本国アルジェリアでは未だ上映できず 女性弾圧にファッションで抵抗する主人公描く「パピチャ」監督が語る実体験

2020年10月29日 16:00

ムニア・メドゥール監督
ムニア・メドゥール監督

1990年代、アルジェリア内戦時のイスラム原理主義による女性弾圧の実態を、ファッションデザイナーを志す大学生の視点を通して描き、第72回カンヌ国際映画祭ある視点部門で上映されて称賛を集めるも、本国では当局によって上映禁止となった「パピチャ 未来へのランウェイ」が10月30日公開される。自身の実体験を交えた本作で長編デビューしたムニア・メドゥール監督に話を聞いた。

自由と未来をつかみ取るため、命がけともいえるファッションショーの開催を決意する主人公、ネジュマの姿を活き活きと描いた。祖国を離れざるを得なかったメドゥール監督は、自身とは逆の立場の女学生を主人公にした。

「私の父は映画監督で、そのために私自身は望まなかったにもかかわらず、家族の問題で自分の意志とは関係なく祖国喪失のような形でフランスに行きました。友達とも離れ、フランスやヨーロッパというはじめての世界、新しいライフスタイル、新しい文化、というのは10代の私にとっては決してウキウキするものではなく恐ろしいものでした。その時の感情を思い出し、記憶を取り戻す中で、アルジェリアに残るヒロインを描こうと決め、ネジュマには私と正反対の決断をさせたのです。そして、この映画が撮れたのはアルジェリアからフランスに行き、少し客観的にアルジェリアを見ることができるようになったからだと思います」

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劇中では、アルジェリアを離れてフランスに渡ることを望む人物も登場する。フランスに渡ったアルジェリア人のその後の暮らしについて、監督自身の体験を交えながらこう振り返る。

「私は何も持たず、命からがら祖国を離れました。危険が身近にやってきていたのです。明日まで待っていられないくらいの緊急性がありました。しかもアルジェリアで培った文化、教養が役に立たないフランス社会に入り、フランス語を学びなおしました。そのため、アルジェリアから渡った人たちは、もう一度文化を学びなおしフランスに同化するため努力をしたと思います。私も大学に行き続け、研修生となり、ドキュメンタリーやルポルタージュを撮り、フランスの社会に順応しようとしました。しかし、順応できた人もいれば、順応できなかった人もいます。それは年齢によるものもあると思います。20歳代の私たちと40歳、50歳代の人たちが新しい社会に飛び込むのとは違うのかもしれません」

カンヌ映画祭をはじめ、世界で高い評価を受けたものの、本国アルジェリアで未だに公開ができていない理由については「この映画はアルジェリアの文化省が出資をし、脚本も許諾を得ています。はっきりとした理由は明らかになっていません」とのこと。「ただ、90年代の内戦では15万人もの死者が出ていて、いまだに国民にとってはトラウマになっています。いまだその傷が癒えてないこと、さらに、昨年は国民が政治に不満をもちあちこちでデモが起こっていて、政治がとても不安定だったことも理由の一つかもしれません」と推測。

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昨年冬の大統領選前には、20年に及ぶ独裁政権に不満を持つ市民による大規模なデモが起こった。映画に描かれた時代に比べ、女性の地位向上も含め、変化を求める人々が増えていることだと分析している。

「世界中で抑圧された状況があり、特に北アフリカの女性は公の場での服装など身体的な抑圧などが顕著です。経済的な問題もあって、今も状況は良くなっていないと言っていいでしょう。若者たちの行進や抗議行動を生み出したのは、このような不満や閉塞感だと思います。いまアルジェリアの町では若い人たち、特に女性がプラカードを掲げながらデモを行っています。希望が生まれていると言っていい。このデモがよい形で着地すると良いと思っています」

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(映画.com速報)

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