「名探偵コナン 黒鉄の魚影」念願だった“初の興行収入100億円”を突破できるか?【コラム/細野真宏の試写室日記】
2023年4月14日 09:30

映画はコケた、大ヒット、など、経済的な視点からも面白いコンテンツが少なくない。そこで「映画の経済的な意味を考えるコラム」を書く。それがこの日記の核です。また、クリエイター目線で「さすがだな~」と感心する映画も、毎日見ていれば1~2週間に1本くらいは見つかる。本音で薦めたい作品があれば随時紹介します。更新がないときは、別分野の仕事で忙しいときなのか、あるいは……?(笑)(文/細野真宏)
今週末4月14日(金)から「名探偵コナン 黒鉄の魚影(サブマリン)」が公開されます。
1997年から始まった劇場版シリーズの26作目にあたりますが、近年は「興行収入100億円の突破」というのが大きな焦点となっています。
(C)2018 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会2018年公開のシリーズ22作目「名探偵コナン ゼロの執行人」の出来は非常に良く、大人も十分に楽しめるクオリティーでした。
21作までのシリーズ最高の興行収入は60億円台。ところが、この22作目の「名探偵コナン ゼロの執行人」で一気に興行収入91.8億円となり「100億円が射程に入る規模」にまで飛躍したのです。
ここから劇場版「名探偵コナン」シリーズへの世の中の意識が変わってきたように思います。
例えばマスコミ試写においては、私の体感では、22作目の「名探偵コナン ゼロの執行人」以降に混み具合が増した印象です。
そして、着実に興行収入90億円台をマークし続けました。(ただし新型コロナによる「緊急事態宣言」が直撃した24作目「名探偵コナン 緋色の弾丸」は除く)
(C)2022 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会前作の「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」では、入場者特典を投入し「ハロウィン再会(リバイバル)上映」という新たな手法も含め、トータルで興行収入97.8億円を記録。
ただ、残念ながら、興行収入100億円は、現時点では一度も突破できていないのです。
そのため、もはや劇場版「名探偵コナン」シリーズにとって興行収入100億円突破は「悲願」と言える状況になっています。
(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会では、「名探偵コナン 黒鉄の魚影」で、シリーズ初の興行収入100億円突破はできるのでしょうか?
私は、今回は、余裕で超えると考えています。
それは以下のような理由から。
まず、本作は、劇場版「名探偵コナン」シリーズにとって大きな転機となった22作目の「名探偵コナン ゼロの執行人」と同じ風格のようなものを感じます。
つまり、本作を機に、さらに劇場版「名探偵コナン」シリーズの人気が高くなるポテンシャルがあると考えています。
これは、「名探偵コナン ゼロの執行人」と同様に、監督・立川譲×脚本・櫻井武晴というコンビになっているのも大きな要因の1つとして挙げられます。
作品の出来は、「名探偵コナン ゼロの執行人」を超えているのかもしれません。
(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会劇場版「名探偵コナン」シリーズが狙うべきターゲットゾーンは、「やや大人向け」なのだと私は考えています。
このラインは意外と難易度が高く、「名探偵コナン ゼロの執行人」が基準となる作品だとすると、個人的には23作目「名探偵コナン 紺青の拳(フィスト)」は「やや子供向け」。
24作目「名探偵コナン 緋色の弾丸」は「大人向け」、25作目「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」は「子供向け」というイメージです。
その意味で、「名探偵コナン ゼロの執行人」以来の、監督・立川譲×脚本・櫻井武晴というコンビによって、再び「やや大人向け」というラインを成立させることに成功した、とも言えるでしょう。
(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会次に、内容ですが、「名探偵コナン ゼロの執行人」が大きな転機になったのは、安室透というキャラクターの人気の高さもあります。
そして、元ネタになっている「機動戦士ガンダム」シリーズの「アムロ」と「赤い彗星のシャア」と同様に、赤井秀一というキャラクターも人気があり、24作目「名探偵コナン 緋色の弾丸」は赤井秀一が重要な役になっていました。
さらに、前作「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」では安室透を重要な役にしていたのですが、本作では、安室透と赤井秀一を投入しているのです!
これは、「名探偵コナン」シリーズの最大のテーマである、謎の「黒ずくめの組織」を出すことで自然にできる構成です。
つまり、「アベンジャーズ」級の総集結をさせる力の入れようなのです!(個人的には、毛利蘭は「アベンジャーズの一員」と言われても違和感のない活躍をしています)
(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会本作は、音楽の使い方が非常に上手く、目下、興行収入10億円突破した「BLUE GIANT」の立川譲監督のセンスの良さが全面に出ています。
冒頭のテンポの良さや、定番のキャラクター紹介の情報も上手く整理されていますし、本作は現時点での「最高傑作」なのかもしれません。
作画は、エンドロールの原画ブロックの最後にある本橋秀之という名前に注目。ベテランで力量のあるアニメーターがいることで、エッジが効いてキチンと留めになるような魅力あるカットができていると感じます。
本作で、初の興行収入100億円突破し、今後、シリーズとしてどこまで伸び続けるのか、大いに注目したいと思います!
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