【「バブル」評論】極限のアクションで奏でる「人魚姫」モチーフのボーイ・ミーツ・ガールストーリー
2022年5月15日 18:00

「君の名は。」の大ヒット以降、その流れをうけて企画されたと思われるオリジナルアニメ映画が多く世に送りだされてきた。アニメファンは良く知っているが一般層までは浸透していないクリエイターや制作スタジオが起用され、挿入歌が多くつくられたり、アッと驚くアーティストが楽曲を手がけたりするなど音楽面に工夫が凝らされることが多い――そんな特徴がある作品群のなかで、本作は真打ち登場と言える。
新海誠監督を日本を代表するアニメ監督にした立役者である川村元気が企画・プロデュースを務め、テレビアニメ「進撃の巨人」(第1~3期)を手がけた荒木哲郎監督とWIT STUDIOが両者の総決算と言えるハイカロリーのアニメーションを実現。映画ファンには「YAMAKASI ヤマカシ」でおなじみのパルクールが全編にわたって展開され、3DCGと手描きの作画を駆使した極限のアクションが堪能できる。小畑健(キャラクター原案)、虚淵玄(脚本)、澤野弘之(音楽)ら豪華スタッフが集結し、宮野真守、梶裕貴ら荒木監督作品の主演声優が、志尊淳、りりあ。、広瀬アリスの脇をかためている。
世界に降り注いだ泡(バブル)によって重力が壊れ、日本の首都ではなくなった東京で、少年ヒビキと不思議な少女ウタは、“ある音”に導かれるようにして出会う。最初は言葉がしゃべれず、あどけない表情をみせるウタの魅力は子猫のようなすばしこい動きで表現され、ヒビキと心を通わせていく様子もパルクールを通して描かれる。「人魚姫」をモチーフにしたミニマムなボーイ・ミーツ・ガールの物語を、映像からにじみ出る気分のようなもので描いていこうという試みが感じられた。
ドラマが重くなりすぎないよう配慮された作劇も印象的で、ディストピア風の世界観や物語上の理屈もあえて説明しすぎない。それらすべてを「映像で語ろう」という強い意志のもと、これだけ贅沢な絵作りがなされたはずだ。
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