「イニシェリン島の精霊」架空の離島はどうやって作られた?あらすじ・キャスト・トリビア
2023年3月9日 12:00

3月12日(現地時間:日本時間は13日)に開催される第95回アカデミー賞授賞式。作品賞にノミネートを果たした「イニシェリン島の精霊」は、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、作曲賞、編集賞の候補にもあがっています。
映画.comでは、同作の概要&あらすじ、キャスト、トリビアをまとめました。本記事でしっかりと予習を行ってから、興奮必至の授賞式に臨みましょう!
[概要&あらすじ]
[評価]
[スタッフ&キャスト]
[トリビア1:舞台は架空の離島 どうやって作った?]
[トリビア2:主要キャストに当て書き]
[トリビア3:ケンカは内戦の鏡映し]

「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督が、人の死を予告するというアイルランドの精霊・バンシーをモチーフに描いた人間ドラマ。「ヒットマンズ・レクイエム」でもマクドナー監督と組んだコリン・ファレルとブレンダン・グリーソンが出演し、バリー・コーガン、ケリー・コンドンが共演した。
1923年、アイルランドの小さな孤島イニシェリン島。住民全員が顔見知りのこの島で暮らすパードリック(コリン・ファレル)は、長年の友人コルム(ブレンダン・グリーソン)から絶縁を言い渡されてしまう。理由もわからないまま、妹や風変わりな隣人の力を借りて事態を解決しようとするが、コルムは頑なに彼を拒絶。ついには、これ以上関わろうとするなら自分の指を切り落とすと宣言する。
・第80回ゴールデングローブ賞 ミュージカル/コメディ部門 作品賞・主演男優賞・脚本賞
・第76回英国アカデミー賞 英国作品賞・助演男優賞・助演女優賞・脚本賞
監督・脚本:マーティン・マクドナー
製作:グレアム・ブロードベント、ピーター・チャーニン、マーティン・マクドナー
撮影:ベン・デイビス
美術:マーク・ティルデスリー
編集:ミッケル・E・G・ニルソン
衣装:イマー・ニー・バルドウニグ
音楽:カーター・バーウェル
コリン・ファレル(パードリック・スーラウォーン)
ブレンダン・グリーソン(コルム・ドハティ)
ケリー・コンドン(シボーン・スーラウォーン)
バリー・コーガン(ドミニク・キアニー)
ゲイリー・ライドン(ピーダー・キアリー)
パット・ショート(ジョンジョ)
ジョン・ケニー(ジェリー)
シーラ・フリットン(ミセス・マコーミック)

“イニシェリン島”は架空の離島だが、主な撮影地となったのはアイルランドの西海岸に位置する、イニシュモア島、イニシュマン島、イニシアー島の3島からなる人口1200人ほどのアラン諸島。脚本も手掛けたマクドナー監督は、「イニシェリンは架空の島なので、どこかの1か所にこだわりたくなかった」と語る。アラン諸島を望むゴールウェイ地方は、マクドナー監督の両親が住んでいたことがあり、土地勘があった。
主人公パードリック(コリン・ファレル)と妹のシボーン(ケリー・コンドン)が暮らす家が建てられたのは、アラン諸島で最も大きいイニシュモア島。建設に必要な大道具はフェリーに乗せて運び込み、地元の石工たちの手伝いのもと1923年当時の風景を再現した。一からセットとして作ることで、マクドナー監督は、海、海岸沿いの道、平原、島の画を窓越しに撮ることができたという。
島での撮影は物流面で困難を極め、島民は劇中に登場する牛やポニーなどの動物に加えて、移動手段として馬や荷車も貸し出し、撮影チームを手助けした。パードリックが愛情を注ぐミニロバも、実際に“ジェニー”という名前で、島でペットとして飼われていた。

一方、コルム(ブレンダン・グリーソン)の家が作られたのは、第2のロケ地となったアキル島のビーチ。イニシュモア島から150キロほど離れたメイヨー県にある島で、本島とは橋で繋がっている。アキル島ではコルムの家、パブのシーンのほか、島の反対側に位置するダゴートにあるアコリモア湖、聖トーマス教会などでも撮影が行われた。
コルム役のグリーソンは、「2つの撮影地は極端に異なっていて、アイルランドの生活の幅広さを物語っていた。アキルには巨大な山がそびえ立ち、イニシュモアには一本も木が生えていない」と振り返る。マクドナー監督も「アイルランドの美しさを映画の中で表現したかった。ストーリー自体がすでに重苦しかったけれど、景色も可能な限りそれに見合う映画的なものにしたかった」とコメントしており、アイルランドの雄大な景色も本作の大きな見どころとなっている。

