【「Zola ゾラ」評論】連続ツイートの映画化という新たなステージ 刺激的な場面と乖離した“心地よい音の反復”が魅力的
2022年8月28日 08:00

2015年10月、デトロイトにあるダイニング&スポーツバー“フーターズ”のウエイトレスで、パートタイムのストリッパーでもある黒人女性、アザイア“ゾラ”キングが、自らの体験を合計148回ツイートしたところ、スレッドには10万8000人のフォロワーが付いて一気にバイラル化。“ザ・ストーリー”と呼ばれるこのツイートルームは、ある日ゾラが白人のストリッパー仲間に誘われ、うっかり出かけてしまったフロリダ、タンパで体験する出来事をダラダラと呟いたものだった。A24が製作を請け負った本作は、“ローリング・ストーン誌”の記者が関係者の証言を基に綴った@ZOLAと名付けられた記事を映画化したもの。とは言え、ハリウッド映画は遂にツイートを映画にするという新たなステージに足を踏み入れたのだ。
タンパで割りのいいショーに出演できるという仕事仲間、ステファニの誘いは、実は強面の元締めと存在感が薄いステファニの恋人を伴った売春ツアーだったことが分かってからの展開は、恐怖と爆笑の連続だ。ステファニが元締めに給料を搾取されていることを知ったゾラが発案する新たな戦略、そこに群がる男たちの間抜け顔と画面上に陳列されるブリーフの中身、血生臭いトラブル、宙に舞う札束、飛び交う差別用語etc。ザラのロードトリップにはSEXとバイオレンスとコメディがいい塩梅に配合されていて、全然退屈する間がない。
何よりも、常に冷静でクレバーで勇敢なゾラがフェミニズム・ヒーローに見えて頼り甲斐がある。「マ・レイニーのブラックボトム」でレイニーの恋人を演じたテイラー・ペイジが、今回は一転して絶対に一線は譲らない女性の気概とプライドを、鋭い目力と悠々とした歩き方で表現している。重力に逆らい回転するポールダンスのシーンは吹き替えなしだそうだ。方や、エルヴィス・プレスリーの孫娘、ライリー・キーオが演じるとことん下品で自我が希薄なステファニの有り様が、SEXビジネスの闇の深さを感じさせて寒々しい気持ちにもなる。
元々は衣装デザイナー出身で、今年、ニューヨークのメトロポリタン美術館で開催された“In American: An Anthology Fashion展”のルームデザインを任された監督のジャニクザ・ブラヴォーのスタイリッシュな演出と、ハープをフィーチャーしたリフレインやエッジィな電子音楽を多用したミカ・レヴィ(「アンダー・ザ・スキン 種の捕食」ほか)の音楽が、荒削りな“ザ・ストーリー”に不思議なグルーヴ感をもたらしている。ツイートが更新された時に聞こえる鳥のさえずりも新鮮な効果音だ。この映画の最大の魅力は、画面上で展開する刺激的な場面と乖離した、心地よい音の反復なのかもしれない。
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