【「シン・ウルトラマン」評論】古典の現代的反復が「ウルトラマンとは何か?」を定義づける
2022年5月19日 14:00

ウルトラマンとは、いったい何なのか―? この本質的な疑問にロジカルな回答を与える、画期的な映画ではないだろうか。日本の誰もが知るキャラクターの超メジャーでありながら、世代ごとに存在も解釈も異なる“光の巨人”に、これがウルトラマンなのだと確信づける教本的な作品ができた。それだけでも本作の価値は並外れて大きい。
怪獣ゴジラを再定義した「シン・ゴジラ」(16)。それを生み出した庵野秀明と樋口真嗣のタッグによるウルトラマンへのアクセスは、フランチャイズの嚆矢となった1966~67年放送の特撮テレビドラマ「空想特撮シリーズ ウルトラマン」全39話の概言というべき起源の映像化だ。舞台を現代に移し、巨大不明生物・禍威獣(カイジュウ)や外星人など人知を超えた生命体が頻出する異常事態に現実的な裏付けをブレンドして、フィクションを真摯に受け止めるに足る正当性が与えられている。特にVS外星人のエピソードに幅を設けることにより、同じ未知の知的生命体であるウルトラマンの存在意義をコントラストで浮き上がらせていく。
初代からの「ウルトラマンシリーズ」を知る人には、同シリーズに特徴としてみられた約束事や設定、ひいては実相寺昭雄ら旧メインディレクターたちの演出スタイルを踏襲するなどのオマージュに目が潤むだろう。また現代美術の気鋭だった成田亨の精神を汲むことでアート性は高まり、日本の怪獣文化がなぜここまで豊かなのかを視認できる。基となるエピソードの取捨選択や登場怪獣のチョイスも絶妙だ。
そして最も肝心なのは、ともすればウルトラマンの超人的存在に依存してしまう人間が、いかにして自己問題に対処するべきなのか--? 古典が問いかけてきたメッセージを反復することで、この映画は単なるレトロスペクティブに終わらず、ウルトラマンが持つ正義の本質とテーマを現代に脈づかせる。そういう意味ではまさしく教本であり、またウルトラマンの存在価値を再確認するための指標でもあるのだ。本作が禍威獣対ウルトラマン、外星人対ウルトラマンという対峙構造の延伸から、禍威獣対人間、外星人対人間の要訣へとターンしていくのも、そうした姿勢のあらわれなのかもしれない。
もちろん、光の巨人と怪獣のバトルというウルトラマンの大前提をまずは死守してこそ、本作の主張は響きを帯びてくる。過去に数々のモンスタームービーでケレン味のある戦闘シーンを創造してきた、樋口真嗣監督のダイナミックな意匠が優秀なスタッフワークを通じて炸裂する。脚本を手がけた庵野秀明の色合いとともに、樋口特撮映画としての創意がひときわ輝いて見えるのは自分だけではないだろう。
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