第23回東京フィルメックスラインナップ発表 審査委員長はリティ・パン、ツァイ・ミンリャン特集、オープニングはジャファル・パナヒ監督作
2022年10月4日 19:00
第23回東京フィルメックスのラインナップ発表会が10月4日にオンラインで行われ、プログラム・ディレクター神谷直希氏が上映作品を紹介した。
今年は「東京フィルメックス・コンペティション」9作品、「特別招待作品」4作品、「メイド・イン・ジャパン部門」2作品、と「ツァイ・ミンリャン監督デビュー30周年記念特集」3作品の計18作品が上映される。コンペ部門の審査委員長は、カンボジア出身で、フランスでも活躍するリティ・パン監督。審査員は香港の映画プログラマー、キキ・ファン、韓国のキム・ヒジョン監督が務める。
会期は10月29日~11月5日。昨年同様、第35回東京国際映画祭(10月24日~11月2日)とほぼ同時期に開催となり、ツァイ・ミンリャン監督特集を共催する。
コンペティション部門には、日本からは、ホワン・ジー&大塚竜治監督の「石門」、工藤将亮監督の「遠いところ」が選ばれた。会見にオンラインで登場した3監督は「今回、日本人のパートナーと作る作品が初めてフィルメックス上映される。日本人と中国人の夫婦がどのように映画を作ったのか見ていただいて、その感想を聞きたい」(ホワン監督)、「フィルメックスは厳選されたアートフィルムが上映されるので、ピリッと身が引き締まる気分。コロナ禍を経て、映画の見方が変わってきた気がするので、お客さんにどのように見ていただけるのか楽しみ」(大塚監督)と話した。工藤監督は「自分もフィルメックスを追いかけていて、ジャ・ジャンクーやツァイ・ミンリャンのファンだったので、同じ映画祭で上映できてうれしく、誇りに思います」とコメントした。
オープニング作品は、ジャファル・パナヒ監督がイラン当局に拘束される中、今年の第79回ベネチア映画祭でプレミア上映され、特別審査員賞を受賞した「ノー・ベアーズ(英題)」。クロージング作品は、第72回ベルリン映画祭で銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞したリティ・パン監督の「すべては大丈夫」となった。
公開待機中の日本映画の中から選りすぐりの作品を紹介する「メイド・イン・ジャパン部門」では、高橋泉と廣末哲万による映像制作ユニット「群青いろ」の最新作「彼女はなぜ、猿を逃したのか?」、太田達成監督の「石がある」が上映される。
期間中(10月31日~11月5日)には、ベルリン国際映画祭と提携する、映画分野の人材育成事業「タレンツ・トーキョー2022」も開催されるほか、NPO法人独立映画鍋との共催によるオンラインシンポジウム「〈世界〉は思ったより近い!? 国境をこえる映画人育成プログラム」(仮)も予定されている。
第23回東京フィルメックスは10月29日~11月5日、有楽町朝日ホールで開催予定。今年の会期は8日間となっているが、クラウドファンディング(https://syncable.biz/campaign/3475/report/5194)で300万円を目指し、例年通りの9日間を目指す。2020、21年に実施したオンライン配信は、予算の問題や近年の他社配信サービスの変化、ゲスト来場への注力などを理由に行われない。
フォトギャラリー
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
第86回アカデミー作品賞受賞作。南部の農園に売られた黒人ソロモン・ノーサップが12年間の壮絶な奴隷生活をつづった伝記を、「SHAME シェイム」で注目を集めたスティーブ・マックイーン監督が映画化した人間ドラマ。1841年、奴隷制度が廃止される前のニューヨーク州サラトガ。自由証明書で認められた自由黒人で、白人の友人も多くいた黒人バイオリニストのソロモンは、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、奴隷としてニューオーリンズの地へ売られてしまう。狂信的な選民主義者のエップスら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、ソロモンは決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バスと出会う。アカデミー賞では作品、監督ほか計9部門にノミネート。作品賞、助演女優賞、脚色賞の3部門を受賞した。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。