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【「MEN 同じ顔の男たち」評論】テーマは深くビジュアルはグロく。ガーランド監督の新作は最先端のホラー表現

2022年12月11日 20:00

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「MEN 同じ顔の男たち」
「MEN 同じ顔の男たち」
(C)2022 MEN FILM RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

A24が全米配給、英国の作家・脚本家として知られるアレックス・ガーランドが手がけた3本目の長編映画。悲劇に遭遇した女性が、心を静めるために訪れた田舎で体験する恐怖。出演は「ロスト・ドーター」でオスカーにノミネートされたジェシー・バックリーと、007でMをサポートするタナー役で知られるロリー・キニア

離婚を巡り夫と口論を繰り返すハーパー(ジェシー・バックリー)。いつにも増して激しく衝突した日、夫は命を断ち彼女はその瞬間を目撃してしまう。精神に深傷を負ったハーパーは、人生をやり直すためロンドンを離れ郊外の伝統的なカントリー・ハウスに投宿する。家主ジェフリー(ロリー・キニア)の妙な馴れ馴れしさは気に障ったが、のんびりとした空気と豊かな自然に癒やされていくハーパー。しかし、見ず知らずの男が全裸で敷地内に侵入したときから、おかしなことが起こり始める。そして、彼女に苦痛をもたらすのは、すべてジェフリーと同じ顔をした男たちだった。

副題が出落ち気味なものの、キニアが見せる1人7役の演じ分けは完璧でとにかく不気味だ。また、性差をテーマにした出演作が続くバックリーは、恐怖に追い詰められ戦いを挑む主人公をリアルに演じている。ガーランド監督はSFだった前2作とは違い、フォークロア・ホラー、ジェンダー・ホラー、ボディ・ホラーと多様性を感じさせながらも、これまで同様に女性を主人公に据え、複製と増殖をテーマに、身近に存在する地続きの異世界を表現した。

今回、異界との境界線役を担うのが、森の守り人と呼ばれワイルドマン、マン・イン・ザ・オーク(額にオークの葉)などの異名を持つグリーンマンの存在。全身が葉で覆われた姿は教会などの宗教的な装飾モチーフとして中世から使われ、映画でも教会の彫刻として登場する。基本は男性だが、遺体からは穀物や豆の種子が飛び出す逸話から誕生や復活、豊穣を表している。また、印象的に登場するりんごは接木によるクローン栽培が主流、西洋タンポポは無性生殖の隠喩で、これが身の毛もよだつ、あの終盤のシーンへの布石になっていると思われる。セリフで語られるレダと白鳥、アガメムノンといったギリシャ神話は、姦淫や近親殺のイメージを想起させる。

とはいえ、伏線や深読みは置いておいても、映像とサウンドはとにかく衝撃的。ガーランド組の撮影ロブ・ハーディと音楽ジェフ・バロウらは、明暗の使い方、ヒロインの声、原曲とカバーで反復されるテーマ曲などで不安と美と物悲しさを表現、我々を最大限の嫌悪と恐怖に陥れる。強烈な個性は万人向けではないが、最先端のホラー映画であることは確かだ。

(本田敬)

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