“映画王”ジェームズ・キャメロンを説得するには? 「アバター」盟友プロデューサーが仕事の流儀を語る
2022年11月22日 14:00
2022年最後の超大作であるジェームズ・キャメロン監督の最新作「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」。今もなお、その全ぼうが深海の底に閉ざされている中、長年キャメロン監督を支える盟友プロデューサーのジョン・ランドーが緊急来日し、取材に応じた。
「日本は特別な場所。あの『タイタニック(1997)』も初めて披露したのは日本だったからね」。そう語るランドーが世界最高峰の映画製作の現場をはじめ、「アバター」シリーズが愛される理由、さらに“映画王”キャメロンとタッグを組む上での流儀を明かしてくれた。なお、取材を敢行したのは10月上旬で、この時点で本編はポストプロダクション中。ランドーが特別に披露した約20分間のフッテージをもとに、質問をぶつけている。
その通り。幸せなときを過ごしていた彼らだが、再び人類がパンドラに現れたことで、未知なる“海の部族”の元へ身を寄せることになるんだ。故郷を捨てるという犠牲を払いながら、それでもいかにサバイブしていくか。それがストーリーの軸になっている。ジェイクたちの子どもも登場し、若い世代なりに、アイデンティティを模索しながら、生きる意味を探していく。そんな旅路も見せ場になっている。
あはは、ありがとう。今回、チャレンジした撮影は想像を絶するスケールだったよ。撮影のために用意した巨大タンクは全部で6つ。最大のものは長さ50メートル、幅20メートル。深さは10メートルあるんだ。撮影では巨大なプランジャーポンプで波を起こし、ジェットの力で潮流を作った。俳優たちのリアルな演技を引き出すためには、リアルな環境が必要だ。一般的なスイミングプールで「泳ぐふりをして」と言っても、それは単なるパントマイムになってしまうからね。
技術面で言えば「アバター」を撮っているときは、その先に控えていた「アリータ バトル・エンジェル」(2019)を念頭に置いていたし、「アリータ」の撮影中には「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」のことを考えていた。撮影中の作品が、次回作の礎になっているのは事実だね。
ただ、テクノロジーというものは常に進化を続けている。今日使った最新技術も、明日には最新ではなくなってしまうからね。だからこそ、日々、最高のレベルを目指し、作業が行われるわけなんだ。もちろん、「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」の見どころは、あくまでストーリー。テクノロジーはストーリーに現実味を与えるための手段なんだ。とにかく、現状に満足せず、試行錯誤を重ねながら、極限にチャレンジするのが、ジム(=キャメロン)の現場だ。
そうだね。やはり「アバター」という作品の魅力は、時代を超えた普遍性にあると思うんだ。先ほども言ったけど、続編では家族、そして若者たちの葛藤が描かれ、きっと誰もが共感してくれるはずだ。それにジムが生み出す主人公には、共通点がある。彼らは決して特殊能力を持ったスーパーヒーローではない。普通の人間が、普通ではない状況に追い込まれるんだ。
だからこそ、観客も自分と重ね合わせて、共感してくれるんじゃないかな。冒険や戦いの背景にある、非現実的なシチュエーションも魅力だしね。現実逃避でき、ヒーローになった気分を味わえる。それこそが、映画館に足を運ぶ観客が求めることだと思うね。
ひと言で表せば“忠誠心”だね。ときにはプロデューサーの立場から、「これはダメ」「それは無理」と伝えなければいけない局面もある……、常にだね(笑)。いずれにせよ、ダメならダメで必ず理由が必要だし、納得してもらうために、粘り強く慎重に説得しなければならない。
例えば「タイタニック(1997)」のラストシーンでは当初、年老いたローズが、(タイタニック号調査隊のリーダーを演じる)ビル・パクストンに隠し持っていたネックレスをいったん手渡し、今度はそれを彼がローズに返すという描写があったんだ。試写の段階でも、そのシーンは残っていてね。でも、どう考えても蛇足に思えて、説得をしたんだ。結果はご承知の通りだよ(笑)。ジムは脚本家でもあるから、彼なりにそうする絶対的な理由もあるし、だからこそ、現場のモチベーションを高いレベルに引き上げる推進力にもなっている。それは断言できるね。
適切な時間、だね。「タイタニック(1997)」は優に3時間を超えていたけど、誰もそのことは気にしていなかったはず。内容に適した上映時間だったからね。
ありがたいことに「タイタニック(1997)」でオスカー像を手に入れることができたし、「アバター」は世界興収の歴代記録を打ち立てることもできた。それでも私にとって、より重要なのは、観客が映画館に足を運んで、映画の世界にどっぷりと没入してくれること。それに尽きるし、「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」が目指すゴールもそこなんだ。映画はそれぞれ、その時代を生きているし、観客が反応してくれれば、プロデューサーとしては満足だよ。先ほど、フッテージを見た感想を話してくれたけど、そういった反応こそが大切であり、大きな喜びなんだ。
「アバター ウェイ・オブ・ウォーター」は、12月16日から全国公開。
PR
©2024 Disney and its related entities
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。