閉鎖的な村社会、蔑まれながらも生きる少女 山田杏奈が、森山未來演じる“山男”と出会う予告
2023年5月12日 10:00
山田杏奈が主演を務めた、「リベリアの白い血」「アイヌモシリ」(※タイトルの「リ」は小文字が正式表記)で知られる福永壮志監督作「山女」の予告編、ポスター、場面写真11点が一挙お披露目。映像には、閉鎖的な村社会と神秘的な山々を背景に、運命に翻ろうされる女性の生き様が切り取られている。
本作は、柳田國男の「遠野物語」から着想を得たオリジナルストーリー。自然の脅威を前に、あまりに無力な人間の脆さ、村社会の持つ閉鎖性と同調圧力、身分や性別による差別、信仰の敬虔さと危うさを浮き彫りにしながら、主人公の少女・凛(山田)が自らの意志で人生を選びとるまでが描かれる。彼女の下した決断が、自分らしく生きることや人間らしさとは何か、見る者に問いかける。山田のほか、森山未來、永瀬正敏、二ノ宮隆太郎、三浦透子、山中崇、川瀬陽太、赤堀雅秋、白川和子、品川徹、でんでんらが共演した。
物語の舞台は、18世紀後半の東北。冷害による食糧難に苦しむ村で、先代の罪を負った家の娘・凛は人々から蔑まれながらも、たくましく生きていた。彼女の心の救いは、盗人の女神様が宿るといわれる早池峰山。ある日、飢えに耐えかねた凛の父・伊兵衛(永瀬)が盗みを働く。家を守るため、村人たちから責められる父をかばい、凛は自ら村を去る。決して越えてはいけないと言い伝えられる山神様の祠を越え、山の奥深くへと進む凛。狼たちから逃げる彼女の前に現れたのは、化け物なのか人間なのかもわからぬ“山男”(森山)だった。
予告編では、ひたむきに生きる凛の物語を中心に、村の人々の生活、伝説の存在として恐れられる山男、神秘的な自然風景の数々が、本作の音楽を担当した台湾出身のアーティスト、アレックス・チャン・ハンタイによる音楽とともに、妖しくも美しく映し出されていく。凛が「次は人さ生まれてきたら駄目だよ」と呟き、赤子の亡骸を川に流し、早池峰山に手を合わせる姿からは、間引きされる赤ん坊を川に捨てる役目を担う苦悩が垣間見える。凛は、自分に思いを寄せる駄賃付けの泰造(二ノ宮)に、「おめえは、外さ出で、色んなもんが見れでいいな」と語る。
映像では、禁じられた山へと足を踏み入れた凛が、白い長髪と髭をたくわえた、野蛮にも神聖にも見える山男と出会うシーンも活写。最後には、凛を村へ連れ戻そうとする泰造と、それを拒む凛の姿とともに、銃声が鳴り響き、謎が深まる映像に仕上がった。
ポスターは、「わたしの人生は、誰にも奪わせない」というコピーともに、凛が真っ直ぐに一点を見つめる表情をとらえたもの。凛が森のなかで佇む神秘的なティザービジュアルから一転、どんな逆境をも受け止める芯の強さを感じさせる。青々とした草花や山々を背景にした場面写真には、村人から蔑まれながらも、自然とともに懸命に生きる凛や伊兵衛、山男の髪に櫛を通す凛が切り取られている。さらに、凛が泰蔵を何か言いたげに見つめる場面とは対照的に、春(三浦)が泰蔵を追いつめ睨むシーンなど、村人たちの関係が推察されるカットが揃っている。
民族やルーツにフォーカスを当ててきた福永監督が、脚本も担当。ニューヨークで映画を学び、グローバルな製作体制で、独自の作品世界を追求してきた。初の長編劇映画「リベリアの白い血」は第65回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品され、第2作「アイヌモシリ」は第19回トライベッカ映画祭で審査員特別賞を受賞し、国際舞台でその存在感を強めている。劇作家で、NHK連続テレビ小説「らんまん」を手がける長田育恵が共同脚本を担い、現代につながる社会の歪みと、そこに生きる人々の物語を作り上げた。
本作は、第35回東京国際映画祭コンペティション部門、第47回香港国際映画祭ワールド・シネマ部門に出品。さらに、ドイツ・フランクフルトで開催される第23回ニッポン・コネクション、北米最大のアジア映画祭であるニューヨーク・アジアン映画祭2023への出品も決定しており、世界中から注目が集まっている。
「山女」は、6月30日から東京のユーロスペース、シネスイッチ銀座で公開。7月1日からK's cinemaほか全国で順次公開される。
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