ネット史上最大の事件が映画化 東出昌大×三浦貴大×松本優作監督「Winny」23年3月公開
2022年10月7日 12:00
東出昌大と三浦貴大が、ネット史上最大の事件を題材とした映画「Winny」に主演することがわかった。監督を務めるのは「Noise ノイズ」「ぜんぶ、ボクのせい」の松本優作。ティザービジュアルも披露され、2023年3月に公開されることが決定した。
本作は、2018年に起業家・古橋智史氏が企画し、「ホリエモン万博」の「CAMPFIRE映画祭」にてグランプリに輝いた作品だ。「CAMPFIRE映画祭」とは、応募された企画からクラウドファンディングで資金調達に成功した4組のクリエイターが、観客と審査員の前で映画企画のプレゼンを行い、審査員による投票でグランプリを決定するもの。審査員には、「CAMPFIRE」代表取締役・家入一真氏、俳優の山田孝之、伊藤主税プロデューサーらが務めた。
「Winny」とは、BitcoinやNFT などで使用されているブロックチェーン技術の先駆けと言われている。金子勇氏(ハンドルネームは47氏)が2002年に開発したファイル共有ソフトで、インターネット上でつながった複数のパソコンでファイルを共有する分散ファイルシステムの技術を使用したソフトだ。当時ではあまり利用されていなかったP2P技術を発展させ、データをバケツリレー方式で転送するため匿名性が高かった。
金子氏が「2ちゃんねる」上で「Winny」を公開すると瞬く間にユーザーは増え、ピーク時は200万以上の人が使用していたといわれている。その匿名性の高さから映画やゲーム、音楽などの著作物データが許可なく流通し、著作権侵害の温床と指摘され問題となった。また、その特性を悪用したウイルスも流行。感染すると意図しないデータが流出してしまい、警察や自衛隊の内部資料、企業の顧客情報や個人所有のファイルなどが漏えい。漏えいしたファイルは多数のパソコンにコピーが残ってしまい回収不能になるなど、社会問題となった
次々に違法コピーした者たちが逮捕されていくなか、開発者の金子氏も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、04年に逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光は、「開発者が逮捕されたら弁護します」と話していた矢先、開発者・金子氏の逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることになり、弁護団を結成。金子氏と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまう。やがて運命の糸が交差し、世界をも揺るがす事件へと発展する。
世界を揺るがした、ネット史上最大の事件。なぜ、一人の天才開発者が日本の国家組織に潰されてしまったのか。開発者の未来と権利を守るために、権力やメディアと戦った男たちの真実を基にした物語となっている。
「Winny」開発者の金子氏を演じる東出は、役を演じる上で18キロ増量。弁護士と模擬裁判を実施するなど徹底した役作りを行い、撮影に臨んでいる。三浦は、壇弁護士に扮することに。壇氏本人と実際にコミュニケーションをとりながら役に向き合っていったようだ。
「Winny」は、23年3月TOHOシネマズほか全国公開。東出、三浦、松本監督、企画の古橋氏のコメントは以下の通り。
夭折の天才プログラマー金子勇。生前の彼を知る方で、彼の人間性を悪く言う人は誰一人いませんでした。恨言を言わず、他人を罵る言葉を持ち合わせていなかったそうです。彼は子供のように、あるいは求道者のように、ただただプログラミングと言う名の宇宙に没入し、地平面の更に奥にあるかも知れない地点を目指したのだと思います。無謀にも金子勇さんになろうと役作りの準備をするにあたり、壇先生やご家族の皆様、多くの弁護士の先生方に多大なる御協力を頂きました。改めて御礼申し上げます。金子勇の生きた証を、劇場でご覧頂けましたら幸いです。
私自身、当時関心を持っていた出来事でした。報道では知ることのなかった、金子さんの人間性、当時のやりとり。そのひとつひとつに、引き込まれる脚本でした。実際の出来事を、物語として演じると言うのは大変難しいことです。壇さんの思いを大切にしながら、ある意味、役者として客観性を保つことも大切にし、法廷のシーンなどは、壇さんにお話を聞きつつ、できる限りリアルなものにしていきました。
現場では、東出さんは、役柄への集中力が素晴らしく、壇さんからもお墨付きをもらうほどの金子さんを作り上げていました。松本監督は、最後まで粘り強く、ワンシーンずつ少しでも良くしようという情熱に溢れた方でした。Winnyの件を知っている方も、全く知らなかった方もいると思います。この映画は、様々な目線で見る事ができる作品です。それぞれの目線で楽しんでいただければ嬉しいです。
金子勇さんは、現代のインターネット文化の対抗軸となるネットワークを、今から20年近く前に世界で初めて実現させていました。それは中央サーバーに頼らずとも、個人個人で助け合い生きて行く、夢のネットワーク世界です。しかし2004年の逮捕を機に、Winnyのの開発は幕を閉じました。Winnyの裁判をしている最中にも、アメリカからYouTubeやiTunesなどの新しいサービスが生まれています。
もし金子さんが逮捕されなかったら、もしまだ生きていたら、今の日本は大きく変わっていたかもしれません。悔しいのは、彼のような天才が、裁判の7年によって、文字通りその未来を奪われてしまったことです。
映画という文化は、ある時代の中で、埋もれてしまった場所に光を当てることだと思います。未だ世間にさらされていない金子勇という天才技術者と、彼を支え、共に戦った壇さん始め弁護団の皆様が生きた時間に、私は光を当てたい。この映画が、わたしたち人間が、より自由に、平等に生きてゆくための試金石となることを願って。
この映画を企画し、CAMPFIRE 映画祭でグランプリを獲ったのは今からもう5年前になります。当時「出る杭が打たれない社会を」というテーマで、日本のテクノロジー発展に寄与したいという思いがありました。あれから5年、映画のテーマにもなるP2P技術はブロックチェーンと、Web3として進化を遂げています。
残念ながら、まだ日本がテクノロジーで席巻するまでには至っていません
しかし、映画製作の中で気づいたことは「出る杭を」以上に、「金子勇さんや、裁判をサポートした人達の生き様を少しでも世の中に残したい」という思いが強くなったということです。挑戦しているすべての人にこの映画をご覧頂きたいと思っています。
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