カンヌ受賞の話題作「怪物」は、「すべての人間が見るべき映画」 二村ヒトシ&映画.com編集部がネタバレありで語り合う
2023年6月22日 20:00

TOKYO FMほか全国38のFM局のオーディオコンテンツプラットフォームで、スマートフォンアプリとウェブサイトで楽しめるサービス「AuDee(オーディー)」 と映画.comのコラボ新番組「映画と愛とオトナノハナシ at 半蔵門」。作家でAV監督の二村ヒトシと映画.com編集部エビタニが映画トークを繰り広げる。
今回は是枝裕和監督が、映画「花束みたいな恋をした」の脚本家・坂元裕二によるオリジナル脚本で描くヒューマンドラマ。2023年3月に他界した作曲家・坂本龍一が音楽を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で脚本賞を受賞した「怪物」の感想や見どころを語り合った。
本作はLGBTやクィアを扱った映画を対象に贈られるクィア・パルム賞も受賞していることから、鑑賞前にネタバレ的に作品のテーマが予想できてしまうという危惧もあったが、軸となる二人の小学生以外のキャラクターの卓越した人物描写から「子どもとかかわる人、かつて子どもだった人、言い換えればすべての人間が見るべき映画」とエビタニは絶賛する。
二村は「大人と子ども、親と子、教員と児童、それから子ども同士の同性愛的な感情、それだけではなく、世の中でうまくやれない非定型発達者も見るべき。平凡な人が被害者であり加害者になることが描かれ、あらゆるところに伏線が張り巡らされている。そして巧みなのは、映画の中では非定型発達も同性愛という言葉も使われてない」と説明した。
昨今の話題作や、これまで取り上げた作品の例なども挙げ、「(同性愛をはじめ人間の様々な属性など)カテゴリー化して語られることが差別につながる」と二人の意見は一致。「(本作は)登場人物3人の目線で描かれている。何事も主観なのでプリズムのように3者の見る角度によって変わるもの」とエビタニ。二村は本作について「こういう人はこうだから、こういうことが起きますよね、っていう決めつけがない」「どうやったらこんな脚本かけるんだろう、非の打ちどころない映画」とその脚本の素晴らしさを称える。
そのほか、現代において“普通”と言われる家族のありかたの是非、田中裕子と安藤サクラの怪演、タイトル「怪物」の意味など、今年の邦画屈指の話題作である本作についての話題は尽きず、秀逸な人物描写のほか、この物語のもうひとつのポイントは舞台となった町だと指摘する。「誰かがキャバクラに行ったことでさえすぐうわさが広がるような小さな町。そして、世界中で起きている問題を日本の地方を舞台に描いている映画。そして坂本龍一の音楽、ぜひ世界の方に見てほしい」と二村。エビタニは「ラストシーンは、重いものを見せられたけどいいなと思った。特に最後のセリフがよかった」と振り返り、ふたりはリピート鑑賞を誓っていた。
トーク全編はAuDee(https://audee.jp/voice/show/55260)で聞くことができる(無料配信中)。次回はパク・チャヌク監督作「別れる決心」を取り上げる。
(C)2023「怪物」製作委員会
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