「映画館での体験はすばらしい」 独裁政権下のチリを描いた「1976」監督が日本の映画ファンに呼びかけ
2022年10月29日 11:00
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第35回東京国際映画祭のコンペティション部門に選出された「1976」(チリ/アルゼンチン/カタール)が10月28日、東京・丸の内TOEIで上映され、来日中のマヌエラ・マルテッリ監督が観客とのティーチインに応じた。
舞台は、ピノチェト政権下のチリ。司祭から若い男をかくまうように頼まれ、了承した主婦のカルメンが“日常の激変”に直面する姿を通じて、独裁政権下の静かな恐怖が描かれる。マルテッリ監督によると、本国チリでの評価は「とても良い」といい、その理由として2019年の反政府デモをきっかけとした、憲法改正の流れを挙げ「結局、新憲法の草案は否決されてしまったが、それに不安を抱いている人々が、特にこの作品を気に入ってくれている」と話していた。
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同時にコロナ禍の影響で「映画館に足を運ぶ人は減っている。家での映画鑑賞が一般的なものになっているのです」と映画業界を取り巻く万国共通の課題に触れ、「やはり映画館での体験はすばらしいもの。これからもぜひ、映画館に足を運んで」と客席に呼びかけていた。
タイトル「1976」は、マルテッリ監督の祖母が亡くなった年に由来し、「独裁政権の暗黒時代が、どのような影響を及ぼしたのかを“家庭”から覗き込むような映画にしたかった。チリの映画史を振り返っても、女性の視点から歴史を描いた作品はありませんでしたから」。劇中では、一般市民が互いに疑心暗鬼の目を向け合うシーンもあり「まさに沈黙の時代。警察への密告を恐れて、自分として自由に振る舞えない当時の様子を描いた」と説明した。
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また、色と音楽に対する強いこだわりを指摘する質問に対しては「赤色は血をイメージさせるもの。独裁政権の影が次第に、主人公の女性の日常を塗り替えていくイメージです。また、外から聞こえてくる音や音楽は、やはり外部からの浸食であり、色と音楽の両方が外の世界の恐怖、そして主人公の気持ちの変化を表現している」と答えていた。
第35回東京国際映画祭は、11月2日まで日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。
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