【「ロッキーVSドラゴ ROCKY IV」評論】「ロッキー」は「3」で終わるはずだった。手を入れてない場所がないほど全く新たな再編集版
2022年8月20日 14:00

「ロッキー」(76)はシルベスター・スタローンが、わずか3日で書いた脚本から始まった。一時はホームレスになり飼い犬まで売った(後に買い戻した)極貧時代の彼が作り上げた物語は、ニューシネマと娯楽性が両立した味わいで、早速映画会社が興味を示した。だが、スタローン自身が主役を演じる条件がネックとなり、当初の半分以下に減額された100万ドルの低予算映画として製作された。
その後のサクセス・ストーリーは誰もが知るところだろう。シリーズ3作の全世界合計興収は約7億ドルにも上り、2次使用やグッズも含めれば、もはや一大産業になっていた。だが、スタローンは以前から「ロッキーは3部作」と宣言していた。このままだとストーリーは陳腐になり、強さのインフレ化が進むことは明らかだったからだ。
1982年、ソ連の体制危機が囁かれ始めた頃、スタローンは「ロッキーが国際社会に参加する形なら続編はあり得る」と一転してシリーズの存続に舵を切った。インスパイアされたのは36年に行われたドイツ王者マックス・シュメリングと「褐色の爆撃機」ジョー・ルイスによるヘビー級タイトルマッチと言われている。ナチスドイツとアメリカの「第2次大戦の前哨戦」と言われた国を挙げての試合を、80年代の米ソ冷戦構造に置き換えようと試みた。新作は動き始めた。
結局「ロッキー4 炎の友情」(85)はシリーズ最大のヒットとなったが、反動も大きかった。当時の流行だったMTV風の演出とコンサバ指向の組合せは違和感が強く、最低の映画を表彰するゴールデンラズベリー賞では4部門を獲得。劇場公開以降はネタ化されシリーズは先細り、ロッキーは「クリード チャンプを継ぐ男」(15)まで忘れられた存在になった。
スタローンも複雑な思いを持っていたのだろう。コロナ禍をきっかけに自身がスタジオにこもって手掛けたこの再編集版は、負のレガシーを最大限払拭することに集中した。安易なモンタージュを避け、適切な劇伴に差替え、ポーリーのロボット“Sico”を削除する。各シーンの色調を整え直し、ボクサーの身長に合わせて画面斜度をミリ単位で調整したりと、無数の修正によってアポロ、ドラゴ、ロッキーそれぞれの戦う理由が明確になり、ドラマ性豊かな力強い作品に生まれ変わった。
作業の模様はYouTubeにアップされており、パンチの受け過ぎで緊急搬送されたことや、アポロの死に対する罪悪感など裏話も満載、コメンタリーとしても楽しめる。また「ヘラクレス」(57)やジョーゼフ・キャンベルなど、映画への知識と愛情に溢れた監督スタローンの語り口も泣かせる。こちらの日本語版リリースも望みたい。
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