【ネタバレ解説】「タイタニック」論争起こした“ドア問題”を監督が検証 「2人乗れた?」
2023年7月1日 21:05
1997年に公開されたラブストーリーの金字塔「タイタニック」。世界中の観客の心を動かした一方で、同時にさまざまな論争を巻き起こした作品でもあります。
その論争のひとつが、映画のクライマックスにおける「ドアに2人乗れたのではないか?」というもの。この記事では、監督のジェームズ・キャメロンが科学的な検証で明らかにした“ひとつの答え”をご紹介しましょう。
1912年、処女航海に出た豪華客船タイタニック号。アメリカを目指す画家志望の青年ジャック(レオナルド・ディカプリオ)と上流階級の娘ローズ(ケイト・ウィンスレット)は船上で運命的な出会いを果たす。身分違いの恋を乗り越え強い絆で結ばれていく2人。しかし不沈を謳った豪華客船は皮肉な運命に見舞われる……。
タイタニック号が最期の瞬間を迎え、船尾が垂直に立ち上がり、やがて轟音をたてて沈み始める。ジャックとローズは船の最後方(2人が最初に出会った場所)の手すりを乗りこえ海面を見つめる。彼らはお互いの手を強く握りしめ、生きる希望を捨てず、着水時の動作を確認する。
船は海に飲み込まれ、ジャックとローズは極寒の海中へと投げ出される。浮上したジャックは、溺れた乗客に水中で頭を押さえつけられていたローズを助け出し、浮いている木製のドアへと連れていく。
ローズに続きドアに上がろうとしたジャックだが、ドアが転覆しそうになったことから、海中に留まることを選ぶ。ジャックは気を失ってしまいそうなローズに気丈に話し掛け続け、「何があろうと最後まであきらめないこと」を約束させる。そしてようやく救助がやって来たが、ジャックは海中で息絶えていた……。
件の論争とは、ローズだけでなく、工夫次第でジャックもドアに乗れたのではないか、というもの。つまりジャックも助かったはずでは?
ながらくファンや観客の間で議論され続けてきた“説”だが、本作の公開25周年記念番組「Titanic: 25 Years Later with James Cameron(原題)」において、ジェームズ・キャメロン監督が科学的なアプローチで検証。論争にひとつの答えを提示した。
キャメロン監督は科学者チームと2人のスタントマンに協力をあおぎ実験。2人が海に投げ出され、ドアを見つけ、乗るまでの様子をいくつかのパターン(ジャックとローズがドアにつかまって浮く、2人並んで座るなど)に分けて詳細に再現し、その影響と結果を検証した。
2人並んでドアにつかまった場合、2人とも下半身が海に長時間浸かることに。そのほか、同時に乗ると「重みでドアが深く沈み、2人ともが極寒の海により多く浸る」など、いくつかの“事実”が得られた。
結果として、キャメロン監督は「ジャックは生きのびることができたかもしれないが、不確定要素がたくさんある」と結論づけた。さらに同監督は別のインタビューで「2人とも生き残る可能性はなく、どちらか1人しか生き残れなかった」とも答えている。
物理的には、2人ともドアに乗ることは可能だった。しかしそうすると、ドアが沈み、海水による体温低下のリスクが高まるため、2人同時に生存する確率はゼロに近かったようだ。
そうした観点から、映画のクライマックスにもう一度考えをめぐらせてみたい。ローズ1人がドアの上にあがり、ジャックは早々にそれをあきらめた。なぜなのか? 理由について、キャメロン監督はジャックの性格を挙げ、こう断言していた。
「ローズをいかなるリスクにも晒さない、と(ジャックが)考えたうえでの行動だ。それは、彼の性格に100%沿ったものだ」
極限状況下での疲労や精神状態などを加味すると、無数の選択肢のなかから最善策を選ぶことは非常に難しかったはず。それでもジャックは即座に「2人とも助かる道はない」と見抜き、ローズをなんとしても生還させるために命を賭したと解釈できる。まさに愛の力がなしたジャックの行動に、世界中の観客が涙したのだろう。
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