【「フェイブルマンズ」評論】一握のトップ監督が歩んだ道は、広い共感性へと通じていく
2023年3月4日 18:00

監督スティーブン・スピルバーグの生い立ちを反映した作品、と聞けば、スタジオに潜り込んで機会を狙い、やがて死に体だったハリウッドを活気づかせるヒット作を量産。そんなレジェンドらしいバックステージものになる……と氏のファンならば考えるのでは? だが本作で描かれるのは、先述した成功エピソードではない。映画作家を目指すティーンの奮起と挫折、そして家族のサポートと父母の確執に迫る、苦渋と気恥ずかしさに満ちた青春期の実態だ。
スピルバーグのアバターである主人公のサミー・フェイブルマン(ガブリエル・ラベル)は、エンジニアの父(ポール・ダノ)とピアニストの母(ミシェル・ウィリアムズ)を親に持つユダヤ系アメリカ移民家族の長男。彼は幼少時「史上最大のショウ」(52)に触発され、自らホームムービーを手がけるようになる。そしてフィルムメイカーとして習熟していくと同時に、その研ぎ澄まされた観察眼で、家庭崩壊の瞬間をエディターごしに発見してしまうのだ。
とてつもなくデリケートな感触を持つ作品だが、我々はこうした事象に、過去のスピルバーグ作品を通じて何度も触れている。監督の人物像に迫ったHBOドキュメンタリー「スピルバーグ!」(17)作中、当人が「私は自己体験を映画に投入し続けている」と言及し、自作のテーマに家族の別れや再生を置いていることを確証づけるのだ。そして近年、両親が長い別離を経て再び寄り添い始めたことに触れ、このドキュメンタリーは幕を下ろす。今このタイミングにおける「フェイブルマンズ」の制作は、父母の和解というアクチュアルな結末によって、踏み込みへの背中を押されたのだろう。
奇しくもこうしたテーマへのアプローチが、映画人の伝記という特殊性を超え、家族ドラマとしての普遍性を強く輝かせる。夢を追う若者と、親の理解や反目。それは多くの人が通ってきたであろうプロセスだ。たとえスピルバーグが何者か知らなかったとしても、作品は広く共感をうながす要素に満ちている。
とは言いつつも、劇中には「未知との遭遇」(77)や「E.T.」(82)などに見られる、印象的ショットの布石とおぼしきレイアウトがタピストリーのように組み込まれ、この映画が紛れもなく、スピルバーグのキャリアを反復したものであることを折に触れ強調する。
前作「ウエスト・サイド・ストーリー」(21)で、ノータッチだったミュージカルに着手したスピルバーグ。長い監督人生で、やり残しのないよう指した次なる一手が、商売をたたむような終活的な企画だったことに寂しさを覚えなくもない。しかしハリウッドに多大な貢献をもたらし、世界で最も周知されたクリエイターであるからこそ、私的な小品を商業映画として発表することが許されるのだ。
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