【インタビュー】“完璧な”準備を経て、ソ・ジソブら豪華キャストと積み上げた緻密な密室会話劇 「告白、あるいは完璧な弁護」監督が語る
2023年6月22日 10:00

ソ・ジソブが主演を務め、「王になった男」「神と共に」シリーズのリアライズピクチャーズが製作したサスペンススリラー「告白、あるいは完璧な弁護」。ソ・ジソブをはじめ、キム・ユンジン、ガールズグループ「AFTERSCHOOL」のナナら豪華俳優陣のヒリつく演技対決と、緻密なプロットが織りなす予測不能の展開に息をのむ作品だ。本作が長編映画2本目となるユン・ジョンソク監督に、キャスト陣との綿密なリハーサルやディスカッションを通し、どのように密室会話劇を作り上げたのか、話を聞いた。(取材・文/編集部)

物語の主人公は、不倫相手のキム・セヒ(ナナ)が密室のホテルで殺され、事件の第一容疑者となったIT社長のユ・ミンホ(ソ・ジソブ)。潔白を主張する彼は、有罪をも無罪に変え、100%無罪を勝ち取る敏腕弁護士ヤン・シネ(キム・ユンジン)を雇い、事件の真相を探り出す。彼は事件前日に起きたひとつの交通事故が、セヒの殺人に関係しているかもしれないと告白し、事件の再検証が始まる。しかし、突如現れた目撃者の存在で、事態は思わぬ方向へと進んでいく。

ユン監督は、海上犯罪スリラー「マリン・ボーイ」で、長編監督デビューを果たした。本作では、密室会話劇という新たなジャンルに挑戦している。
「もともとミステリーやスリラー映画が好きなんです。ハリウッドのノワールも好きですし、コーエン兄弟から影響を受けた部分もあります。本作の依頼が来たとき、この好きなジャンルで僕が撮れるんだったら……と、迷いなく引き受けました。密室会話劇で進行する物語を作る上で最も重要なのは、『急いてはいけない』ということです。セリフが多い作品ですし、映画がもたらす情報、感情、事件をひとつひとつ積み上げて、ドラマを作り上げて、そして最後に大きな結末が待っている。その過程を急いてはいけないということが大切だったと思います。キャストの細かい演技のひとつひとつもそうですし、セリフや感情の出し方に集中すると、より面白く見られる映画だと思います」

その言葉通り、物語は深雪に閉ざされた山荘を舞台に、容疑者であるユ・ミンホと有能な弁護士ヤン・シネの対話と、彼らの回想によって組み立てられる。キャストたちは、その時点でキャラクターが知っている情報、観客が把握している情報を整理し、二転三転する物語に合わせた繊細な演技を追求。実に10回以上の個人リーディングとグループリーディング、そして綿密なリハーサルが行われたという。
「本作の特徴でもありますが、限られた小さな空間、少ない人数という状況で、キャストの動きや表情、セリフのトーンをコントロールしなければいけなかった。撮影の場でやるとなると、かなり時間もかかり大変だったので、カメラの前に立つ以前に、念入りにリハーサルを繰り返して撮影に臨みました。事前準備をしただけのことはあって、キャストたちは素晴らしい演技を見せてくれました。僕自身もその演技を編集して、大きなスクリーンで見たときに、快感がありました」


限定的な状況設定にあっても、空間を支配するキャスト陣の圧倒的な演技と、“事件の再構築”というプロセスで、物語は大きな広がりを見せ、観客を引き込んでいく。グループリーディングのなかで、キャストとのディスカッションの機会も多かったそう。そうしたコミュニケーションは、作品づくりにどのような影響を与えたのだろうか。
「最初はキャストたちも、限られた空間、少ない人数での撮影の経験があまりなかったこともあり、どのように演じたらいいのか、たくさんの意見交換のなかで、少しずつ擦り合わせていきました。そして実際に撮影が始まってからは、ふたつのバージョンを撮ることが多かったと思います。ひとつはキャストが、『これが良いんじゃないでしょうか』というパターン。もうひとつは、僕が良いと思うパターン。このふたつを撮影して、見比べました。キャストたちは僕にチョイスの権限を与えてくれました。OKが出たシーンに関しても、『こっちはどうですか?』という形で、さまざまな提案がありました」


