【「キュリー夫人 天才科学者の愛と情熱」評論】19世紀末、男性社会で成功をおさめた移民女性の戦いと人類への貢献
2022年10月16日 09:00

監督は、イランからパリへ移住し、アニメ「ペルセポリス」でカンヌ国際映画祭の審査員賞を受賞したマルジャン・サトラピ。彼女にとって、ポーランドからパリへ移住し、2度ノーベル賞に輝いたマリ・キュリーは、男性社会で成功をおさめた移民の先輩にあたる。その思い入れが、強く感じられる作品だ。
掲げられたテーマは2つ。ひとつは、女性の社会進出が困難だった時代に、ノーベル賞を2度受賞したうえソルボンヌ大学初の女性教授になったマリの強靭さを描ききること。もうひとつは、彼女と夫ピエールが行ったラジウムの発見と放射能の研究を通して、科学の功罪を検証することだ。とくに後者に関しては、放射線によるガンの治療から日本への原爆投下、さらにはチェルノブイリ原発事故にまで話が広がる。映画全体に、作り手の濃いフィルターがかかっていることを感じさせる構成だ。
フィルターの濃さは、テーマ1のマリ・キュリーの人物像にしても、しかりだ。ロザムンド・パイクが演じるマリは、ちょっと頭を下げればすむような場面でも、ぜったいに折れず、妥協せず、謝らない。共同研究者の夫ピエールが単独でノーベル物理学賞の授賞式に出席したときは、帰宅した彼を激怒してひっぱたき、「あなたは私より劣る」とマウントをとる。いまの時代なら、私生活では鬼嫁と呼ばれ、職場ではパワハラで訴えられそうなキャラだ。これが実像にどれほど近いかはわからない。が、少なくとも脚本家のジャック・ソーンとサトラピ監督は、19世紀末に移民女性の立場でマリほどの成功をおさめるには、これくらい強烈な人物である必要があったと考えたようだ。
ピエールの死後、妻子ある部下と不倫したマリは、世間から猛烈なバッシングを浴びる。その敵意も、あるいは同情や好意もはねつけ、つねに戦闘モードで生きるマリは、まさしく孤高の人だ。そんな彼女が晩年に取り組んだのは、第一次世界大戦の負傷兵の治療に自身の研究を役立てることだった。彼女の戦いの究極の目的は、人類への貢献だった。それが、マリの科学者の矜持であったことを、この映画は強く印象付ける。
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