70歳のリーアム・ニーソンが語る最新作「MEMORY メモリー」 アクションへの思いも「騙すようなことはしたくない」
2023年5月11日 13:00
「007 ゴールデンアイ」「007 カジノ・ロワイヤル」を手がけたマーティン・キャンベル監督作「MEMORY メモリー」が、5月12日から公開される。主演を務めたのは、「96時間」シリーズなどで知られるリーアム・ニーソン。アルツハイマーで記憶を失っていくベテランの殺し屋を演じたニーソンに、本作の魅力のほか、役作りなどを聞いた。
完璧に仕事を遂行する殺し屋として、裏社会で絶大な信頼を得ていた殺し屋のアレックス(ニーソン)は、アルツハイマー病の発症により任務の詳細を覚えられなくなってしまい、引退を決意する。これが最後と決めた仕事を引き受けたアレックスだったが、ターゲットが少女であることを知り、契約を破棄。彼の唯一の信念である「子どもだけは守る」を貫くため、アレックスは独自の調査を進める中で、財閥や大富豪を顧客とする巨大な人身売買組織の存在を突き止める。
オリジナル版(ベルギー映画「ザ・ヒットマン」)をプロデューサーに見せていただいて、面白いと思いました。ヒットマンでありながら、いつか自分の命を奪う病を抱えているという設定に興味を抱いて、認知症やアルツハイマーについてのリサーチをして役に挑みました。物語に加えてマーティン・キャンベルと仕事をしたいという思いもありました。
まず、素晴らしいエネルギーを持っている監督です。フィルムメーカーとしての経験値の高さもわかっていたし、現場ではすべての部署が今どんな状況なのかを把握して、褒めたり声をかけていました。彼の現場では全員が平等です。ときには役者だけ特別扱いをする現場もありますが、彼の現場はそんなことがなくて、僕はそういう監督が好きなんです。キャスト同士の共演シーンでは、監督がまず自分のビジョンを話してくれるのですが、みんなの意見もすごく聞いてくれるので、いろいろ提案もさせてもらいました。カメラワークなどは彼らの領域ですが、キャラクターの感情面については役者の声にとても敏感で、ぜひ再タッグを組みたい監督です。
とにかく誇張しないことを意識しました。アルツハイマーの要素は、抑えた形で表現しています。この映画はアクションスリラーというジャンルになると思いますが、そういうジャンルはクライマックスに向けて展開が盛り上がっていくので、自分が病についてリサーチをしたことが盛り上がりの邪魔にはなってほしくはなかったんです。これは監督も同じ意見で、自分の表現が大きすぎた場合、監督も指摘してくれて表現を抑えるようにしました。亡くなってしまいましたが、アイルランドでアルツハイマーと闘っていた友人がいました。数年かけて彼が弱っていく姿を見ていたので、そこで見ていたものも役に注入しています。
常に脚本の出来を見て選んでいます。どんな映画でも基礎は脚本だと思っています。確かに「96時間」以降、アクション映画に出演することが多くなりましたが、いくつ銃撃シーンがあろうと、戦うシーンがあろうと、大事なのは人間的な側面がしっかり描かれているのかということです。去年70歳になりましたが、実は待機作のうち3本にアクションの要素があります。でも、これから少しずつアクションは減っていくと思っているし、観客の皆さんもそう思っているんじゃないかな。常に年齢にあったアクションを演じているので、70歳で30歳、40歳のアクションを見せようとは思っていないし、観客をリスペクトしているから、騙すようなことはしたくないんです。今後は「裸の銃(ガン)を持つ男」のリブートに参加することが決まっているので、これからコメディの世界に足を踏み入れることになります。
もちろん全員好きですが、「マイケル・コリンズ」のマイケル・コリンズが特別な存在です。28年前にアイルランドで撮影をしました。ちょうど長男が誕生した頃なので、名前をマイケルにしたこともあり、特別な時間でした。ワーナー・ブラザースが撮影までに12、3年ほどかかった作品でもあります。北アイルランドで戦争が起きていたこともあるし、マイケル・コリンズは昔も今も物議を醸しだす人なので。でも、自分の心の中の特別な場所にこの作品があります。監督のニール・ジョーダンとは「探偵マーロウ」で再タッグを組むことができて、素敵な時間でした。