憧れの映画業界の“闇”を目撃する新人アシスタント #MeTooを題材に、職場の問題を掘り下げる「アシスタント」6月16日公開
2023年3月29日 12:00
憧れの映画業界で、誰もが見て見ぬふりをしている“闇”に気付く新人アシスタントを描く「THE ASSISTANT(原題)」が、「アシスタント」の邦題で、6月16日に公開されることが決定。あわせて、3DCGアーティスト・POOLがアートワークを手がけ、顔のない人物をとらえたティザービジュアルと場面写真3点がお披露目された。
本作は、「ジョンベネ殺害事件の謎」で知られるドキュメンタリー映画作家キティ・グリーンが、2017年にハリウッドから巻き起こった#Me Too運動を題材に、今日の職場における問題を掘り下げた、自身初の長編映画。大手エンタテインメント会社で働き始めた、若く野心ある新人アシスタントの1日の物語を通して、映画業界を舞台にしながらも、さまざまな職場が抱える問題と、ヒエラルキー最下層の人々に共通する経験を浮き彫りにした。
名門大学を卒業したばかりのジェーンは、映画プロデューサーという夢を抱いて激しい競争を勝ち抜き、有名エンタテインメント企業に就職。業界の大物である会長の下で、ジュニア・アシスタントとして働き始めたが、そこは華やかさとは無縁の殺風景なオフィスだった。早朝から深夜まで平凡な事務作業に追われる毎日と、常態化しているハラスメント。しかし彼女は、自分が即座に交換可能な下働きでしかないことも、将来大きなチャンスを掴むためには、会社にしがみついてキャリアを積むしかないことも分かっている。ある日、会長の許されない行為を知ったジェーンは、この問題に立ち上がることを決意する。
Netflixオリジナルシリーズの「オザークへようこそ」「令嬢アンナの真実」でブレイクしたジュリア・ガーナーが、ヒエラルキーの末端で働く人々の代弁者である主人公のジェーンを演じる。オフィスで働く人間の仕草やクセ、息苦しいストレス、トップ企業に巣食うハラスメントや搾取の空気、末端社員である自身の信念との間の葛藤を巧みに表現した。24時間、まるで透明な存在のように、さまざまな暴力の矛先となるジェーン。自分の意見はほとんど述べず、寡黙に状況を見つめる彼女を通じて、観客は自分ならどうするのか、考えさせられる。また同時に本作は、「SHE SAID シー・セッド その名を暴け」にも連なる、職場のパワハラや性的虐待を許容し蔓延させているシステムへの痛烈な告発ともいえる。
撮影は、米ニューヨーク・タイムズスクエアの裏手にあるオフィスで、18日間という短期間で敢行。サンダンス映画祭2020(スポット部門)、第70回ベルリン国際映画祭(パノラマ部門)などに出品され、注目を浴びた。
ティザービジュアルを担当したのは、表情やタイトルが一切なく、性別、年齢、国籍などが不確かな匿名の人物を主題に作品を制作するアーティスト・POOL。薄暗いオフィスで、ひとり佇むジェーンの姿が描かれ、彼女の孤独と、やがて気付くことになる組織の闇を感じさせる。背後にある不在の会長室は、本編では顔を見せない絶対的な権力者の存在を暗示。POOLが作り出す、実在するかのように生々しい顔のない人物には、英語で匿名の女性を指す“Jane Doe”に由来する名を持ち、数百人にも及ぶ労働者に行われたリサーチとインタビューで得られた膨大な実話(とりわけ女性の痛みや混乱の経験)から形成されたジェーンというキャラクターの意味が託されている。POOLは、「自分の目の前で当たり前に起きている女性蔑視や抑圧を再確認させられます。この映画がその気付きへの入り口になる事を切に願っております」と、コメントを寄せた。
「アシスタント」は、6月16日に新宿シネマカリテ、恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で順次公開。
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