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「ストレンジ・ワールド」触手を動かしまくった日本人アニメーターがいた!「途方もない作業量」

2022年11月25日 15:00

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「ストレンジ・ワールド もうひとつの世界」
「ストレンジ・ワールド もうひとつの世界」
(C)2022 Disney. All Rights Reserved.

ディズニーアニメ初となる親子3世代が主人公で、“ディズニーアニメ史上最も不思議な世界”を描く新作映画「ストレンジ・ワールド もうひとつの世界」(公開中)の本編映像(https://youtu.be/8ZukmCHZe0Q)が、このほどお披露目された。

若いころに行方不明となった偉大な冒険家の父へのコンプレックスから冒険嫌いとなった農夫サーチャー。豊かな国アヴァロニアで愛する息子のイーサンと妻と共に静かに暮らしていた。ある日、アヴァロニアのエネルギー源である植物パンドが絶滅の危機を迎え、世界は崩壊へと向かう。この危機を救うため、サーチャーたちは地底に広がる“ストレンジ・ワールド”へと足を踏み入れる。謎に満ちた冒険の先では、世界を揺るがす秘密が待ち受けていた。

映像に映し出されているのは、不気味な触手生物がサーチャーに襲い掛かるシーン。言葉も通じず、危険度も不明。大パニックのサーチャーのもとに、行方知れずとなっていた冒険家のイェーガーが火炎放射器をもって駆けつける光景が描かれている。

実はこのシーン、日本人アニメーターがクリエイティブを担当している。重要な役割を担ったのは、コイケヨーヘイ氏。以前はゲーム会社「ブリザード・エンターテイメント」のシネマティックという部署に勤めていた人物だ。

「ゲーム会社なんですけど、珍しく短編映画だけを作るビルディング(建物)があるんですよ。そこの精鋭チームにいて、キャラクター、アニメーターをやっていました。その時は、キャラクターにフォーカスした7分位のショートフィルムをたくさん作っていたので、今やっている事と内容としてはあまり変わっていなくて、ただ短いだけっていう感じでした」

画像2(C)2022 Disney. All Rights Reserved.

好きなディズニー作品は「塔の上のラプンツェル」。

「3Dアニメーションのクオリティがディズニーアニメーションの中でも爆発的に良かったと感じています。あの作品から学んだことは凄く多いです。コマ送りで再生して、どうやってあのアニメーションを作っているか、アメリカで学生をしていた時に見させて頂いて、本当に教科書のように繰り返し見た作品で、とても思い入れがあります。後はやはり『BIG HERO 6』(=『ベイマックス』)が日本人としてはサンフランシスコに居たので2つの故郷が両方入っているという意味で、凄く好きです」

経歴をさかのぼってみると「もともとはバンドをやっていた」とのこと。「バンドマンをやっていた時は社会から認められたいという意識が強かったんですけども、その中で一人の人と出会って一人の人に認められるっていう経験があったんですよね。その時に満足しまして、別に何千何万人に認められなくたって一人の人に認めてもらえるだけでいいんだ!って気づけたんでそこからもう、自分が何をやりたいかじゃなくって、他の人に自分がやってほしいって思われることをやろうっていう風に意識をシフトしました」と話しつつ、現在に至るまでの流れを語ってくれた。

「たまたまCGの作業があまりストレスなく出来るものだって自分でも分かっていました。僕はできることと出来ないことに凄く差があるので、そういった意味でじゃあCGやろうっていう風に決めてCGと言えばアメリカだという発想でアメリカに行くっていう事を決めました。非常にシンプルな発想です。で、CG業界に行って、いろいろ経験していくうちに、周りがストレスを感じても自分があまり感じないものというのに消去法で進めると、最終的にアニメーションだったという流れです」

画像3(C)2022 Disney. All Rights Reserved.

ストレンジ・ワールド もうひとつの世界」への参加は、友人の紹介がきっかけ。同作に携わることを知ったのは、ディズニーに入ってからのこと。初めて関わる長編映画となった。メインで手掛けたのは「10本の触手があるキャラクター(モンスター)を5匹動かす。その5匹のモンスターの真ん中をメインのキャラクターたちが駆け抜けて崖から飛び降りる」というショット。「本当に大変なショットでした。(製作期間は)ハッキリとは覚えていませんが、2カ月くらいはかかったんじゃないですかね」と振り返る。

「担当したシーンによって難しさは違うと思うんですけど、僕の場合は触手の10本あるキャラクターがとにかく沢山出てくるショットを担当したので、あのシーンを終えた時には『もう触手の出てくるショットはやらなくていいかな…』と思えるくらい、膨大な数をやったんですよね。『次は人間だけのショットをやらせてもらえませんか?』とお願いしようと思った時に、さらに触手が出てきて、取っ組み合いになるという物凄いショットを渡されまして。その時は逆に『これはやってやろう!』という気になりましたね。何とかこのシーンをいいものに仕上げようと。もう逆に言ったら、ここまでこの触手のシーンをやっている人いないだろうと」

画面の後ろの方の小さく動いているキャラクターは、クラウドアニメーターという別のアニメーターが作業を担当。しかし、シーンの大部分、目の前に移っているキャラクターは、担当アニメーターがすべて手掛けることになる。

「1秒間が24コマに分かれているので、1秒につき24コマ全部動かさなきゃいけないっていう状態。本当に途方もない作業量になってくるんです。そこに触手が10本のモンスターが5体いるとすると、50本の触手があることになります。それを1秒につき24コマづつ全部動かすという状態になってきます。そうすると本当にもう『えッ』となるくらいの大変さ。それがとにかく印象に残っていますね……」

前述の通り、触手ショットを終えた後、コイケ氏は再び同様のシーンと向き合うことになった。

「『あ、これは期待してもらえている』と。ある意味『やってくれるだろうと思ってわたされているな』と暗黙の了解を感じたんですよね。逆にそういった意味では期待してもらえているのかなと思ったので『じゃあいい形に仕上げてやろう』と。最後に『すごく難しいショットを頑張ってくれたから、ご褒美にアクティングのショット(演技のショット)をあげるね』と言ってくれたので『あ、やっぱり難しいと思ってたんだな』と分かりましたけど(笑)」

画像4(C)2022 Disney. All Rights Reserved.
画像5(C)2022 Disney. All Rights Reserved.

ディズニーで働くなかで驚いたことは「上下関係があまりない」ということ。「監督も普通に社内ですれ違ったらしゃべります。スクリーニングで映画を見た後も、ドン・ホール監督と『いい映画だったよね!』という話をして、監督も『よかったー!』と喜んでくれました。監督とアニメーターという関係ですが、一緒に作業して頑張った仲間という感覚にさせてくれるというのは、ディズニーの懐の深さだなと感じました」と述懐。

そして、本作での経験をいかし、2023年冬に公開を迎える「ウィッシュ」にも参加することになった。

「『ウィッシュ』も関わることが出来て本当に光栄なんですけども、恐らくもう少しアクティングに関わるショットが増えてくると思うので、そこでディズニーならではのアクティングの部分を沢山学べると思います。そういう意味では、一人のアニメーターとしてさらに成長できるなっていうのは今からでも楽しみです」

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