“国境の島”与那国島を映した映画2本が公開 「ばちらぬん」「ヨナグニ 旅立ちの島」監督に聞く
2022年5月7日 09:00
日本最西端の国境の島・与那国島を舞台とした映画2作を上映する特集「国境の島にいきる」が東京・K's cinemaほかでスタートした。
ラインナップは2021年「ぴあフィルムフェスティバル」(PFF)グランプリ受賞作で、与那国島出身の東盛あいか監督が、島で撮影したドキュメンタリーにフィクションを交え、自然や文化を詩情豊かに描く「ばちらぬん」、2人のイタリア人映像作家が与那国の言葉を軸に、進学で島を離れる中学生たちを捉えたドキュメンタリー「ヨナグニ 旅立ちの島」の2作品だ。東盛監督、アヌシュ・ハムゼヒアンとビットーリオ・モルタロッティ監督が互いの作品について語った。
外出制限のあったあの頃、誰もが人と人との繋がりを強く求めた時期だったと思います。私も京都にいる仲間たちと繋がりたい、会いたい思いが強くあったので、映像の中だったら仲間達と繋がることができるし、場所にとらわれずに一つの作品を作ることができるんじゃないかと考えて、与那国と京都で、ドキュメンタリーとフィクションを掛け合わせてみようと思いました。フィクションパートを入れることで、ドキュメンタリーだけではなく、「ばちらぬん」を見た人それぞれの空想が広がっていくような、与那国だけじゃない場所や過去の記憶を刺激するような映画にできるのではと考えました。
与那国では「どぅなん」という言葉が今でも若干話されているということを知り、2018年にリサーチを始めました。その時に、私達を助けてくれたのがパトリック・ハインリッヒさんというドイツ人の言語学者で、何年も「どぅなん」の研究をされている人です。私は与那国を訪れ、言葉と共にほかの文化的な側面、例えば信仰なども消えつつあるように感じました。
「ばちらぬん」は私の初めての監督作品なので、作っている時は必死でしたが、完成して振り返ると、やっぱりまだ未熟だと感じる部分も多いです。「ヨナグニ 旅立ちの島」は、完全にショットショットが計算されていますし、おふたりは小津映画を意識したと仰っていたので、その構図も美しいと思いました。
また、お隣の台湾の存在も重要です。いつか与那国と台湾の映画が作れたら、国を越えての文化交流になりますし、この先お互いが良い方向に進み、それが島を守ることに繋がっていくと思います。石垣、京都、東京とどこに行っても、私にとって与那国はやっぱり心の根っこがある場所です。私は政治家ではないですし、映画自体が非日常的なもので、生活に直接何か役立つものではないけれど、これからも映画を通して島を発信し、守っていきたいです。それができたら幸せですね。
今年は本土復帰50周年ということで、NHKの連続テレビ小説をはじめ、さまざまな作品や番組から沖縄への注目が集まる年。主演でもある東盛監督が月明かりのような神秘的な魅力を放つ「ばちらぬん」、島の中学生たちの成長が爽やかな感動を呼ぶ「ヨナグニ 旅立ちの島」、ふたつの物語を与那国の豊かで美しい自然とともにぜひスクリーンで堪能して欲しい。
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