【「グリーン・ナイト」評論】円卓の騎士の伝説を個性派キャストで描く異色の中世ファンタジー
2022年11月27日 15:30

「A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー」を手がけたA24とデビッド・ロウリー監督が再びタッグを組んだ異色の中世ファンタジー。円卓の騎士ガウェインと、謎めいた騎士グリーン・ナイトとの生死をかけたゲームの顛末を、デブ・パテル、ジョエル・エドガートン、ショーン・ハリス、ラルフ・イネソンらの英国人中心のキャストで描く。
居城でクリスマスの宴を催すアーサー王(ショーン・ハリス)と円卓の騎士たち。そこに現れた全身緑色の騎士(ラルフ・イネソン)は「私を斬ってみよ」とゲームを仕掛けてくる。挑発に乗ったガウェイン(デブ・パテル)は一撃でその首を斬り落とすが、騎士は何事もなかったように頭を拾い去っていく。ガウェインはその代償として、今度は騎士からの一太刀を受けることになってしまう。1年後、彼は騎士が待つ礼拝堂に向け孤独な旅に出る。
ガウェイン卿といえばゲームやラノベ界隈では高い人気を誇るキャラクター。アーサー王の甥で太陽の騎士と呼ばれ、午前中には3倍の力を発揮。名剣ガラティンと愛馬グリンゴレットを携え、兄弟を殺したランスロットへの復讐に燃える戦士、というのがよくある設定。しかし、この映画のガウェインは騎士ですらない。酒に溺れて娼館に入り浸り、身の回りの世話はすべて母と姉任せのダメっぷり。アーサー王に認めてもらおうといきり立った結果、無謀な旅に出るハメになるというもので、14世紀に書かれた作者不詳の原作詩に近づけた筋立てになっている。(トールキン版はそれを現代風に書きかえたもの)。
映画でも語られるが、グリーンは生命や成長と共に、文明や歴史を呑み込み自然に回帰させる圧倒的なパワーの象徴。若く青臭いガウェインは、同時に自身も「グリーン」・ナイトにもなり得ることを意味する。また、旅での出来事には貞節、敬虔、友情など騎士道の5つの美徳が織り込まれ、マンティコアやグリーンマンなど宗教表象も散りばめられる。複数の意味を持ったセリフも多く、聖ウィニフレッドや巨人など他の寓話からの要素も加わることで、入れ子構造の奥行きが味わえる。ストーリーの転換点にはガウェインが逆写像になったり、母や王妃など女性キャラが展開のカギになるのも印象深い。
「ア・ゴースト・ストーリー」で東洋的な死生観を披露、今回も脚本を(一部ナレーションも)手がけたロウリー監督は、単なる「ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)」ものには収まらない重層の世界観を、緑深いアイルランドの大自然の上に構築した。最初のガウェインのセリフ「まだ準備が出来ていない」がラストではどう変化するか、それは劇場で確かめて欲しい。
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