ゆっくりと時が流れ、人々が行き交う砂漠のカフェのドキュメント「サハラのカフェのマリカ」監督インタビュー
2022年8月27日 08:00

アフリカ北部に位置する世界最大のサハラ砂漠にある1軒のカフェを映し出したドキュメンタリー「サハラのカフェのマリカ」が公開された。第72回ロカルノ国際映画祭最優秀新人監督賞、第11回DMZ国際ドキュメンタリー映画祭最高賞を受賞した本作は、女主人のマリカが一人で切り盛りするカフェを軸に、ゆっくりと時が流れる砂漠の日常を鮮やかに、そして幻想的に描き出す、21世紀の“バグダッド・カフェ”と呼べるような新感覚のドキュメンタリー。アルジェリアの新鋭、ハッセン・フェルハーニのインタビューが公開された。
私が関心を抱いたのはカフェ自体ではなく、マリカ自身がその場所を創り出している、その事実でした。マリカ自身がクリエイトするその場所はまるで交差点のような場所で、しかも非常に民主主義的な場所です。訪れる人たちは自分の意見を話したり、人生を思い返し、愛について語り、哲学を話してみたりしています。

まずマリカという女性自身の存在が私の心に非常に響きました。彼女の内側から醸し出される魅力、彼女が世界を見る目線、この砂漠で人生を歩んだその決断等々、多くのことが私の心に響きました。 そしてマリカのカフェには人生が非常に詰まっていました。海に投げ入れる瓶の中に人生を詰め込んだように、マリカのカフェには色々な人生が詰まっています。ドキュメンタリーとは人生そのものを語るものであると私は感じています。
撮影期間は2カ月と少しかかりました。具体的には9週間程度です。私たちはアルコリアというマリカのカフェから70キロ程離れた町に毎日宿泊をしていました。毎日行き来をしながら撮影していました。撮影クルーは私を含めて2名です。私はカメラマンとして、もう一人は録音技師です。非常に小さなチームであったことからマリカとも接近することができ、親しみをもってこの撮影を実現できたという風に感じていますし、カフェに来る人たちも私たちを怖がることもなくごく自然に撮影できたと感じています。合計の撮影時間は60時間程だったのですが、その後の編集に5カ月程を要しました。非常に沢山の伝えたいことがあったため、編集期間は長くなってしまいました。

その通りです。マリカのカフェは看板も何も本当にないんです。建物がポツンとただあるだけなので、実際にそこを通って見ない限りはそのカフェは知られることはなかったと思います。通ったとしてもそもそも何かわかりません。ですからマリカのカフェに来るのは、その国道を実際に走っている人や、ちょっと道に迷ってしまった人など、国道が何らかのきっかけになった人々にしか分からないと思います。
非常に驚いたという感想やそして強く印象に残ったというものなど、概ねポジティブなものでした。この映画は決してマリカの人生は素晴らしいと歌っているわけではないですし、あくまでドキュメンタリー映画は現実を映し出す鏡だと思っています。
そしてこの映画も今日のアルジェリアを映し出す鏡でありますし、そのアルジェリアの現実が映画として描かれたことに感動したという印象もあります。

マリカは元気な時はいろんな料理、例えばクスクスやアルジェリアの伝統料理を作っていた時期はあったんですが、今はもうメニューは一つのみ。それはツナ缶を使ったオムレツをパンに挟んでサンドイッチのようにした料理のみです。それと一応ワッフルもありました。飲み物としては、劇中にもよく出てくる紅茶、それとコーヒー。あとは砂漠で生き延びるために必要な水、それからレモネードもありました。
もうすぐアメリカのマイアミで3カ月程映画を撮る予定です。その後にアルジェリアに戻ってまたドキュメンタリーを作る計画があります。内容は、私立探偵が人生の謎を解き明かすドキュメンタリーです。
今回はアルジェリアで特別な存在である砂漠のマリカについて映画を撮りましたが、これはある意味普遍的な物語だと私は思っています。自分がした選択、そこから学ぶ人生の教訓、といったことを映画を観る人に感じて、心に響くものになればと私は思っています。
まだ日本に行ったことがないので、行けたらいいなと思っています。また、アルジェリアに行く日本の方々がいらっしゃいましたら、ぜひこのマリカのカフェに行って欲しいと思います。場所はすごくシンプルで、首都アルジェからタマンラセットへ向かう道、ナショナル・ワンの途中にあります。住所は「143砂漠通り」という非常にシンプルな住所なので是非行ってください。
(C)143 rue du desert Hassen Ferhani Centrale Electrique -Allers Retours Films
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