【「プアン 友だちと呼ばせて」評論】“終わり”から始まる新たなストーリー 予想外のエモい展開が感動に繋がる
2022年8月7日 16:00

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」で注目を集めたバズ・プーンピリヤ監督の“半自伝的ストーリー”を、世界的名匠ウォン・カーウァイがプロデュース。そんな売り文句を聞かされたら、期待値はぐんぐんと上昇するに決まっている。さて、仕上がりは? 稀有な才能たちが創り上げた“男二人旅”……同行する価値は十二分にあった。
物語の中心を担うのは、白血病で余命宣告を受けた青年・ウードと、ニューヨークでバーを経営する親友のボス。ウードの最後の願いは“元カノ巡り”だ。再会を喜んでくれる者もいれば、拒絶する者もいる。思い出は、誰かにとっては輝きを放ち、他の誰かにとっては見向きもしたくないものだったりもする。ひとつの出来事に対する意味合いだって、人によってはまったく変わってしまうものだ。
そんな甘くて苦い旅が続いていく……のだが、終着点で思わぬ出来事が起きる。クライマックスから「新たなストーリーが始まる」という、この構成が新鮮だ。出会いと別れが確約されている“元カノ巡り”。そこには「感謝」と「謝罪」が同居している。ありがとう、そして、ごめん……。この要素が、同行者だったボスの過去と未来をガラッと変えてしまう。この意外でエモい展開! 流石に予想することはできなかった。思わぬ不意打ちに感動してしまったのは言うまでもない。
「一緒に映画を作ろう」と持ち掛けたのは、カーウァイ監督だそう。脚本執筆、キャスティングに徹底して付き合ったようだが、撮影現場には1度も顔を出さなかった。完全な自由を与えられたプーンピリヤ監督。パーソナルな作品ゆえに“自分らしさ”を遺憾なく発揮したテイストになるかと思いきや、画作り、照明の具合には“ウォン・カーウァイ”らしさが感じられる。撮影は「バッド・ジーニアス」に続いてパクラオ・ジランクーンクム。「ウォン・カーウァイ×クリストファー・ドイル」ばりの名コンビとなっていくに違いない。
ぜひ音楽にも耳を傾けてもらいたい。ボスのクールなカクテル作りにあわせて鳴り響くのは「セッション」でも知られる「Whiplash」。その後も、プーンピリヤ監督がチョイスしたという、エルトン・ジョン、フランク・シナトラ、キャット・スティーブンス、ザ・ローリング・ストーンズの楽曲が続々と登場。ストーリー、そして美しい映像と見事に合致しているという点がとにかく素晴らしい。
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