安藤サクラ&黒川想矢の繊細な演技が胸に迫る 「怪物」重要シーン公開
2023年6月11日 12:00
第76回カンヌ国際映画祭で、脚本賞とクィア・パルム賞の2冠に輝いた「怪物」(公開中)の本編映像が披露された。ある事件へとつながる重要なシーンを収めている。
「万引き家族」の是枝裕和監督と、「花束みたいな恋をした」で知られる脚本家・坂元裕二が初めてタッグを組み、故坂本龍一さんが音楽を担当。安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子ら実力派に加え、ふたりの少年をみずみずしくかつ情感豊かに演じた黒川想矢と柊木陽太が共演している。
本作の舞台は、大きな湖のある郊外の町。息子の湊(黒川)と二人で暮らすシングルマザーの早織(安藤)は、スニーカーを片方なくしたり、急に自分で髪を切ったりする近頃の湊が気がかりだった。ある夜、早織が帰りの遅い湊を車で探し回ると、廃線跡の暗いトンネルの中で「かいぶつ、だーれだ」と呼びかける湊を見つける。安心したのもつかの間、早織の車に乗り込んだ湊は、走行中に突然ドアを開け外へ飛び降りてしまい、病院で検査を受けることに。様子のおかしい息子に、早織の不安は増すばかりだった。
本編映像は、病院の帰り道、早織が湊に何かあったのか問いかける緊張感漂うシーンを収めている。「どうした? 学校でなんかあった?」と声をかける早織に対し、何かに追い詰められた様な表情を浮かべながら手元のペットボトルを強く握る湊は、突然「豚の脳なんだよね! 湊の脳は豚の脳と入れ替えられてるんだよ!」と言い放ち、走り出す。
息子から飛び出した衝撃の言葉にショックを受けながら、「誰に言われた?」と湊を追いかけ、早織が心配そうに顔を覗き込むところで映像は終わっている。この直後、湊の口から告げられた衝撃の告白が、学校・社会・メディアを巻き込む大事件へと発展していく。
シングルマザーの早織を演じる安藤は「万引き家族」(2018)に続き、2度目の是枝作品への出演となる。安藤との再タッグを熱望していたという是枝監督は「子ども思いの優しい母親の奥から抑えようのない感情が出てきてしまう、その怖さを見事に表現してもらいました」と安藤の内側から湧き上がる表現力を絶賛している。
主人公の一人であり、物語の中心人物となる湊を演じたのは、オーディションで選ばれ、本作が映画初出演となった黒川。是枝監督は「黒川くんは非常に繊細で、役柄への感情的なアプローチから入るタイプ」と分析。これまでの是枝作品では子どもたちに台本を渡さず、現場でセリフを口伝えする手法がとられてきたが、今回は黒川と(湊の同級生・依里役の)柊木には事前に台本を渡し、これまでとは違ったアプローチがとられたという。
黒川は、完成披露舞台挨拶で「カットがかかっても、なかなか湊くんから自分自身に戻ることができなくて、苦しくなったり、悲しくなったりすることがありました」と撮影中の苦悩を明かしているが、映画初出演とは思えない繊細な芝居をみせている。
なお、映画.comでは安藤と是枝監督にインタビューを行い、このシーンの撮影裏話も語られている。
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