と差別が横行する壮絶な環境のなか、生きるために自分自身であることを決して諦めないフレンチ。その姿にはきっと心が震えることだろう。
「インスペクション ここで生きる」は、8月4日からTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国公開。R15+指定。
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