「ムカデ人間」ディーター・ラーザーの遺作 死者の日に契られる純愛を描く「ノベンバー」10月公開
2022年7月20日 21:00

「死者の日」を迎える11月のエストニアの寒村を舞台に、世にも不可思議な純愛を描いた東欧ダーク・ラブストーリー「November(原題)」が、「ノベンバー」の邦題で、10月29日から公開されることが決定。あわせて、日本版ティーザーポスター、場面写真、予告映像も披露された。
原作は、エストニアの作家アンドルス・キビラークの「レヘパップ・エフク・ノベンバー(Rehepapp ehk November)」。2000年に発表されると、エストニア内の全図書館において、過去20年間で最も貸し出された本としてカルト的ベストセラーとなった。現在では、フランス語、ポーランド語、ノルウェー語、ハンガリー語、ラトビア語、ロシア語に翻訳され、ヨーロッパ各国で愛読されている。

監督のライナー・サルネは「全てのものには霊が宿る」というアニミズムの思想をもとに、異教の民話とヨーロッパのキリスト教神話を組み合わせて映画化。その独創性に溢れた映像美が高く評価され、アカデミー賞外国語映画賞(2018年)のエストニア代表に選出された。日本では、第10回京都ヒストリカ国際映画祭「ヒストリカワールド」部門で上映されている。
月の雫の霜が降り始める雪待月の11月、「死者の日」を迎えるエストニアの寒村。戻ってきた死者は家族を訪ね、一緒に食事をしサウナに入る。精霊、人狼、疫病神が徘徊するなか、貧しい村人たちは「使い魔クラット」を使役させ隣人から物を盗みながら、極寒の暗い冬をどう乗り切るか思い思いの行動をとる。農夫の娘リーナは村の青年ハンスに想いを寄せている。ハンスは領主のドイツ人男爵の娘に恋い焦がれるあまり、森の中の十字路で悪魔と契約を結ぶ。


農家の娘リーナを演じたのは、レア・レスト。複雑なキャラクターを魅力的に演じ切り、本作を別次元の作品に導いた。男爵の謎めいた娘には、パフォーマンス・アーティストとして活躍するジェット・ルーナ・エルマニス。そのエキゾチックな容姿で無垢なる役柄を演じ、記念すべき女優デビュー作となった。2人の美しいゴシック・ヒロインの気を引こうとする農家の青年ハンス役は、ヨルゲン・リク。憂鬱な表情を浮かべては、愛に満ちた笑みを浮かべ、ストーリーを思いがけない方向へ誘る。


男爵役は「ムカデ人間」のハイター役でカルト的人気を誇るドイツの名優ディーター・ラーザー。スパンコールのジャケットを身につけ、凛とした男爵の力強さと痛々しさを絶妙なバランスで演じる。2017年に撮影した本作が、ラーザーの遺作となった。そのほか、魔女、幽霊、得体が知れない老婆など、多くのキャラクターを役者経験のない人々が務めている。
夢のようなモノクロームの世界を撮影したのは、マート・タニエル。その漆黒の深みと白い雪のような映像美が絶賛され、トライベッカ国際映画祭、ミンスク国際映画祭での最優秀撮影監督賞、アメリカ撮影監督協会スポットライト賞を始め、名誉ある賞を次々と受賞した。
「ノベンバー」は、10月29日からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。
(C)Homeless Bob Production,PRPL,Opus Film 2017
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