ジャック・オーディアール、気鋭の女性映画作家セリーヌ・シアマ&レア・ミシウスとのコラボレーションを振り返る

2022年4月23日 09:00


ジャック・オーディアール監督
ジャック・オーディアール監督

2021年の第74回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作で、「ディーパンの闘い」「預言者」などで知られるジャック・オーディアール監督の新作「パリ13区」が公開された。北米のグラフィック・ノベリスト、エイドリアン・トミネによる3つの短編を原作とし、映画では無機質な団地が立ち並び、アジア系住人が多いパリ13区が舞台だ。

コールセンターで働く台湾系のエミリーと高校教師のカミーユ、33歳で大学に復学したノラ、そしてポルノ女優のアンバー・スウィートという、ミレニアル世代の若者たちの学業や仕事、そして恋愛とセックス、ほろ苦くもみずみずしい人間模様が美しいモノクロームで映し出される。このほどオーディアール監督が、オンラインインタビューに応じた。

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――あなたの過去作は男性の強さを描く映画といった印象が強いです。今回あなたとは世代の異なるふたりの女性脚本家、セリーヌ・シアマレア・ミシウスとともに仕事をすることになった理由を教えてください。

私はこれまでに、「リード・マイ・リップス」「君と歩く世界」と女性を主人公にした映画も撮っています。今回はアメリカのエイドリアン・トミネの原作が3人の女性を描く物語だったので、才能ある女性脚本家とコラボレーションしたいと思い、以前から知り合いのセリーヌに声をかけました。現在フランスでは多くの女性脚本家が活躍しており、それは10年、15年前では考えられないほどのことです。今回仕事をしたふたりは、脚本家のほか、監督として映画も発表しています。

――おっしゃるとおり、最近のフランス映画界は若手の女性監督の躍進が見られますね。

はい、その通りです。そして、皆FEMIS(フランス国立映像音響芸術学院)の脚本コースを出ていることが共通しています。セリーヌとレア、そして「TITANE チタン」のジュリア・デュクルノー、「プラネタリウム」のレベッカ・ズロトブスキらが活躍しています。セリーヌは「燃ゆる女の肖像」で高い評価を受けています。レアに関しては、私は脚本家としてよりも、彼女の初監督作「アヴァ」を高く評価していました。その後、彼女がアルノー・デプレシャンアンドレ・テシネらとも仕事をしていることを知り、非常に才能があることがわかったのです。

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――3人の共同脚本ということですが、どのような役割分担でこの物語を進めていったのでしょうか?

まず最初は、セリーヌとともにオリジナルの原作を脚色し、二つのバージョンのアイディアを出してきました。その後、私がテレビシリーズの仕事に取り掛かることになり、それが終わったタイミングで、今度はセリーヌが自分の映画を撮ることになったので、私はレアに声をかけました。そしてレアはセリーヌが脚色した本を更に脚色していくというステップで出来上がりました。

――世代や性別の違いなどもあり、3人でひとつの脚本を作る難しさや、意見の対立はありませんでしたか?

まったくないです。私は一般的に、この人とならうまくやれそうだ、と思う人としか一緒に仕事をしないので、ケンカや言い合いになるようなことはありませんでした。映画製作においては、私は人間同士というよりも、考え方の合致、映画に対して何を期待するのか、そういったアイディアを共有できることが大事なので、今回もそれができていたと思います。

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――アメリカが舞台の小説をパリに置き換えた時に、13区を選ばれた理由を教えてください。とりわけアジア系の人々が多く住む地域ですね。

私が13区が好きで、長く住んだことがあります。あそこにいると、パリにいる気がしない、とてもエキゾチックな感じの地域なのです。トミネの原作でのロスやニューヨークも異国情緒あふれる街が舞台でしたので、パリだったら13区しかないと思ったのです。

――パリの方々から見て、13区はどのような場所なのでしょうか? フランスを代表する小説家ミシェル・ウエルベックも住んでいると聞いたことがあります。今回このように映画の舞台になったりと、パリのトレンドの街でもあるのでしょうか?

パリジャンでも、そこに住んでいる人しかよく知らないような場所です。ウエルベックが住んでいるということは、パリのトレンドではないということですよ(笑)。

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