イニシェリン島の美しい景観とは反対に、島の住民たちは皆それぞれに葛藤、悲哀、秘密を抱えている。マクドナー監督は、自身の初長編監督作「ヒットマンズ・レクイエム」でタッグを組んだファレルとグリーソンを本作に起用し、パードリック役とコルム役に当て書きした。ファレルとグリーソンは実生活でも交流があり、その友情は本作のリアルさに一役買っている。
マクドナー監督は、主人公のパードリックについて「素顔のコリン・ファレルにとても近い」と明かす。ファレルは演じたパードリックを「気の良い男だ」と語り、「善人で難しいことは考えない。ペットにちゃんとエサをやれて、毎日友人のコルムとビールを飲みながらおしゃべりできる小銭さえあれば幸せだ」と説明。妹のシボーンを演じたコンドンは、「喜劇にするには、パードリックに少年性を持たせる必要があった。ちょっとくだらない、間抜けなことを言う寂しい正直者でなくてはならなかった。でも、『そんな奴はコルムと仲良くなれないだろう』と思われるから、子供じみすぎていてもいけない。コルムとつり合うように、もう少し大人でなくてはならなかった」と振り返る。

一方、音楽と思索による芸術活動に身を捧げたいという思いからパードリックに絶縁を言い渡すコルムを演じたグリーソンは、自身も音楽家として活動。グリーソンは「コルムは気の多い男で、しかも凝り性だ」と話し、「病気にかかっているわけではないが、残された時間で何か功績を残したいと考えている。それで芸術活動を優先するようになるんだ」と説明する。しかし、コルムが下した決断は、やがて予想もしなかった結末へと繋がっていく。

マクドナー監督は、パードリックと暮らす妹のシボーン役も、これまで数多くの作品でタッグを組んできたコンドンに当て書きした。シボーンは秀才で島を出たいという夢を抱いているが、兄を心配して行動に移せずにいる。マクドナー監督は、シボーンとコルムを同種の人間に設定したと明かしており、コルムのジレンマはシボーンにも投影され、シボーンもまた、劇中である決断を下すことになる。

パードリックのもう1人の友人ドミニクも、マクドナー監督はコーガンをイメージして脚本を執筆したという。警察官の父親に虐待されているドミニクだが、マクドナー監督は「ドミニクには高潔さがある。そして追求したくなる映画的な風情がある」と語る。そして、「島一番の秀才とは言えないが、もしかしたら一番わかっているのはドミニクかもしれない。人は他人の内面や本性を知らずに、人物評価をしがちだ。バリーはそのことを見事に、胸が張り裂けそうに、そしてコミカルに演じきる」と絶賛する。第95回アカデミー賞では、ファレルが主演男優賞、グリーソンとコーガンがともに助演男優賞、コンドンが助演女優賞にノミネートされており、オスカーの行方に注目が集まる。

本作は、アイルランド内戦が巻き起こっていた1923年が舞台。小さな島のイニシェリン島に被害が及ぶことはないが、海を挟んだ本島からは大砲の号砲や銃声が響く。しかし、シボーン役のコンドンが「戦争なんてどこ吹く風で、小さいながらなんでもあるので、まるで独立国みたいよ」と語るように、島の住民たちはまるで他人事だ。しかし、マクドナー監督は「2人の男たちの小競り合いが、向こうの大ゲンカ(アイルランド内戦)と同時進行している」と語っており、2つには寓話のような側面がある。
グリーソンはアイルランド内戦について、自由への闘争が壊滅的な余波を残したと表現し、「島にくすぶっている分断と残忍な行為は、本島での出来事を反映していると思う。誰もが自分のちっぽけな居場所にしがみつくあまり、不和を生み出し悪化させている」と指摘する。

親友だった2人の男のいざこざは、やがて周囲に飛び火し、物語は群像劇の様相を呈していく。ファレルは「マクドナーが作る作品は面白くおかしく、アナーキーな要素を持っている」と魅力を語り、「私たちはただ、島の人々の物語を伝えているのではない。忠誠心、別れ、孤独、悲しみ、死、嘆き、暴力の追求、これらは直接的にも間接的にも、誰もが経験し、心動かされたことのある、非常に人間的な感情だ」と話す。マクドナー監督もまた、「人はある人には共感し、ある人には共感しない。それは可笑しいことだけれど、同時に悲しいことでもある。私はそれを描きたい。通常、映画製作者は、観客に悲しみを抱いたまま映画館を去らせることに積極的ではない。でも、それこそが狙いの一つだった。この物語や当時のアイルランド、そしてもしかしたら人生そのものの悲しい真実を描いたつもりだ」とコメントしている。

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