見どころは、キャラクターへの先入観を巧みに利用し、ひとりのキャラクターのさまざまな顔が明らかになっていく点。キャラクターたちの真実と嘘が入り混じった“証言”や、さまざまな手がかりや伏線など、ふとしたきっかけで、物語は全く違う様相を帯びる。同じシーンでも、全く別の出来事が起こったり、キャラクターの知られざる一面が明かされたりする。
「おっしゃる通りで、ひとつのシーンの、ふたつの違う側面を見せることが多い作品です。ある人物が、完全に違う人物として描かれるシーンも含まれています。僕が脚本を書いたときは、そこまで難しいと感じなかったんですが、やはりいざ演技に移すとなると、とても難しいなと実感しました。なぜなら同じシーンで、全く違う感情を見せなければならなかったからです。演技する側にとっては負担だなと思っていたんですが、やはり演技者は演技者であって、それを楽しんでいる感じもありましたし、よく理解していたと思います」

「たまに冗談で、『この映画は精神的にとても疲れる』というジョークが、キャストの口から出ることもありました(笑)。1日の撮影のなかで、泣いているシーンの次が笑っているシーンになるケースなどが多かったので、とても大変だったと思います。ただOKが出ると、スタッフ含めて爆笑してしまうような雰囲気で、現場は和気あいあいと進んでいました。連続で全然違うシーンを撮るので、キャスト自身が『いまはどっちを撮っていたんだっけ?』と混乱しつつ、笑っていることもありました(笑)」


ユン監督は、スペイン映画「インビジブル・ゲスト 悪魔の証明」(2016)に着想を得て、脚本を執筆した。物語の核となる部分について、「選択の岐路に立たされた主人公のジレンマから物語は始まります。そしてその選択を正当化するために間違った選択を繰り返し続ける。この映画は、そんな選択の犠牲になった弱者たちの連帯の物語です」と語る。
「オリジナル作品でも『弱者たちの連帯の物語』という要素は重要なテーマとして入っていたんですが、僕自身としては、それをもう少し強調したかったんですね。劇中の出来事は、本当に起こってはいけないことなんですが、現代社会においては、強者によって、立場の弱い人々がいつも抑圧されている。映画のなかで、抑圧されている側の人々が強者に対抗する姿を描いてみたいと思っていました」

ユン監督は本作で、第42回ファンタスポルト(ポルト国際映画祭)監督週間部門の最優秀監督賞を受賞。近年、韓国映画は世界で存在感を強めているが、世界に向けた作品づくりのビジョンを教えてもらった。
「現在、韓国映画が世界的に高い評価を受けていて、映画だけではなく、配信ドラマやK-POPなど、さまざまなカルチャーが注目を集めています。ただこれは、1日で成し遂げたことではなく、約30年前から、作り手たちが良い作品を目指していたからです。ただそうした作り手たちが世界を見据えていたのかというと、必ずしもそうではなくて、ひとつひとつコツコツと、良い作品を作り上げて、その結果がいまにつながっていると思います。意図したからといって、世界に広がっていく文化として成り立つわけではなくて、地道な努力の結果と言っていいと思います。僕はいま、近代史に興味があって、資料をたくさん読みこんでいるところです。次回作ではそうしたテーマについて、何かやってみたいです」
「告白、あるいは完璧な弁護」は、6月23日から東京のシネマート新宿、シネスイッチ銀座、グランドシネマサンシャイン池袋、YEBISU GARDEN CINEMAほかで全国公開。
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