光石研、故郷舞台の主演映画「逃げきれた夢」でいざカンヌへ「北九州弁が流れるのは快感」
2023年5月17日 20:10
俳優の光石研が5月17日、都内で行われた主演映画「逃げきれた夢」の完成披露上映会に出席した。12年ぶりの単独映画主演で、開催中の第76回カンヌ国際映画のACID部門に選出。故郷の北九州で撮影された作品の上映に立ち会う予定で、「カンヌの地で北九州弁が流れるのは快感でしょうね」と胸を高鳴らせた。
記憶が薄れていく病に侵された定時制高校の教頭が、それまでの人生を見つめ直していく物語。二ノ宮隆太郎監督がファンだった光石の主演映画を撮りたいと熱望。仕事で帰郷する際に同行して生まれ育った町を視察し、本人にもインタビューした上で脚本を書き下ろした。光石は「何稿も書いてきたけれど映画になるとは思ってなくて、そんなに期待していなかったけれど、監督、おめでとう」と冗談交じりにねぎらった。
インタビューの発言などもセリフに使われ、地元での撮影には「子どもの頃に遊んでいた場所だから、とにかく恥ずかしかった。小学校の同級生が遠くから写真を撮ろうとするので、『やめろ。下品なことをするな』と言ったこともあった」と苦笑い。さらに、自身の父親役で実父が出演しており「恥ずかしさの極み。スタッフに迷惑をかけないか冷や冷やだった」と照れながら振り返った。
光石の学生時代の友人役の松重豊は、「僕はそのお父さんと文通しています。光石さんより芸能界に向いている。スクリーンデビューで、あの父親ありきの光石さんということが分かる」と解説。その上で「30代から現場をご一緒しているが、常にベンチマークというかリアリティで光石さんにかなう人はいない。その生々しい姿がスクリーンに投影されています」と、バイプレイヤーズの盟友を称えた。
同じ北九州出身で、800人のオーディションで光石の元教え子役を射止めた吉本実憂は「北九州で作品を撮りたいという一つの夢がかない、すごく幸せ」と感激の面持ち。光石との関係が冷え切っている妻役の坂井真紀は「光石さんが絶妙にいらつかせる表情をしてくれるので、いらいらしていました」と話し会場を沸かせた。
人生のターニングポイントを描く作品にちなみ、それぞれの分岐点を聞かれると光石は78年のデビュー作「博多っ子純情」を挙げ「あの1本がなければこの世界にいない。俳優もやっていなかった」としみじみ。しかし、松重が「地元で『博多っ子純情』という映画のオーディションがあって、主役の男の子が光石研くんに決まりましたと新聞に載っていて、なんで北九州の人間が博多っ子をやりよっと、と思った。そこで僕の人生がガラッと変わりました」と明かすと、客席は大爆笑に包まれた。
「逃げきれた夢」は、6月9日から全国で封切られる。
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