【「1950 鋼の第7中隊」評論】中国映画が渾身でよじ登った、戦争スペクタクルの到達点
2022年10月1日 07:00

朝鮮戦争を起点に繰り広げられた、アメリカを主勢力とする国連軍と、北朝鮮を支援する中国軍の戦いに迫る超巨編。なかでも両方が最初に兵勢を交え、激甚を極めた「長津湖の戦い」を、本作は製作国(中国)らしい史観と主張のもとに活写している。もっか冷え込んだ米中関係を思うと、そこに穏やかとはいえぬプロパガンダな香気を覚えなくもない。
とはいえ物語は、従軍する人民志願軍兵の伍千里(ウー・ジン)率いる第7中隊を軸に、中国軍と首脳陣、延いてはアメリカ軍側の3視点を至妙に撚り、鑑賞のノイズになるほど強いバイアスは感じられない。大状況に翻弄される人間ドラマがときおり感傷過多となり、自国の大衆に向けて高邁な理想をうたいがちになるものの、いっぽうで息をもつかせぬ難関突破の連続が、インターナショナルで勝負する気満々な戦争大作の興奮を与えてくれる。
そう、なにより驚くべきは、市場の拡大に応じて制作規模も膨れ上がった中国映画が、はたしてどこまで破格の戦争作品をものすることができるのか――? その回答として、本作の仕上がりには圧倒されてしまうだろう。とりわけ人海戦術と精度を増したCGIが生み出すスケール感は、ハリウッドに一歩も引けをとらない。「プライベート・ライアン」(98)の登場以降、同ジャンルは観客と兵士の視点を一体化するライド傾向がウエイトを占めてきたが、そこからは一歩引いた、パノラミックな群像劇としての眺望絶佳を味わうことができる。
また、このように旧来の戦争大作寄りな要素として、「史上最大の作戦」(62)や「トラ・トラ・トラ!」(70)と同じ複数監督体制を敷いているのが挙げられる。しかし交戦勢力ごとに各監督が演出を担当したそれらとは違い、本作ではドラマ部分と戦闘アクションパートで分担がなされている。そのため前者はチェン・カイコーらしく叙述かつ情調的に、後者はツイ・ハークやダンテ・ラムが激しくテンションMAXでといった、両者がおりなす緩急コントラストも、3時間近い長丁場を牽引するパワーとなっている。そんなアジア映画の実力者を総動員したところもまた、国家の威信を示そうとする圧が強い。だが前述の諸要素を承知のうえで作品にあたれば、見応えになんら不自由はしない。中国が渾身でよじ登った、まさしく戦争スペクタクルの到達点だ。
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