笠井信輔「がんになっても悪いことばかりじゃない」 夫婦で映画イベントに登壇
2022年10月5日 18:00
がんで余命宣告を受けた男とその母が、穏やかに死と対峙していく姿を描く映画「愛する人に伝える言葉」のイベントが10月4日、都内で行われ、フリーアナウンサーの笠井信輔&芽原ますみ夫婦が登壇。2019年に悪性リンパ腫を罹患し、治療を経て復帰した笠井は、自身の経験を振り返りながら本作の魅力を語った。
予告編のナレーションも担当している笠井は「私もかなり厳しい状況でがん治療を行いましたので、(映画を)見ていてとても苦しかったです」と明かす。19年にステージ4と診断され、「生きたいという気持ちは(ブノワ・マジメル演じる)バンジャマンと一緒で、はじめは諦めようと思っていました。本当に映画と一緒なんです。ジタバタするのはみっともないと思うのですが、だんだん抗がん剤を受けると夜中に眠れなくなって、枕を涙で濡らすこともあるんです。そういう状況の中で『生きたい』と思うようになっていきました」と振り返る。
さらに、「食欲不振、味覚障害、口内炎、手指の痺れなどさまざまなことが起きるのですが、やっぱり映画の中に描かれてないキツさはなにか、それはコロナ禍になって誰も見舞いが来ないということなんです。私の場合3カ月半、誰も来なかった。そういう状況の中で制限を受けつつも家族が来てくれる。それが本当に助けになった。妻はよく泣く人なんですけど、私ががんの告白をしてから3年間、私のがんに関しては一度も涙を見せませんでした。『頑張ってよ』『しっかりしてよ』『乗り越えてよ』と、とにかく私の生還を信じてくれた。私は『とくダネ』でも良く泣く涙脆いアナウンサーだったんですけど、妻は30年一緒にいて、『しっかりしなさい』という立場に回ってくれたのが本当に助かりました」と感謝する。
涙を見せず支えた理由について、茅原は「母を直腸がんで亡くして、笠井が悪性リンパ腫という、身近な2人がこのようなことになったのですが、私は母の時にがんを告知された瞬間に諦めてしまって、本当に3カ月で亡くなってしまったんですね。笠井が告白した時には、そのこともあって『きっと大丈夫』と毎日言っていました。アナウンサーなので言葉の力を信じていて、言霊って昔からあるじゃないですか。私は元気を与える係と思って過ごしていました。病室に入る前に暗い気持ちになるのは当たり前なんですが、でも、元気を与えにいく係なんだからということで、(気持ちを切り替えて)『笠井さんー!』と入っていくようにしていました」と語る。
また、笠井は入院生活について「1番嬉しかったのが高校生の三男が卵焼きを作ってきてくれた。いつもの味と違うと思っていたら、おばあちゃんのところに行って習ってきたと。『おふくろの味がいいだろ』って。がんになっても悪いことばかりじゃないってことは思いました」と話していた。
「愛する人に伝える言葉」は10月7日に、東京の新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座ほか全国公開。
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