ジェームズ・キャメロン監督「私は恐竜」その真意は? 「アバター」最新作には若い世代へのメッセージも

2022年12月15日 15:00


ジェームズ・キャメロン監督
ジェームズ・キャメロン監督

ジェームズ・キャメロン監督が最新作「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」を引っさげ、10年ぶりに来日を果たし、インタビューのために貴重な時間を割いてくれた。配信サービスが台頭する中、「映画館で見るべき作品」を追求し続けるハリウッドの“映画王”だが、その口からは「私は絶滅寸前の恐竜みたいなもの」と意外な発言も。果たして、その真意は? もちろん、映画ファン待望の最新作にこめたメッセージについても、大いに語っている。

最新作の舞台は、社会現象を巻き起こした前作「アバター」から約10年が経過した惑星パンドラ。人類との壮絶な戦いを経て、惑星パンドラの一員となった元海兵隊員のジェイク(サム・ワーシントン)は、ナヴィの女性ネイティリ(ゾーイ・サルダナ)と結ばれ、家族を築くが、再び人類がパンドラに現れたことで、未知なる“海の部族”の元へ身を寄せることになる。

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――続編「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」では、ジェイクたちが故郷である神聖な森を追われ、海の部族に身を寄せる姿が描かれています。固い絆で結ばれた家族に、試練が訪れますね。

パンドラの神聖な森といえば、ネイティリが生まれ育った故郷であり、ジェイクが自分の家として受け入れた場所でもある。一方、彼らが逃れる海の世界は美しいが、環境の違いを乗り越えるために苦労もするんだ。特に故郷を捨てることになるネイティリは、情緒不安定に陥ってしまう。けれど、世界中にはさまざまな理由で、自分が生まれた場所、住み慣れた場所から離れている人もたくさんいる。「離れたくない」「つながっていたい」。そんな家族への思いは、きっと誰もが共感してくれるはずだ。家族の縁というものは、切っても切れないものだからね。

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――若い世代、つまりジェイクとネイティリの子どもたちが躍動し、物語の大きなカギを握っています。ジェイクと次男のロアクの関係性には、ある種の緊張感がありましたね。

そこは脚本の段階から、非常に意識していました。私も子どもの頃は、周りに理解されない、周りとうまく馴染めないといった疎外感を感じていたし、特に父親との間には、緊張もありました。そういったものが、ジェイクの子どもたちには投影されています。私が青春を過ごした1960年代はベトナム戦争に公民権運動、冷戦もあり、自分と世界がどう関わり合うべきなのか不安も感じていましたし。

今の時代は、なおさら事態が深刻だと思う。私にも5人の子どもがいますし、葛藤を抱える若い世代が「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」を見て、「200年後、遠く離れた星でも同じようなことが起こっているんだな」「自分だけでなく、みんな同じ問題を抱えているんだ」と思ってくれれば。そんな願いがありますね。つまり、劇中にも「I see you.」というセリフがあるように、この映画を通して「あなたを見てくれている人が必ずいる」というメッセージを伝えたいんです。

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――社会現象を巻き起こし、興行面で映画界の頂点を極めた「アバター」の続編です。プレッシャーはありましたか?

少し傲慢に聞こえるかもしれませんが、続編を製作したとして「アバター」と同規模の成功を収めることができるか考えることもありました。それでも、「アバター」で味わった経験は、すばらしいものだったし、再びチャレンジする価値があると思いました。海の部族や海洋生物といった、新たなキャラクターを生み出すため、さまざまなリサーチをしたし、水中でのパフォーマンスキャプチャーについても長年研究を重ねました。実際に製作がスタートしたのは、2017年9月なので、完成までに5年以上の歳月がかかっています。パンデミックの影響で、約半年間すべてがストップしてしまいましたし。

――家族というテーマに加えて、前作に引き続き、環境問題にもクローズアップした内容になっています。これまでもキャメロン監督は映画を通して、未来への警鐘と、その先にある希望を描いてきたように思います。

その通り。以前にも増して、環境破壊が進行するなかで、この映画を作る意味は一層深まりました。SFには未来への警鐘という意味合いが強く含まれていると思うし、人間を守ってくれるガードレールのような、とても必要な存在だと思っています。ただし、単純に警鐘を鳴らすだけの映画は作りたくありません。壮大で魅力的な世界を作り上げ、観客と映画をつなげること。それが私にとっての希望です。海の美しさを見て、感情豊かなキャラクターたちに触れることで、感情が揺さぶられ、何かを感じてもらえたら、これ以上うれしいことはありません。

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――「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」を見る観客に、どんなことを期待しますか?

映画監督として、一番気にかけるのは興行成績よりも、観客にどれだけ影響を与えられるかということ。映画で社会を変える。そんなおこがましい期待はしていませんが、少しでも、変化のチャンスにつながれば、幸せだなと感じるのです。実は、前作「アバター」の公開後、熱帯雨林で働いたり、先住民の人と助け合ったり、自然環境に対して行動を起こした人がたくさんいたのです。私自身も先住民のコミュニティに関わる活動に2~3年取り組んでいたので、「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」の公開までに時間がかかってしまった。おかげで、私のやるべきことは映画、そして「アバター」シリーズに取り組むことだと気づくことができました。

――監督ご自身が最も推奨する「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」の鑑賞フォーマットはどれですか?

まず、皆さんに伝えたいのは、配信を待たず、真っ先に劇場で見てほしいということ。「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」は劇場の大スクリーンで見てもらうことを想定して製作していますから。きっと、映画館で鑑賞すると、何か見逃したものがないか気になって、もう一度見たくなるはずです。例えば、細かな海の魚たちとかをね。2D、3Dのどちらを選ぶかは、それぞれ好みもあると思いますが……私が推奨するのはドルビービジョン、IMAX レーザーですね。

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――来日記者会見では全5部作のプランがあるとお話していましたね。すでに第3弾、第4弾の撮影が一部スタートしているという情報もあります。

技術面でもストーリーテリングでも、まだまだ、多くのことにチャレンジしたい気持ちがあります。今はAIの研究を進めていますよ。そうだな、もちろん「スター・ウォーズ」やマーベル作品みたいに、作品を量産できるとは思っていないけれど、5部作に加えて、スピンオフ的な作品もつくれたらいいなと期待しています。まずは次回作(第3弾)を完成させることが先決だね(笑)。

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――配信サービスの台頭やコロナ禍などを経て、映画業界は大きな変化に直面しています。長年、映画業界をけん引し続ける“キング”であるキャメロン監督は、どのように受け止めていますか?

映画と一言に言っても、劇場公開するのか、その後に配信なのか、いきなり配信なのか。映画に関わっている世界中の誰もが、同じ課題に直面しています。追い打ちをかけたのが、パンデミックの影響。配信サービスが急成長した一方で、劇場がおざなりになってしまった。今こそ、映画制作や劇場配給に関わる人たちを大事にしなければいけないと思います。同時に作品の多様性も重要なテーマ。

アバター」や「トップガン マーヴェリック」、そしてマーベル作品でなければ、経済的に成り立たないのか? その意味では「アバター」だって、私が思い描くようにシリーズ化できるのか不透明な状況です。映画市場が縮小し、真の意味で過渡期にいる状況で、私は絶滅寸前の恐竜みたいなものだよ(笑)。それでも、なんとか映画監督として仕事をしているわけで、いつか「配信作品しか撮れない」と言われたら、不本意だけど、時代の流れに合わせてやっていくしかないと思ってはいるんだ。

アバター ウェイ・オブ・ウォーター」は、12月16日から全国公開。

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